挫・人間 下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ"【第25回】

COLUMN

挫・人間下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ"【第25回】

2022年06月号掲載

挫・人間

元々身長が低いのもあって、女性に間違われることがボチボチある。

もしかすると、激しく太っていた中学時代に、異性に飢えたクラスメイトの男たちから胸を揉まれまくったことにより、女性ホルモンが過剰分泌されてフェミニンになってしまったのかもしれない。

最近もスケーターの男集団にナンパされて、そのまま朝まで一緒に酒を飲んでいた。なんて日もあったのだが、最初女だと思い込んでいたヤツも、なんだかんだでおれが一言喋ると声ですぐにみんな男だと気付くものなのだ。おれという人間は、ちゃんと見ると髭の剃り残しとか汚いのだ。

大抵男たちはおれの身体が目当てなので、男だと知ると、「チッ......」と不機嫌な顔をして去ってゆく。
その度に、おれは毎回「何よッッ！！！！！......失礼しちゃう」と、何故だか悔しい気分になる。

先日、友達と新宿思い出横丁の開けた店で飲酒していたら、筋肉質の男性2人組から「お姉さ～ん」と声をかけられた。

「一杯奢るんで一緒に飲みませんか」
おれの中のメスが、「ハイ、また来ましたよ」とクソデカ溜息をブフーーと吐く。
どうせまたおれが男だと気付いた瞬間、不満げに去っていくのでしょう......。そう思い、おれは「ダメです！いりません！」と返す。両手でバッテンを作るオッサンムーブ添えで。

「......そうですか。でも隣の席で飲むのはいいですよね」

えっ......なんて強引......。
というより、まだ彼らはおれを女だと思っているらしい。

「ところでお姉さん、あいみょんに似てるって言われませんか？似てますよ」

おれのあいみょんリテラシーの低さでは、褒められているのかディスられているのか判断がつかないため、リアクションに困る。

この男がもし、ナイスバディ女子であれば、下川お得意の「オレッチ、売れる前のあいみょんさんと対バンしたことあるけど？」発言で、むしろこっちから口説いていきたいところだが、生憎彼らはおれの恋愛対象外だ。

あまり知らないパターンで不安になり、助けを求めようと友達の方を見ると、友達は店内に例の黒い虫を発見してしまったらしく、無言でおれに背を向け、壁を見つめていた。

「お姉さん、準備運動は済んでますか？」などの意味不明な発言を恐れたおれがシカト決め込んでいると、彼らは「チッ......」と、素早く会計を済ませ去って行った。

家に帰って、オーストラリアに住む妹にLINEで、ことの顛末を報告すると、彼女から
「自虐風中性的自慢乙。太って胸が出てきてるんじゃないか？私の好きな新日本プロレスの棚橋のように男らしい精神と肉体で愛を掴むべき」という内容の返信が来て、泣いてしまった。
明日、丸刈りにします。

挫・人間

2008年、熊本で結成。"閃光ライオット2009"の決勝大会に進出し、同大会のキャンペーン・ガール、夏未エレナが選出する"夏未エレナ賞"を受賞。2013年に1stアルバム『苺苺苺苺苺』を発表。その後もリリースを重ね、2021年は1月にライヴDVDをリリース。3月にUSEN STUDIO COASTにて単独公演を実施。8月には6thアルバム『散漫』をリリースした。現在、2年ぶりのツアー[挫・人間 - メンバー募集"１"でワンマン -TOUR]を開催中。

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