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INTERVIEW

Japanese

ぜんぶ君のせいだ。

2019年12月号掲載

ぜんぶ君のせいだ。

Member:如月愛海 ましろ 一十三四 征之丞十五時 凪あけぼの

Interviewer:吉羽 さおり

5人体制となって初、通算5枚目となるフル・アルバム『或夢命』(読み:アルムメイ)が完成した。活動スタートから4年間、ここまでぜんぶ君のせいだ。が歩んできた軌跡とこれからへの真摯な思いをしたためた、10thシングル『ぜんぶ僕のせいだ。』をリリースできたからこその、今のぜん君。が生き生きと暴れまわっているアルバムだ。気負わずに、しかし捻くれる部分は変わらず捻くれて、サウンド的にもスピリット的にもオルタナティヴな態度というのは1ミリも変えることなく、その音楽に触れてくれた人を熱く抱きしめるようなパワーとエナジーを分け与えてくれる作品だ。"ぼくらは今ここにいる、きみたちはどう?"そう問い掛けて手を差し伸べる。そんなアルバムだ。

-レコーディング直後ということで、できたて状態だと思いますが、こうして新体制での5thフル・アルバムの曲が揃ってみて実感するのは、どんなことですか。

一十三四:今までのアルバムだと曲調での情緒の変化がすごくあったんですけど。今回のアルバムは、曲調的には全編を通して揃った感触があって。その代わりに今までよりどうしようもなく心揺さぶられる曲が揃ったので。精神的に、救いと絶望の緩急がすごいなってなりましたね。

ましろ:うん。だいぶ強いアルバムができたというか。5人でやっていることをアルバムにちゃんと落とし込めたのが、嬉しくて。5人になってまだ日も浅いですけど、でも5人が今できることや、ぜん君。(ぜんぶ君のせいだ。)が今までやってこなかったけど、今の5人だからこそ合う曲とかがちゃんと表現できる形になって。それが今できたのがすごく嬉しいし、だいぶ強いなっていうか。自信を持って出せるアルバムですね。

-ゴツゴツとした厳つい曲やヘヴィな曲があるわけじゃないけれど、とてもパワーを感じるアルバムですよね。

征之丞十五時:私も、最初に新曲たちのメロディを貰ったときに力強い曲だなって思ったんです。でもレコーディングをしてできあがったものを聴いてみたら、そんなに強すぎるわけじゃなくて、みんなの声が入ったことによって優しい曲だなと思うものが増えました。

凪あけぼの:今までのぜん君。とは違う曲が揃ったなと思います。ライヴではどういうふうになるんだろうって今からいろいろ想像していて。すごく楽しみになりました。

-このアルバムの曲が入るだけでライヴの流れもすごく変化がありそうです。

ましろ:そうですね。意外とシングル曲も多くて、前の体制でのシングル曲「Natural Born Independent」、「ロマンスセクト」とかも収録されるんですよね。そういった曲を救っていけたのも、嬉しいなと思って。

-そうですよね。まず昨年末にリリースした「革鳴前夜」が収録されているのも感慨深いというか。この曲を初めて披露した今年1月のZepp Tokyoでのワンマン・ライヴから、ものすごく時間が経っているような気がします。

如月愛海:まだ1年も経っていないんですよね。

ましろ:怖いことに(笑)。

-この間に4人から咎憐无さんの脱退、そして凪あけぼのさんと征之丞十五時さんが加入した5人となって突っ走ってきた時間の濃さや、リリースしてきたシングル曲の分厚さというのを感じます。そこで象徴的となったシングルの「ぜんぶ僕のせいだ。」が1曲目を飾るのが、今回のアルバムという。激動の時間を感じますね。

如月愛海:「ぜんぶ僕のせいだ。」を前回シングル曲としてちゃんと歌えたからか、思ったよりも今回のアルバムの曲は内容的に聴き手や相手との心の距離が近いんですよね。寄り添い型の曲が多くて。ライヴでの遊び曲もたくさんあるんですけど、昔のように自分たちとは違う感性や価値観の人を批判したり、外側にいる人に対して"それバカじゃん"って言ったりするような感じではなくて。もうちょっと近しい人に対して、"これやってるのってバカじゃない(笑)?"とか、"これはダメだよね"みたいに優しい感じになっているというか、心の距離が近くなったアルバムだなと思っていますね。それはシングルの「ぜんぶ僕のせいだ。」があって、それより以前の「革鳴前夜」や「Natural Born Independent」、「ロマンスセクト」があって、そのあたりから少しずつ患い(※ぜんぶ君のせいだ。ファンの呼称)に寄り添おうという感じになってきたので。それが詰まった5枚目になったかな。

-その"寄り添おう"となれているのは何が反映されてのことだと思いますか。

ましろ:今までもすごく必死にやってきたんです。4人になってからも4人でどれだけ尖って刺せるかに重きを置いてきたし、「ロマンスセクト」を出した当時は、みんなの手を握って引っこ抜いてでも連れて行くんだくらいの気概があったんですよね。そこから、ぼの(凪あけぼの)やおやつ(征之丞十五時)が加入したことで、ぜんぶ君のせいだ。もちょっと救われたんです。新しいふたりの形や声に、3人が助けられているのはもちろんだけど、"ぜんぶ君のせいだ。"というグループ自体も感化されていると思っていて。この5人でももう1回、患いさんとここからまだ先を見れるんだとなったときに、自分たちのグループの大事さと患いさんの大事さというものが相まって。今までにない優しさが出ているかなって。

一十三四:スタートから4年やってきて──すでに何十年もやっているような気持ちではいるんですけど、よく考えたらまだ4年で。でも、4年かかってやっと人に寄り添えるようになったというところがぜん君。の面白いところだなと(笑)。人と人との関わり合いを4年かけてやっと掴めたっていうか。

-たしかに。ここでようやく人との距離感がわかったんですね(笑)。

一十三四:今まで本当に必死だったんだなっていうのを、このアルバムでやっと実感できました。やっている最中ってやっぱり、自分たちでは全然わからないんですよ。"あのライヴ、すごい鬼の形相でやっていたね"とか言われても、何が? っていう気持ちだったんですけど。振り返ってみると、あのときの自分たちの必死さとか、おやつとぼのが入ってからの心境の変化は、歌声にもありありと表れてきたなと思います。あとは表現の仕方にも、ちゃんと優しさを込められるようになったので、それは本当に大きいなと思いますね。