Japanese
挫・人間
2024年03月号掲載
Member:下川 リヲ(Vo/Gt)
Interviewer:吉羽 さおり
-また先ほども話が出ましたが、「ここにいないあなたと」は素直な思いが綴られた、とてもパーソナルな曲となっています。これは、つらいけれども出さなければいけなかったなという曲でしょうか。
まぁ、恥ずかしい系ですよね(笑)。やっぱりこの1年は非常に死と向き合う時間が多かったというか。親友の死というのが自分の人生にとって最もつらかったというか重い出来事だったので。全曲と言っても過言ではないですけど、死や失うことがどこかしらに入ってきちゃうんですよね。「かっこよくなりたい」は別ですけど。人間は生まれた瞬間から亡くなる方向に向かって走っているという事実を、この歳になっても受け入れられないですし、そういう理不尽さみたいなものに対して、未だにこんなに怒りが湧いてくるんだなというのもありますし。死を非常に意識する1年だったので、こういう曲は必要だなというか、絶対書くだろうなと思いながらやっていました。
-ここまで言葉にしていくことは、ある程度の時間は必要だった曲ですか。
そんなこともないんです。自分が思ってることは、自分の中をひもといていけば出てくるものというか。書くと決めたら、じゃあ俺は何を思うんだろうとか、何が言いたいんだろうとなって。それが意外と風が吹けば桶屋が儲かる理論で、遥か遠くでクジラがはねて、そのときの振動で遠くの電線がゆれてって、さりげなく奇跡みたいな出来事を話したかったなぁとか、そういうことだけだったりするんです。だからあまりドラマチックに、過剰にならないようにしたいなとは思っていましたが、こういう形になりましたね。
-詩的な表現と、一方で"こんな曲なんて二度とほしくないよ"という率直な思いもぶつけられる、それが痛切でもある。
実感したことを並べたという感じです。なんか、"死ね"とか"殺す"みたいな言葉を1st以降封印していて。いかにそれ以外の言葉で、それを感じさせるものができるかというところに注力していたんですが、ついに"殺す"と言ってしまいました。
-その言葉を封印していたのは、想像力をなくしてしまう怖さもあるからですかね。
それもありますけど、すごくバンドとシナジーがある言葉だからでもありますね。バンド名がこれですし、僕の口から出る"死ね"とかは、ちょっと普通の人よりもパンチがありすぎるというか。ほかのバンドがそういう言葉を使っても聞けると思うんです、正直。僕の場合はちょっと。
-聴き手が深刻に受け止めてしまうこともありそうだと。
汚泥の底から出た言葉だなという感じが。"死ね"とか"殺す"はキャッチーな言葉なので、みんな簡単に言えちゃう言葉でもあるんですけど、本当にそれでいいのかと常に音楽を作る人は自問自答しなきゃならず。そういう言葉に頼っていたら、あまり成長はないなと思いますね。
-そこで終わってしまう言葉ですからね。
そうですね。"死ね"とか"殺す"とか歌ってる人に殺されるって思ったことはないと思うんですけど、でも僕が言ったときに、本当に怖いって思った人がいるらしくて(笑)。"そうか、シナジーがありすぎるかもしれないな"と。でもやっぱり"死ね"とか"殺す"とかを言うとしたら、本当にそう思って言わなきゃいけないと思うので、ラップのフリースタイルじゃないですけど、"刺す"って言ったんだから刺しに行けよっていうか。でもその感覚で言ってたらそれは怖いよなと、今では思いますしね。だから言わないようにしているのは、そういうところも込みでなんですよね。
-軽々しく発する言葉ではないですね。あと、勢いがあっていいなっていう曲が「未来・挫・フューチャー」で。
タイトルを考えたのは僕じゃないんですよ、これは声児が考えたもので。びっくりましたね、"「未来・挫・フューチャー」って何!?"みたいな。意味一緒だし、意味わかんないしっていう(笑)。嘘でしょって絶句して。俺はこの曲でこれよりすごいタイトルは書けないなと思って、このタイトルを軸に始まっていった感じがします。
