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挫・人間 下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ" 【第10回】

2019年12月号掲載

挫・人間 下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ" 【第10回】

クリスマスが来ますね。
クリスマスガチ勢なので、毎年ここぞとばかりに独り身の男を集めるんですが、そうすると、自然と友達が全員集合することになるんですよね。中学の頃からです。もしや、私が悪い?

"清く正しく"の精神ゆきゆきて、教室内でも"非モテの南極大陸"といった様相でしたので(隅へ隅へ、と追いやられた人間が水飲み場などに集結してしまうアレです)、毎年クリスマスとは傷の舐め合い大会が開催される日という感じです。
(もうこの歳になると傷を舐め合うためにわざわざ傷つきにいってしまうようなところがあります。早く病名をください!)

話は変わりますが、当時田舎者で、特にやることもなかった我々は、日々ヤンキーに絡まれたときの武器を開発、実験を繰り返していました。

たとえば酢で満たした容器に卵を殻ごと投入してラップをし、常温で1週間近く保存をすると、卵の殻が溶け、内膜だけで形を保つぷよぷよの卵になるのですが......これが、とても臭い。

その臭くてぷよぷよと情けない卵の姿に我々はいつしか感情移入し、敬意を込めて"イエローオーブ・ボム"と呼ぶようになりました。そして、クリスマスにはこれを使って、我々は立ち上がろうではないかという話に。

というわけで、クリスマス・イヴ、友人一同それを持ち寄り、地元の有名なデートスポットの側の草薮で待機。

クリスマスを、育ててくれている父さんor母さんへの感謝の気持ちを忘れ、エンジョイしようなどという不届きな輩を見つけ次第、我々の精神性の塊であるそいつを投げつけ、己の存在を証明したい。運命に抵抗したい。そんな強い気持ちで各々が手にぷよぷよ卵を持っています。戦士の眼です。そんな奴、誰からも選ばれない。

全員が前のめりにデートスポットを見つめていると、ひと組のカップルが現れました。そのふたりは我々と同じ学校の制服を着ていました。

我々は中高一貫校だったのですが、我々は高校生、カップルは中学生の制服です。
ゆゆゆゆゆゆゆるせん!!!と立ち上がろうとしたその時でした、隣からすすり泣く声が聞こえます。

驚いて横を見ると、同士が悔しすぎて、手に持ったイエローオーブ・ボムを握り潰しているではありませんか。
腐った卵は彼の服に飛び散り激臭を放ち、破裂した内膜は彼の手の中で邪悪な存在感を放っています。

「お前......」とぼくが彼に問いかけようとすると、それを遮るように
「あの子のこと、好きだった」
と彼が言います。

その後全員が突然生暖かい気持ちになり、皆で彼のズボンを洗濯し、カラオケで熱唱しました。
今では恋人たちにイエローオーブ・ボムを投げつけたいと思うことはなくなりましたが、こんな人間がこういうときにカラオケで叫ぶように歌う曲を、作りたくて......今でもぼくはバンドをやっているのかもしれません......。

挫・人間

2008年、熊本で結成。"閃光ライオット2009"の決勝大会に進出し、同大会のキャンペーン・ガール、夏未エレナが選出する"夏未エレナ賞"を受賞。2013年に1stアルバム『苺苺苺苺苺』をリリース。2018年5月に1stシングル『品がねえ 萎え』を、11月には4thアルバム『OSジャンクション』を発表した。2019年12月11日、新宿red clothでANTENAを迎え自主企画"コンドルは飛んでゆく vol.1"を、12月28日には新代田FEVERで単独公演を開催する。