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INTERVIEW

Japanese

挫・人間

2024年03月号掲載

挫・人間

Member:下川 リヲ(Vo/Gt)

Interviewer:吉羽 さおり

前作『散漫』(2021年リリースの6thアルバム)から2年7ヶ月という時を経てリリースとなる挫・人間のニュー・アルバム『銀河絶叫』。これまでもメンバー・チェンジを重ね、2022年に下川リヲとマジル声児の体制となり、そこに元爆弾ジョニーのキョウスケ、タイチサンダーをサポートに迎え約1年走ってきたが、この4人の歯車がとてもいい具合で、バンドの馬力の上昇がアルバムにも繋がったようだ。タイトルに"絶叫"とあるように、様々な叫びがあり、ある種タガが外れた爆発感と突き抜けたがゆえのタフさが歌に宿る。ユーモアもペーソスも抱え、それでも突き進んでいく泥臭くも美しい姿が、エネルギーを発する1枚だ。制作の道のりについて、下川に話を訊いた。

-インタビューも始まって、アルバムについてはご自分では消化できている感じですか。

そうですね。"なんでこんなことになったんだろう"というのはないですね(笑)。"なんでこんなことになったんだろう"というのは全体的な人生観で言えばそうなんですけど、アルバム1枚くらい取ったら大丈夫です。

-人生観としては"なんでこんなことになったんだろう"なんですね(笑)。

そうですね、"こんなはずじゃなかった"というのは20年くらい思ってます。

-そういう自分の人生やバンド人生を折り重ねてきて、ニュー・アルバム『銀河絶叫』ほど、ここまで勢い良く蓋が外れて内なるものが溢れ出たアルバムはなかったんじゃないかなと感じています。

蓋が外れてない歌詞だったら、あまり書く意味がないなと思うんです。音が強烈な曲が多いので強烈な言葉が乗ってきたりするなというのと、近年できるだけシンプルな言葉で歌おうという試みをしていて。シンプルな言葉のほうが、パンチがあるんじゃないですかね。

-その音の面が強くなった、強烈となったのは意図したことだったんですか。

プレイヤーが今までと違って、昨年からサポートにキョウスケ(Gt/ex-爆弾ジョニー)とタイチ(タイチサンダー/Dr/ex-爆弾ジョニー)を入れての4人でやっているので、そもそも音の出どころが違うというか。声児(マジル声児/Ba/Cho)は引き続きいてくれていますが、まったく別のメンバーなので。長い付き合いの友達で、さらに熱いふたりが一緒にやってくれてるから、それで激しくなったのかなとは思いますね。

-このメンバーだったらこの音になっちゃうよねという自然な流れで。

思ったより激しくなったなというイメージはあります。声児もそうなんですけど、"挫・人間の激しい曲がもっと欲しいね"ということを突然言い出して。"あ、そう? じゃあそういうの作ってみるか"という感じだったんです。それが1年くらい前で、この4人でやっていこうかとなってすぐでしたね。コンビニでサンゴー(350ml)缶を買って外で飲んでいるとき、公園とかで話をしたんだと思うんですけど。"バンドっぽいアルバムもいいんじゃない?"みたいな。それは僕も望むところだったので、4人で完結させて、それがそのままライヴでできるような制作をするというのは非常に意識していましたね。

-はい、きっとスタジオでセッションで生まれたんだろうなという生々しい曲もありますね。

ありました。そんなの何年ぶりかと思いましたね。メンバーが持ってきたフレーズを膨らませて構築するみたいなことは1stアルバム(2013年リリースの『苺苺苺苺苺』)ぶりじゃないですかね。それ以降はそういう作業はなかったので。

-そういったスタジオで生まれるからこその高い熱量がどんどん、自分の内側にあるものや衝動を引っ張り出してくれたのはあったんですね。

そうですね。デモを作るときって、基本的にひとりで軸を考えて道筋を立てていくんですけど、同時に4人で向き合ったので。俺が思いつかない展開みたいなアイディアをメンバーがどんどん出してきたりして、いいフィードバックがあったなと感じます。

-最初にこの4人でスタジオに入ってみてできた曲っていうのは、アルバムにも入っているんですか。

この4人でやるとなったとき、この4人でやったらきっといいだろうなと思って作った曲が「夏・天使」と「下川くんにであえてよかった」で。

-それぞれタイプは違いますが、配信シングルとなった2曲ですね。

そうですね。でも挫・人間らしい2曲になったかなと思います。「夏・天使」は8ビートでコードをガーンと鳴らすシンプルなロックの曲で、実は今までの挫・人間になかったんですけど、でもこのキョウスケとタイチは同世代ではそれをやらせたら一番うまいと思うふたりなので。というのと、もう1個はすごく挫・人間らしい曲っていう。

