ぜんぶ君のせいだ。の"異常こそ正常だ。"【第5回】
2020年09月号掲載
世界は物語に支配されている。
朝起きて、(日の光で起きれれば上々)崩れているお布団を直す。外から聞こえる音の中にセミの声が聞こえた。
朝のルーティン、と最近よく聞くが、自分にそんなものはない。あるとしたら部屋に似合わない大きなテレビをつけるだけ。何を見るでもなく、適当な映画をただ垂れ流しにする。その時々で違う朝を過ごすと、15分で身支度を済ませる。朝ご飯はなくてもあっても、どちらでもいい。
活動休止中の私、如月愛海の一日が始まる。
活休と言っても、私の性格上、のんびりしていられるわけもなく。日によって外に出たり、メンバーに会ったり事務所で作業したり......割と充実した毎日を送っている。
まぁ、それは割愛して。
遅くきた夏に、嫌気がさしながら外が晴れていることに喜ぶ自分がいる。気持ち悪い。
道々に咲いている花も生き生きとしている。かわいい、晴れで生き生きするのかわいい。
そんなことを考えながら公園到着。あまり人のいない公園。夏休みが早めに終わって子供達が少ないようだった。
砂場には誰かが置き忘れた、子供用の小さなスコップがある。気になったものがあればすぐにそれを写真に撮る。後々、使える、物語に。有難う、置いていった子供たちよ。
そんなことを考えながら、(また考えてる)公園のベンチに座る。セミの声が聞こえる。
どこに居ても同じ音量で聞こえる気がする、セミの声。
何をするでもない、ただ物語を考えるだけ。
ピンクのスコップ
公園に置き忘れられていたスコップは、風で飛んできた落ち葉を堰き止める役割をしていた。
このクワを見てるとあの子を思い出す。
昔、僕には大好きな女の子がいた。その子は歌を歌うことが好きだった。何をするでもその子の後をついていき、その子が歌う歌を聞いた。幼いながらにその子が歌う歌を必死で調べてずっと歌っていた。何の関わりもない、ただ公園で会うだけの女の子。好きで好きで、興味を持って欲しくて、彼女が歌っていた歌を一生懸命覚えて、自然に見せかけながら歌っていた。ブランコに乗って鼻歌を歌う。滑り台の上で空を見ながら歌う。そんな僕に、君が気づいて声をかけてくれないかと願った。
僕の身勝手な歌は彼女に届くことはなかった。
ある日、彼女は公園に来て、ただただ砂場を見つめていた。
僕はそんな彼女を見ておかしいなって思った。いつも歌っている歌を歌わず、ただただ公園にある、砂場にある、置き忘れた子供のおもちゃを眺めている。
何をするでもなく。
異変に気づきながらも、僕は眺めるだけだった。二人しかいない公園で、今僕が歌ったら僕が君を見つめていたことがバレてしまうかもしれない。僕は黙って、公園のベンチから女の子を見ていた。
しばらくすると、彼女は立ち上がり、公園を後にする。僕は彼女がいた場所に移動した。彼女が見ていたものを見れば、歌わなかった理由がわかると思った。
砂場には
「今日は歌ってないんだね」
と文字が書かれていた。
僕は彼女が帰って行った方角を見た。
もう彼女の姿はない。その日から僕が彼女に出会うことはなかった。
僕は、今も、歌を歌っている。
誰に見られているでもない。彼女がいつかまた、僕に気づいてくれることを願って。
そんな感じ、とゆう物語ができた。
人生のどこにでも物語は転がっていて、どこにあるものにも、誰かの人生の物語が関わってくる。
歌もそうだ。歌詞から見える物語もあれば、曲から見える物語もある。
歌っている人から感じる物語もあれば、それを見て、聞いている、人の物語もある。
世界は物語に支配されている。
考えたくない日も、物語は脳の中で続いていき、歌っているときにも、自分の物語含め、物語は続いていく。
少なくとも、如月の世界はそんな世界。
活休明け、この先、私たちの紡ぐ物語はどうなるのか。続きはまたいずれ。
お楽しみにです。
ぜんぶ君のせいだ。
ぜんぶ君のせいだ。 如月愛海(きさらぎめぐみ)、ましろ、征之丞十五時(ゆきのじょうおやつ)からなる、病みかわいいをコンセプトとしたユニット。2015年結成。2019年4月に日比谷野外大音楽堂でワンマン・ライヴを開催。2020年7月24日の中野サンプラザ単独公演を経て現在"一時"活動休止中。9月30日には同公演を収録したライヴ映像作品『中野サンプラザホール単独公演〜生鳴兆候〜』のリリースを控えている。
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