挫・人間 下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ"【第30回】

挫・人間下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ"【第30回】

2023年04月号掲載

挫・人間下川リヲの“モノホンプレーヤーになれねえ”

入学シーズンと聞いて思い出すのが、挫・人間オリジナルメンバーのひとりであるHAMACHANGとの出会いである。

中高一貫の学校に通っていたアタクシ、実は中学時代から何度もバンドを組もうと画策していたが、ガリ勉学園だったため俺がクラスのちょっと話せるくらいの奴に「バンドやらないか」なんて言った日には呼び出し、及び学級会議という、ロックンロールディストピアと言っていい状況であった。

しかし！高校生になれば公立から新たに入学してくる奴らで一学年辺りの生徒数が3.5倍に膨れ上がるのである！そこには俺のようなレジスタンスも存在しているに違いない。
当時モバゲータウンでギターとドラムのメンバーを見つけていた俺、なんとかベーシストを確保したいと思っていた。
ベースなんて別に大したことしてないと思い込んでいた当時の俺は五十音順で後ろの席に座った奴がどんな奴であろうと、即バンドにスカウトすると決めていた。

そして入学式当日、高校生の教室で俺は最初のホームルームを受けていた。ひとりずつ自己紹介をする時間（これを考えた奴はいつか地獄に堕ちる）がやってくる。
「好きな食べ物は、カレーです！」斬首ものの一言を残し、席に着く俺。心の中の涼宮ハルヒが俺を罵倒する。

そして後ろの席の奴が立ち上がる。振り向く俺。そこには、どう考えてもモテない男が立っているではないか！！！！

勝った......。

俺は心の中でそう呟く。世の中への恨み満点の顔、これはもう神が俺に彼とバンドをやれと言っているのだろう。彼への誘い文句はもう決まっていた。

「俺バンドやってるんだけどさ、ベースって女性の子宮に響くらしいよ」
彼は何か質問するでもなく挫・人間に加入した。そうしてなんやかんやで活動していた我々だが、ガリ勉学校の宿命として、「バンドや部活は高2まで」という暗黙の了解があった。彼も高2の夏休み、ラストライブを行うことになった。

当日、彼から「女装していきたいからちょっと時間かかるかも」というメールが届く。
？？？？？？
「女装してきて、受付で出演者だって分かってもらえないかもしれないからライブハウスの入口まで迎えにきてくれないか」
と、更にメールが届いた。
ひとつも何を言っているのか分からなかったが、メンバーが異常な状況になっているのは個人的にウェルカムなので階段2段飛ばしで入口まで迎えに行くと、髪をツンデレ風に巻いた完全なる異常者が俺を待っていた。
恐怖を覚えた俺は無言で同じ速度で楽屋に引き返し、メールに気づいていないフリをしてやり過ごした。
彼は、今思えば、明らかにアマガミの森島先輩（クリスマス）を意識したコーデで、ライブ中も特になんの説明も無く、HAMACHANGのラストライブは、「正気の沙汰ではない」という感想と共に終わった。

その後、「税理士になる」と言ってバンドを辞めた彼は、今でも女装への情熱を燃やし続けているのかもしれない。当時から過激すぎる成人向けゲームに夢中だった彼は明らかに挫・人間向きだったが、その後も狂人税理士として過ごしてくれていたら良いなあと思う日々である。

挫・人間

2008年、熊本で結成。"閃光ライオット2009"の決勝大会に進出し、同大会のキャンペーン・ガール、夏未エレナが選出する"夏未エレナ賞"を受賞。2013年に1stアルバム『苺苺苺苺苺』を発表。2021年3月にUSEN STUDIO COASTにて単独公演を実施した。昨年9月に2ndシングル『このままでいたい』をリリース。今年5月24日にはSHIBUYA CLUB QUATTROにてワンマン・ライヴ"挫・人間　(新）メンバー募集2023-バンドやんない？-"を行う。

挫・人間

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