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COLUMN

挫・人間 下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ"【第5回】

2019年02月号掲載

挫・人間 下川リヲの"モノホンプレーヤーになれねえ"【第5回】

"ネカマ"という言葉をご存知だろうか?
インターネット上で、顔が見えないのをいいことに女性のフリをする男性のことだ。
つまり、中学時代の下川リヲ、ぼくのことである。友達が居なかったぼくは、インターネット上のありとあらゆる場所で、"白雪"として振舞っていた......。

テニス部の白雪。愛読書は綿矢りさ『蹴りたい背中』の白雪。私立の進学校に通っている白雪。格ゲーとシューティングが好きな白雪。女の子の友達がいない白雪......。下心丸出しの男達が、私(白雪)に群がった。
しかし、これらすべて当時体重90キロの下川少年と同じプロフィールである。にもかかわらず、姿が見えない女子中学生というだけで、こんなにも人からチヤホヤされるものか......と、私(白雪)は驚いた。

そんなある日、いつものように白雪として交流しているとJUDASという男がチャットに参加してきた。どうやら同じ熊本在住の学生らしい。私達の話は弾んだ。時折挟まれるJUDASの「チェックメイト」という決め台詞(?)のようなものは疑問だったが、気が合ったのだ。
しかし、何処の学校に通ってるの?と聞かれたら、必ずはぐらかした。その方がミステリアスな私に合ってる。JUDASと仲良くなって数週間、塾の授業中に彼から白雪のアドレスにメールが届いた。

「白雪、付き合いたい」

ぼくは、悩んだ。なにせ、人生初の告白を男からされてしまうとは、思ってもいなかったからだ。なんとか、はぐらかすしかない......。

「ふええ、はずかしいよう......」

「チェックメイト、恥ずかしいってことは照れてるってことだろ」

「でもでも、逢ったことないひとと付き合ったりできないもん」

「チェックメイトだ。一度会ってみればいいだろ?」

JUDAS......体重90キロの下川に愛を囁いているとも知らずに......。ぼくは、狂っていたので、JUDASの気持ちにこたえてあげたい気持ちが芽生えてきた。しかし、携帯を握りしめているのは体重90キロの喪男である。彼を幸せにすることは叶わない。ぼんやりそんなことを考えていたときだった。

「白雪?今何処にいるの」

「上熊本駅......」

と何気なく最寄りの駅名を伝えた瞬間、教室のすみからガタッ!と大きな音がして、振り返ると、メガネをクイッとあげる仕草をした同じ塾に通うクラスメイトでオタクのK君(仮名)が立っていた。

「け、K......どうした」と教師が聞く。

「先生、人には行かなければならない場所があります」

そう言い残し、Kは鞄も置いて教室を飛び出して行った。ポケットの携帯が震える。

「塾抜け出して、逢いに行くから」

JUDASだ。
X JAPANの名曲が頭で鳴り響く。

「俺が見えないのか、すぐそばにいるのに」

その後もメールを受信する音が鳴り続けたが、無視してしまった。自分が初めから本当の自分として接していれば、友達くらいにはなれたかもしれないのに......。
その日から白雪はネット上から姿を消した。


挫・人間

2008年、熊本で結成。"閃光ライオット2009"の決勝大会に進出し、同大会のキャンペーン・ガール、夏未エレナが選出する"夏未エレナ賞"を受賞。2013年に1stアルバム『苺苺苺苺苺』をリリース。2018年5月に1stシングル『品がねえ 萎え』を発表。11月7日には4thアルバム『OSジャンクション』をリリースし、同アルバムを引っ提げた全国17ヶ所を回るツアー"挫・人間 TOUR 2018/19 ~厨二病?いや、チューしよう~"を完遂した。