-タイトルはなんだか挫・人間らしさがあるなと思っていたんですけどね(笑)。さらに、それがいろんな愛が詰まった曲になっていて、聴いていてくれる人、この音楽を頼ってくれる人をちゃんと連れて行くんだという気持ちが強いのが出ているなと。
そうですね、教祖ですから。
-そこにも結びついていきそうですけど(笑)。でもちゃんとこの音楽を背負ったなと感じます。
"背負わないと"というのは思いますね、4番打者みたいな気持ちで。やっぱり背負う気持ちがある人だから信頼しますし。そこの逃げ道は用意しちゃダメだなと思います。ただ、"「未来・挫・フューチャー」って何?"って感じですけどね。どこに連れて行かれるんだよっていう(笑)。
-この"未来・挫・フューチャー"っていうタイトルはどのタイミングで声児さんから出てきたんですか。
これは歌詞を書くのに難航していて、サビどうしようかなと考えていて。最初はもっとネガティヴな歌詞だったんですよね。でもキョウスケが"下川君はこんな卑屈なこと言わない"って言い出して、全員が"え!?"ってなって(笑)。いや、俺のことなんだと思ってたんだろうって思いましたけど、深く感動しまして、それで歌詞を書き換えていったんです。あのとき、声児と話し合いながら歌詞を書いてたのかな。それで急に言ったんですよね、"未来・挫・フューチャー"......って。"今のもう1回言ってもらっていい?"って。しかも"「挫」は挫折の「挫」"って言われて、不思議な作り方をしましたね。そういう意味ではいろいろ物語のある曲です。
-いい着地をした曲ですね。こうした曲たちをまとめて、アルバム・タイトルである"銀河絶叫"はどのように名付けられたんですか。
4人で遊んでいて、AIに挫・人間のコピー・バンドのバンド名を考えさせようぜってやったときに出てきた言葉だったんですよ。
-AIにはどういうワードを?
"ロック・バンド 挫・人間のコピー・バンドの名前を決めてください"みたいなシンプルな感じだったんですけど、そしたら漢字4文字のバンド名しか出てこなくて(笑)。"百花繚乱"みたいな。そういうものの中で"銀河絶叫"ってヤバいねってなっていたんですけど、タイトルを決めているときにふと思い出して。みんなの思い出もある言葉だし、よく叫んでいるし、この支離滅裂さも"未来・挫・フューチャー"的にありだなというか。"「銀河絶叫」って何それダッサ"っていうのも含めていいなって。
-意外なところからでしたが、今回のアルバムにピタッとはまった言葉になっているのが面白いですね(笑)。また、今回はジャケ写も遊びがあって、通常盤ではBOØWYのアルバム『BEAT EMOTION』(1986年)をオマージュしたものになりました。
これはやりたかったですね。いいジャケですもんね、『BEAT EMOTION』。
-ちなみにBOØWYの『BEAT EMOTION』も、よりバンドらしい、4人の演奏だけで作り上げた作品だということですよ。
中身はまったく意識してないんです(笑)。ジャケのイメージだけというまったく無礼な話なんですけど。
-(笑)ファンの方はジャケットやタイトル、歌詞の背景などもどんどん調べてくれると思いますし、今回はいろんな深掘りをしてくれそうではありますね。わかりやすいところで言えば、「俺だけがZU・BU・NU・RE......(Story Ver.)」の"ZU・BU・NU・REだ......"もX JAPANの「紅」を思わせたりと、いろんなフレーズなども練りこまれていそうです。
そうですね、深掘りされるのは大好きですからね。想像でガンガン勘違いして大丈夫です(笑)。「俺だけがZU・BU・NU・RE......」もアレが言いたくて作ったとこがありますからね。サビでXジャンプしてほしいです。
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