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LIVE REPORT

Japanese

シナリオアート / Drop's / ハルカトミユキ

Skream! マガジン 2019年08月号掲載

2019.07.03 @下北沢LIVEHOLIC

Writer 石角 友香

6月9日から連日開催されてきた"LIVEHOLIC 4th Anniversary series"の千秋楽は、アンサンブルの構築もジャンルも異なりながら、物語性や言葉の強度を持つ3アーティストが結集した。

1番手は、5月にデビューからの6年半を凝縮した初のベスト・アルバムをリリースしたハルカトミユキが登場。なんの前触れもなくハルカ(Vo/Gt)がインディーズ時代の曲である「空」を歌い始める。続いて今の開かれた彼女たちを象徴する「世界」を、歌とアコギとミユキ(Key/Cho)の鍵盤のみで表現していく。芯がありつつ柔らかな歌声もより自然に発するようになったハルカの佇まいに今を感じた。ミユキ作曲の80sポップ・テイストのある「インスタントラブ」や、音数を削ぎ落としたアトモスフェリックな「春の雨」。ライヴでお馴染みの「ドライアイス」や「シアノタイプ」を経て、「LIFE 2」へ。"ない"と"ある"を淡々と積み重ねて、生きることについて揺れ動く気持ちを綴るこの曲の強度はライヴで増すことを確信。ラストはふたりの存在を広く知らしめた「17才」で開放的に締めくくった。

張り詰めた空気をぐっとロックンロールとブルースのグルーヴでうねらせたのはDrop's。梅雨真っ盛りの鬱陶しささえ受け入れて吹き飛ばすような「RAINY DAY」でスタート。 中野ミホ(Vo/Gt)の少しハスキーでまっすぐ遠くに放つようなヴォーカル、ギターそのものの音とリフのセンスで聴かせる荒谷朋美(Gt)、男前なビートを放つ小田満美子(Ba)、シンプルでシュアなリズムで支える石川ミナ子(Dr)。今の20代がルーツに根ざした音楽に素直に感動して鳴らすアンサンブルは、なんとも瑞々しい。中盤には、アフリカン・リズムやトロピカル・ハウスのニュアンスも感じる、USインディー直系な「Cinderella」も挟み、このバンドのレンジの広さに驚く。ゴスペルやソウルも自分たちの日常に取り込み、オリジナルに昇華している4人のさりげなさに射抜かれた。

4th Anniversaryの大トリはシナリオアートだ。結成10周年を迎え、昨夏フリーランスとなり、先月まで全国対バン・ツアーを行ってきた3人は、以前よりタフで自由度が高く感じられた。ハヤシコウスケ(Gt/Vo)、ハットリクミコ(Dr/Vo)、ヤマシタタカヒサ(Ba/Cho)の全員で歌う「フユウ」という彼らの物語音楽の特性を堪能させたかと思えば、怒濤のスキルとエモーションを叩きつける「ナナヒツジ」も盛り込む。この曲でハヤシが前方の柵に足を掛けてアピールしたときには、今いかに彼が解放されているのかが端的に伝わって笑顔になってしまった。新曲「アダハダエイリアン」でのハットリのリムショットの冴え、「アオイコドク」ではベース・ミュージック並みのローを生音で出すヤマシタのセンスにも唸る。MCではライヴハウスが存在することへの感謝を述べ、最後は強力なクリーチャーがせめぎ合うような強いロックへとライヴで変貌した、「シーユーネバーランド」でこの3人の音楽愛を証明。アンコールではシナリオアート的ハイブリッド・ナンバー「シニカルデトックス」で自由度と迫力が全開に。今すぐにもまた彼らの世界にどっぷり浸りたくなってしまった。


[setlist]
■ハルカトミユキ
1. 空
2. 世界
3. インスタントラブ
4. 春の雨
5. ドライアイス
6. シアノタイプ
7. LIFE 2
8. 17才

■Drop's
1. RAINY DAY
2. 空はニューデイズ
3. こわして
4. Cinderella
5. 十二月
6. カルーセル・ワルツ
7. 毎日がラブソング
8. Tシャツと涙
9. 新しい季節

■シナリオアート
1. フユウ
2. サヨナラムーンタウン
3. ナナヒツジ
4. ナイトスイマー
5. アダハダエイリアン
6. アオイコドク
7. アカシアホーム
8. シーユーネバーランド
En1. シニカルデトックス

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