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INTERVIEW

Japanese

挫・人間

2022年09月号掲載

挫・人間

メンバー:下川 リヲ(Vo/Gt)

インタビュアー:山口 智男

今年6月~7月に開催した[挫・人間 - メンバー募集"1"でワンマン -TOUR]を最後に夏目創太が脱退。下川リヲとマジル声児の2人組になった挫・人間が早くもニュー・シングル『このままでいたい』をリリース。夏目が参加した最後の作品。しかも、このタイトル。これは!? と思ったファンもいるかもしれない。しかし、表題曲他計3曲について話してくれた下川によると、バンドはすでに来るべき変化にわくわくしているそうだ。

-今回の3曲は、いつ頃作ったものなんでしょうか?

曲自体は去年末ぐらいに作りました。歌詞とアレンジはまだできてなかったんですけど、シングルとしてリリースするために歌詞を書いて、それからアレンジを考えていって、バンドで形にするかってなったのは、夏目創太(Gt/Cho)の脱退が決まったタイミングだったので、今年3月の終わりか4月の頭ぐらいでした。

-歌詞を書いたときは夏目さんの脱退が決まっていたわけですね。

決まってました。何を書こうかなと考えてたら、ちょうど夏目が脱退することになったので、そこらへんを引っ掛けて書ければいいかなって思いました。1曲目の「このままでいたい」がそうなんですけど。

-あ、やっぱり。"このままでいたい"というタイトルと歌詞の内容から、脱退する夏目さんのことを歌っているのかなって想像しました。

そう思ってもらえればいいかなと思って(笑)。でも、この曲で描かれてるみたいなかわいい愛情があるわけではないし、あんまりベタベタするのも気色悪いじゃないですか。とはいえ、寂しいという気持ちがないわけではないから、そのへんも引っ掛けつつ。

-聴いた人の頭を過ればいいかなという気持ちですか?

そうですね。完全に無視して作ったら作ったで、逆に意識していると思われると思ったので。

-ノスタルジックなポップ・ソングである「このままでいたい」を表題曲にしたのは、どんなところから?

......。

-インパクトとしては、2曲目の「人類終了のおしらせ」、あるいは3曲目の「B・S・S~ボクが先に好きだったのに~」のほうがあるような気がするのですが。

でも、一番正統派っぽい曲ですからね。そういう曲を表題曲にしたことが今までなかったっていうのが大きいかもしれないです。最後まで「人類終了のおしらせ」とどっちにするかって話し合ったんですけど、バンドのムードを含め、いろいろ考えると、「このままでいたい」なのかなってなりました。

-こういう正統派の楽曲は苦労せず作れるんですか?

苦労せずに作れます(笑)。 

-「このままでいたい」は、歌うのが難しいんじゃないかなと聴きながら思いました。特にAメロの2行目。

変わったコード進行になってますからね。でも、ベースが上手いことなぞってくれてるんで、意外と歌いやすいんですよ。ベースがリズムも作ってくれてるから、それだけ聴いてれば、すんなり歌えるという。かなり良くできた曲です。ただ、あのコード進行はちょっと捻りました。コード進行はあんまり正統派じゃないですね(笑)。でも、フックがないと、面白くないと思ったので、コード進行で雰囲気を作っていったところはあります。

