Japanese
ハルカトミユキ / コヤマヒデカズ(CIVILIAN)/ 鳴ル銅鑼
Skream! マガジン 2017年08月号掲載
2017.06.14 @下北沢LIVEHOLIC
Writer 沖 さやこ
![](https://skream.jp/livereport/2017/07/img/liveholic_2nd_anniversary_series_vol6_1.jpg)
![](https://skream.jp/livereport/2017/07/img/liveholic_2nd_anniversary_series_vol6_2.jpg)
下北沢LIVEHOLICのオープン2周年記念イベント6日目は、全アーティストがアコースティック編成で登場。1番手は岐阜出身の4人組バンド、鳴ル銅鑼。「俗」で幕を開けたステージは、エモーショナルなヴォーカル、アダルトなギターのアルペジオ、指弾きベースの柔らかい音色、それらを支えるカホンとシンバルのリズム・セクションにより、たちまち艶やかに染まった。バンドのグルーヴはアコースティック編成でも健在。グローバル徹(四弦)と岩ってぃ(太鼓)はアイコンタクトを取りながら、しなやかなリズムを作っていく。
「不埒な女」と「勝ち気」で三輪和也(唄/六弦)はギターを手放し、曲に合わせ身体を動かす。彼の歌声は、時に少年性、時に妖艶さ、時に中性的な魅力を放ち、透明感をもって美しく伸びていった。「酒涙雨」の前にカバ(六弦/歌)が、この曲が収録された自主制作盤『視覚』(※廃盤)をレコーディングした際、グローバル徹が60万円のヴァイオリンを売って資金にしたというエピソードを明かすと、会場からは驚きの声が。演奏だけでなくゆったりとした自然体のMCも観客の心を掴んでいた。"僕は歌があってよかったなといつも思うくらい、人前で歌を歌わせていただくことが大好きです。これだけは胸を張って、僕はいい歌を歌うぞ! と言えることでもあります"と三輪が語ったあとの「空蝉」はとても切なく穏やかに響く。4人の音楽に対する純粋さによって空間が浄化されるような時間だった。
続いて登場したのはCIVILIANのギター・ヴォーカル、コヤマヒデカズ。黒い衣装に身を包み、黒いアコースティック・ギターを手にした彼がおもむろにギターをつま弾くと、「爽やかな逃走」のコードをかき鳴らし始めた。CIVILIANのソングライターである彼の弾き語りは、CIVILIANの楽曲にある核心や真髄そのもの。アコギと歌だけというシンプルな編成が、バンド時以上に言葉の輪郭を際立たせ、楽曲の原石を突きつけてくるようだ。マイクも必要ないのではと思うくらいの声量で、彼はひりついた歌を響かせる。それは曲そのものが持っている気持ち、すなわち曲を作ったころの自分自身の気持ちを呼び起こしているようでもあった。
"前に弾き語りで演奏したときに、弾き語りのアレンジがいまいちだとメンバーから言われた曲をやります"と言い観客を笑わせると、今年3月にリリースされたシングル曲「生者ノ行進」を演奏する。やはりこの曲は現在のモードなのか、ここまでのセットリストの中で最も自然体で無理のない歌声だった。力強いストロークから生まれる音色も鮮やか。昔の楽曲が彼の心情吐露なら、いまの楽曲たちは彼自身を救い、前に進ませる効力があるのかもしれない。8月にリリース予定のシングル曲「顔」もエモーショナル且つ優しい歌声で会場を包み込んだ。コヤマは"ライヴを1本観るというのも、とんでもない体力を使うものだなと思う。だから、こうやって集まってくれる人のおかげで俺たちはこうやって(ステージに)立って、歌を歌っているんだな......といまも思いました"とフロアを見渡して告げる。そのあとに披露した「花よ花よ」は、感謝の気持ちが隅々にまで通う、頼もしい歌だった。
この日のラストを飾ったのはハルカトミユキ。ハルカはアコースティック・ギター、ミユキはキーボードとシンセサイザーを使用するスタイルである。1曲目の「バッドエンドの続きを」から、感情的な演奏で観客の意識をステージ一点へと集める。ふたりの空気感は剣を交わらせるようなスリリングな瞬間もあり、涙を流しながら熱く抱き合うような瞬間もあり、様々なかたちの阿吽の呼吸を見せた。「終わりの始まり」は身震いするほどの緊迫感。ハルカの強い眼力でもって"お前みたいにだけは/なりたくないよ"と歌われたときの背筋が凍る感覚は忘れられない。
ハルカは"2周年というお祝いの席に私たちのような暗いユニットを呼んでくださって"と笑わせ、ミユキも"こんばんは!......曲が暗いから挨拶くらいは元気にしたいと思って(笑)"と言い、ふたりとものびのびと演奏を楽しんでいるようだった。彼女たちはこの日何度も自分たちのことを"暗い"と笑っていたが、彼女たちの描くサウンドスケープは暗いどころかとても鮮やかで、自分たちの心の中にある悲しみや切なさに色をつけていくようだ。ニュー・アルバム『溜息の断面図』に収録される「Fairy Trash Tale」をライヴ初披露したあとは、初期楽曲「Vanilla」を披露。この日一番の感傷性と美意識が会場を浸していくようだった。
"おめでたい席なので、明るいふうの暗い曲......なんとなく明るい曲をやります(笑)"と言い、「伝言ゲーム」。ミユキが笑顔でフロアを見ながらクラップをすると、すかさず観客もクラップを始める。ラストの「世界」ではミユキが笑顔を向けるだけで観客がクラップするというハートフルな一幕も。この2曲ではハルカもミユキも等身大でその瞬間に湧き上がる高揚感を伝えていた。"最後はみなさん全員一斉に歌いましょう!"とシンガロングを促す。晴れやかな歌声と拍手に包まれた爽快なハッピーエンドの余韻はしばらく冷めることはなかった。
[Setlist]
■鳴ル銅鑼
1. 俗
2. フィクション
3. 赤目四十八瀧心中未遂
4. 不埒な女
5. 勝ち気
6. 酒涙雨
7. 空蝉
■コヤマヒデカズ(CIVILIAN)
1. 爽やかな逃走
2. 初めまして
3. 君から電話が来たよ
4. メシア
5. 生者ノ行進
6. 顔
7. 花よ花よ
■ハルカトミユキ
1. バッドエンドの続きを
2. 終わりの始まり
3. 春の雨
4. Fairy Trash Tale
5. Vanilla
6. 伝言ゲーム
7. 世界
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