-「下川くんにであえてよかった」は壮大でいて、集大成的なロック・オペラになりました。

こうなってしまいましたね(笑)。ふたりはそういうのをやらせてもうまいっていう。

-「下川くんにであえてよかった」のこの壮大な、カタルシスのあるストーリーはどのようにできていったんですか。

ひとりで家でパソコンに向き合って曲を作っていると、脳がどんどん開けてくるというか、物語が進行していっちゃうんですよね。まぁ、興奮してるんでしょうね、曲を作りながら。で、気づいたらこうなっていくというか。自分ではあまり複雑にしたつもりはないんですけど、展開も多いですしね。この曲に関しては、サビのメロディを考えるよりも先にコーラスを思いついたんです。"し~も~か~わ~、し~も~か~わ~"って言わせたときにこの曲の運命が決まってしまったというか(笑)。これだと思いましたね、こんな曲聴いたことないなって。自分の名前を言わせたいし、客にも自分の名前を呼んでほしいし、と思ったらライヴの絵図も浮かんできて。じゃあ、ただごとじゃないほうがいいなという発想で、ドラマチックにするために泣きのパートを入れたり。

-これまでも"下川"とタイトルに付いた曲はありましたけど、そちらはもっと内に向かっていた感覚がありましたが、これは逆に外に外にという開いている感じがあります。

なぜそうなったんでしょうね。苦難を乗り越え解決に至るというか、楽曲の中で何かしら答えを出さなきゃいけないと思っているんです。そんなことはないんですけどね。"自分の中でこうだ"というひとつのアンサーを、できるだけどの曲でも出したいなと。それがポジティヴなものであればあるほどいいなと考えているんです。やっぱり清濁どちらもないと、と思うし。この曲ってパニック、ある種の発狂状態を歌っていると思うんです。世の中も自分自身も発狂して理不尽であることから、"であえてよかった"という結論、それでも肯定する、という結論に至るまでの道筋をこの曲の中でやらなきゃいけなかったので。

-パニックですか。

世の中に限らずパニック、発狂状態だと思うんですよね。でも、だから世の中はカスで生きていく価値のないものですよ、っていう結論にはやっぱりならないんです。それはなぜかというと、"あなたがいたから"というところになってくるのかな。自分の身の回りが発狂状態であるほど、そういうところに結論を置きたくなるっていうのが自分の中にあるのかなって思います。

-こういう曲を書いていたときはご自身でも混沌とした状況があったんですか。

そうですね、非常に。親友を亡くしたということもありましたし。

-それは「ここにいないあなたと」で歌われていることですね。

はい。親友を亡くしたということについてだけ考えると、「ここにいないあなたと」で十分なんですけど、それだけで終わったら顔向けできないというか、自分が自分ではないような気がするので。もう1個飛び越えようみたいな、人間の域を超えなければならないので、こうなってしまったという感じですね。

-振り切っていく必要があった、と。

現実に存在するバンドなので、もちろんみなさんと同じ現実を生きているわけなんですが、現実を歌われたところでなんの意味もない──まったく意味がないとは思わないですけど、曲の中にもう1個超現実を立ち上げることによって、そこに救いがあったり、それがもうひとつの現実になったりするというか。ありきたりな答えでなく、もう1個奥のところの答えを探すと、こういう形になったという感じで。これは一気に書きましたね。面白かったです、書くのもやるのも楽しい曲で。ライヴでこれをやると、結構泣いてる人とかもいるんですよ。

-ただ昇華する、浄化されるだけでないというか。深く寄り添ってもらえた感じがあるからだと思うんですよね。

みんな、簡単にわかってほしくないと思うんですよね、自分の孤独や苦しみを。それを聞いたことある言葉でメロディに乗せて歌うのもいいことだとは思いますけど、それがしっくりこなかった人は嬉しいでしょうね。結果的にそうなったら僕も嬉しいのでウィンウィンです(笑)。

-先ほどのポジティヴなほうに持っていくというのもそうですが、激しいながらも、今回はいい方向に発散をしているように感じます。

振り切っているというか。なんか、ブッダみたいなことを言うと、世の中のすべては虚無なので。