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LIVE REPORT

Japanese

挫・人間

Skream! マガジン 2019年03月号掲載

2019.01.25 @渋谷CLUB QUATTRO

Writer 沖 さやこ

4thフル・アルバム『OSジャンクション』は、フロントマンの下川リヲ(Vo/Gt)が歌詞を書くうえでチャレンジの多い作品だったが、このリリース・ツアーのファイナル公演でもそのマインドを大いに感じた。初期の代表曲「人類」をセットリストから省き、ワンマンのラストの定番曲「下川最強伝説」を4曲目に演奏。初恋の人の存在を自分から"除霊"する儀式をなくし、下川が"今日は俺たちと一緒に最高になろう!"と叫ぶなど、挫・人間は新たな切り口から自分たちの表現を開拓していた。

『OSジャンクション』には、挫・人間の持つ性質や感情を彼らなりのポップへ昇華した楽曲が多い。"射精警察"に扮し性の風紀を乱す者を成敗していく「カルマポリスⅡ」、下川の脳内世界が衝動的に表れた「JKコンピューター」など、序盤から生演奏ならではのグルーヴと勢いに満ちた演奏を繰り広げる。観客も激流に突っ込んでいくように全身でその音を感じ、躍動し高らかに声を上げた。途轍もないエネルギーだ。それでも夏目創太(Gt/Cho)は観客を挑発し、それによりさらにその爆発力は増していく。ステージもフロアも、今この瞬間に鳴り響く音楽と、それに興奮する人々が好きで好きで仕方がないといった様子だ。

『OSジャンクション』の楽曲が持つ強い意志とそこに宿るパワーを浴びたあとだからこそ、なおさらそのあとのセクションで3rdフル・アルバム『もょもと』の楽曲のポテンシャルの深さに唸った。挫・人間には曲そのものが圧倒的なキャラクターとして成立している楽曲が多い。だが立て続けに演奏された「チャーハンたべたい」、「明日、俺はAxSxEになる......」、「クズとリンゴ」といった『もょもと』の楽曲群は、彼らなりのストレートなロックであるぶん、ライヴで演奏するとその瞬間の彼らが放つマンパワーや感情が反映されやすいのだ。切なさと喜び、悲しみと怒り、優しさ、彼らが内部に抱えているものがすべて溢れてしまっている音の中に嘘や邪念は一切なく、その純度の高さは非常に刺激的で心地がよい。それによって観客の興奮も、なんならステージの上に立っているメンバーの興奮もより熱を帯びていく様は美しかった。特に「絶望シネマで臨死」のそれは圧巻。中盤の大きなクライマックスとなった。

そのあとは本編ラストまで7曲を畳み掛ける。電波ソング、パンク、メタルなど様々な音楽性と、陰と陽の空気感など、楽曲の振れ幅の激しさはまるでジェットコースターだ。それが成立するのも、アベマコト(Ba/Cho)とサポートの菅 大智(Dr)のアクの強いリズム隊のスキルの高さが土台にあってこそだろう。「ゲームボーイズメモリー」はバンドのロマンチシズムがクリアに表れ、「ピカデリーナ受精」は狂気とユーモアの乱れ打ち。「セルアウト禅問答」は"アイラブユー"と叫ぶ下川と観客の声がとても晴れやかで、そのあとの「恋の奴隷」、「ダンス・スタンス・レボリューション」まで、ゴールテープを突っ切ったあとも全速力で駆け抜けるようなとめどなさだった。

アンコールで下川は"どうしようもないバンドである自覚はあるんです。でも挫・人間を続けることが、俺にできる唯一の戦争に反対する方法! 無意味な歌を歌ったり、世界に嫌われている人を集めて大声で歌ったりすることが、俺の人生において最も意味のある出来事です"と言い、最後に「笑いあうために」を届ける。自分たちの気持ちを醜い部分まで誤魔化さず、真実だけを歌い続けてきた彼らが今ステージで最後に成したいのは、自分たちの音楽を愛する人々とともに憎んだすべてと"笑いあう"こと。その事実は、このバンドの不器用な愛を知るには十分すぎるほどだった。


[Setlist]
1. カルマポリスⅡ
2. JKコンピューター
3. 〆切を守れない~無力~
4. 下川最強伝説
5. 卑屈人間 踊ってみた
6. 約束の青
7. チャーハンたべたい
8. 明日、俺はAxSxEになる......
9. クズとリンゴ
10. 絶望シネマで臨死
11. ☆君☆と☆メ☆タ☆モ☆る☆
12. バラバラBABY
13. ゲームボーイズメモリー
14. ピカデリーナ受精
15. セルアウト禅問答
16. 恋の奴隷
17. ダンス・スタンス・レボリューション
En1. テクノ番長
En2. webザコ
En3. 笑いあうために

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