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挫・人間 下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ" 【第6回】

2019年04月号掲載

挫・人間 下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ" 【第6回】

君がもし、田舎のモテない高校生などで、これからバンドを始めたい。なんて思っているとしたら、絶対にやめた方がいい。どうしてもやりたいと言うのなら、音楽のセンスとか夢とか、そんなものよりも絶対に必要なものがある。腕力だ。

まず、モテないくせにバンドなんて始めると様々な困難が降りかかる。
それは例えば、メンバーが見つからないとかそういうこともあるが、まず第一に、ヤンキーに目をつけられるということだ。
ギターを持てば「おいGLAYのHOWEVER弾けや」と脅され、いざ練習して披露すると
「サンボマスターみてえな顔してGLAY弾いてんじゃねえ!」と殴られる。そんなことばかり起こるのだ。

当時ぼくは、モバゲータウンで見つけた他校のスクールカーストの低そうな男2人と挫・人間を結成したのだが、そのメンバーの1人はヤンキー数人からトイレに追い込まれ
「おいキモオタ!バンド組んだらしいじゃねえか!バンド名言ってみろよ!」とすごまれ、
「ざ、挫・人間......」と言うと、
「座人間?ダッサ(笑)」と笑われ、モップで叩かれまくるのだという。
当時デブだったぼくも「ブ人間」と呼ばれ、クラスのモテる奴らが組んだバンドからは何故か「可哀想だね」と言われ......スクールカースト最下位から這い上がるためにバンドを組んだのに、下手に目立った分嘲笑われて、余計に立場を悪くしてしまった......おれの、ロックスターの夢は、やはり不相応な夢だったのか......と絶望していた。

或る日ヤンキーの皆様に活動を許してもらうためNANAの『GLAMOROUS SKY』を練習して登校すると、ヤンキーの顔が曇っている。疑問に思っていると、「お前......あの吉田とバンドやってたんだな。言ってくれよ」と言われる。
たしかにその頃の挫・人間では吉田という強面で凄い筋肉の男がドラムを叩いていた。
しかし彼は猫が好きで、フィッシュマンズなんかが好きな優しい奴であり、何よりヤンキーが好きじゃないので、ただでさえ他校のヤンキーである彼らと友人であるとは考えにくい。

「吉田のこと、知ってるの?」と訊ねると、
「知ってるよ。吉田って、あのペペゴンを......」と口ごもる。

ペペゴンとは、吉田の同級生で巨体の、熊本最強という噂されるヤンキーである。
体育の授業中に吉田がペペゴンからクラスメイトの前で腕相撲を挑まれたのだという。

暴力が嫌いな吉田だが、腕相撲なら。と受けて、圧勝したという噂が田舎のヤンキーネットワークで急速に広まり、ぼくの学校にも届き、平和が訪れたというわけだ。

つまり田舎の高校生がバンドをやりたければ、音楽のセンスよりも強靭な腕力が必要だということである。腕力に対する信仰心がある。腕力大好き。ぼくも腕力をつけよう!とグラウンドで懸垂をしたら思いっきり落ちて手首を捻挫した。平和にバンド活動をしたければ楽器よりも先に腕力の強い友達を探すことだ。

挫・人間

2008年、熊本で結成。"閃光ライオット2009"の決勝大会に進出し、同大会のキャンペーン・ガール、夏未エレナが選出する"夏未エレナ賞"を受賞。2013年に1stアルバム『苺苺苺苺苺』をリリース。2018年5月に1stシングル『品がねえ 萎え』を発表。11月7日には4thアルバム『OSジャンクション』をリリースし、同アルバムを引っ提げた全国17ヶ所を回るツアー"挫・人間 TOUR 2018/19 ~厨二病?いや、チューしよう~"を完遂した。