-聴いている人を笑わせる要素はないという意味で、「このままでいたい」の歌詞は真面目に書いています。

そういう曲が1曲はないと大変なことになるんで(笑)。あんまり好きな言葉じゃないですけど、共感ってことも考えていて。自分がいいなと思う歌詞はシンプルで、簡単な言葉をどれだけ使えるかみたいなところが僕の中にあるんですけど、"このままでいたい"という言葉は、とても簡単でいい。それに加え、憎からず思っている相手との別れとか、いい大学が決まっている、あるいはいい就職先が決まっているときの卒業とか、ただれた関係の恋人もしくは異性とのお別れとか、別れようという意思を持ってお別れするときも、その気持ちを掘りに掘ったら、"このままでいたい"という言葉が出てくるんじゃないかなって。そういう気持ちの最大公約数を自分の中で探ったら、それだったところがありまして、"このままでいたい"というタイトルを決めてから曲を書いたので、タイトルだけ見てもテーマは伝わるのかな。シンプルで簡単にする......とはいえ、内容は浅くならないように考えて書きました。ほとんどの人が口にはしないと思うんですよ。"このままでいたい"という言葉を。そこが大事なんだと思いました。口にはしないけど、気持ちの中にある言葉を表現するってことはバンドにできることというか、いいところなので、それだけ考えました。

-曲のインパクト云々と言ってしまいましたが、そういうお話を聞くと、やはり表題曲に相応しいと思います。

親にも聴かせられます。あと2曲は際どいので(笑)。

-そんな「このままでいたい」にカップリングするならということで、「人類終了のおしらせ」、「B・S・S~ボクが先に好きだったのに~」を選んだわけですね?

あんまり近い曲を入れたくないというのはあるんですけど、それにしてもかけ離れているなって曲が入ってしまいましたね。でも、そういうところが挫・人間らしいと言えば、らしいんだと思います。

-「人類終了のおしらせ」は、どんなところから作っていったんですか?

(マジル)声児(Ba/Cho)が得意としているスラップが目立つ曲を作ろうという発想から作りました。必死になってベース・ラインを打ち込みで作ったら、めちゃくちゃなフレーズになったんですけど、声児が上手いことアレンジしてくれて、楽曲として形になりましたね。意識したのは、それぐらいかもしれないです。

-"人類終了のおしらせがございます"というメッセージは、どんなところから?

サビの終わりに"終わった〜〜〜!!!"ってフレーズがあるんですけど、とりあえず、それを歌いたかったんです。布施 明さんの(「君は薔薇より美しい」の)"変った"みたいな感覚で(笑)。

-あ、"薔薇よりずっと見苦しい"という歌詞は、そこからだったんですね。

それで、何が終わってるのか考えたら、最初に思いついたのが人類だったんですよ。

-どんなところが終わったと感じるんですか?

やっぱり、インターネット上の治安が悪いところですね。僕、楳図かずお先生のマンガが大好きなんですけど、そこで描かれているパニック状態が、みなさんの心理状況的に起こっているはずなんです。でも、それにしては平和っぽく見えるところにすごく不安になるんですよ。つまり、みなさんは終わっていることにお気づきでない。だったら、お知らせしなきゃいけない。単純に、それだけですね。

-インターネット上の治安の話とは違いますけど、"信仰信仰信仰中"という歌詞がなんだか今の世相にぴったりだなと思いました。

そうなんですよ。危ないんですよ。ちょっと予言チックになってしまいました(笑)。今、当たり前みたいに推しという言葉があるじゃないですか。推しがいることが当たり前みたいな。そんなふうに誰かを拠りどころにして、人生依存していかないとというか、人生の責任をある程度吹っかけて、なんとかみんな立っているなみたいな。そういう信仰心が当たり前のように備わっている。そのへんを掛けたつもりだったんですけど、世の中のほうが早く進みましたね。びっくりしました。

-何かに依存しないと生きていけない人があまりにも多い。

みんな、自分の足で立つ力がなくなっているというか、責任をある程度なすりつけるというか。アイドルの不祥事とか、結婚とかに怒る人の気持ちがずっとわからなかったんですけど、ある程度自分の人生の責任を委託しているというか、そういう対象がいれば自分の軸がなくても、そこにすがっていれば進んでいける。そういう楽な生き方をひとつ見つけたのかなというふうには思います。でも、その一方では、それに対する違和感もあるんですよ。そもそも推しという言葉の目線がイヤなんです。推し、推しと言っている人を見てると、やっぱり人類は終わってるんじゃないかと不安になります。