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INTERVIEW

Japanese

挫・人間

2018年11月号掲載

挫・人間

Member:下川 リヲ(Vo/Gt)

Interviewer:沖 さやこ

挫・人間が全国デビューをしてからリアルタイムで作品を聴き、下川リヲにインタビューをするのは今回で4回目になるが、語ったことがブレないまま作品ごとに変化しているバンドだとつくづく思う。4thアルバム『OSジャンクション』もまた、バンド10年の歴史や下川の27年の人生を経たうえでの現在の挫・人間が求める音楽や、下川リヲの真実が反映された作品だ。メンバーが音楽やバンドを存分に楽しみながら曲作りをしていることが手に取るようにわかる新作は、深刻に考えがちな心やコンプレックスに縛られてしまった思考の緩和剤になるかもしれない。異端な正統派ロック・バンド、ここにあり。

-新機軸も打ち出しつつ、どこをどう切り取っても挫・人間と言えるニュー・アルバムだと感じました。とてもエネルギッシュなアルバムだなって。

あ、良かった良かった。本人たちはそんなに元気でもないですけど(笑)、できるだけ人に届くアルバムになるように頑張りました。今まで出したアルバムで一番心は開いている気がしています。

-そうですね。そうなった背景にはどんな出来事がありましたか?

今年6月の恵比寿LIQUIDROOMのワンマン(6月24日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催した"挫・人間 東名阪ツアー2018~人間合格~")とか......ですかね。始まった瞬間から、今までのライヴとはまったく違う景色だったんです。それに"うおっ......!"と思ったし、この景色をもっと大きなものにしたいなという気持ちがより強くなって。"ウォーク・オブ・ハイタッチ"とか。

-"ウォール・オブ・デスをやりたい"というギターの夏目創太さんが、挫・人間のファン=隅っコたちを慮った結果、ウォール・オブ・デスでモッシュするところを、ゆっくり歩いてハイタッチしていくというあの伝説の"ウォーク・オブ・ハイタッチ"(笑)。

ほんと狂ってるし面白すぎますよね(笑)。あれだけ狂った人間が集まっている空間がもっと大きくなったらもっと面白くなると思う。じゃあどんな音楽だったら今まで挫・人間を触らなかったような人たちが触ってくれるんだろう? と考えながら歌詞を書いていきました。

-たしかに伝わりやすい歌詞が多いと思います。前は下川さんの脳内がそっくりそのまま言語化された歌詞が多かったけれど、今回は一度それをろ過したような表現になっているのかなと。

これまでどうしても曲が悲しい方向に行ってしまうところもあったし、"わかりづらい"とか"こいつ何言ってんの!?"と言われることも多くて。わかりにくいことが悪いことだとは思っていないんですけど、今回は比較的どんな人が聴いてもわかるものにしたいなと思いました。ただ"僕の歌"というよりは、僕が中学生のときに聴いたロックのような"僕とお前の歌"みたいなものを書きたかったんですよね。だから歌詞を書くうえでだいぶ悩みました。僕の言葉だけで書いてしまうと、僕が僕としてわかる言葉になってしまう。でも「恋の奴隷」や「笑いあうために」では、僕の言葉として、僕もしっくりくるだけでなく、聴く人にも伝わる言葉をすごく探したんです。だから時間がかかりましたね。

-「恋の奴隷」はある程度オケができてから歌詞をお書きになったんですか?

まず弾き語りでだいたいのメロディを作って、そのあとに歌詞を書いていきましたね。最初は"立って死ね"ってサビの歌い出しとタイトルだったんですけど(笑)、これは違うな......と思いボツにしまして。

-(笑)"恋の奴隷"という言葉、ものすごく下川さんにしっくりくるなと思います。

恋の歌にしようと思って、いろいろ考えていたら"恋の奴隷"というネガティヴなのかポジティヴなのかわからないワードが出てきてしまいましたね......(笑)。それをサビに当てたらハマって。そこから"恋の奴隷とはなんだ?"と考えていきました。おっしゃっていただいたとおり恋の奴隷とは自分のことなんですけど、人間誰しもが恋をするとそうなってしまうと思うんですよね。

-そうですね。自分の感情に振り回されたり、惨めになったり、恥ずかしさを感じたり。

ほかのバンドさんがラヴ・ソングを書くなら切ないものになったりするんでしょうけど、僕が恋について書くとこういうことになるなと。"惚れた方が負け"と言いますか(笑)。好きになってしまった時点でもはや"スレイヴ"(笑)! 曲の疾走感と気持ちがリンクしていって、苦しいだけじゃない曲にしたいなと思って作っていきました。

-挫・人間はパンク・ロックの楽曲も多いですが、今までのそれとはまた趣向の違うパンク・ナンバーになりましたね。挫・人間の中でも明るくて爽やかさもあるというか。

そうかもしれない。明るい曲ですね。今までなら絶対にオチで完全に悲しいバッド・エンドを迎えている曲ばかりなんですけど、毎作品"今までやったことをやりたいな"と思っているので、今回はそれをせずに、最後までこけずに突っ走ってみました。

-バッド・エンドに逃げない勇気!

あははは! マラソンを初めて完走したような感覚があります(笑)。