Japanese
ハルカトミユキ
2016年08月号掲載
Member:ハルカ(Vo/Gt) ミユキ(Key/Cho)
Interviewer:金子 厚武
2015年は毎月新曲を配信しながら、『世界』と『LIFE』という2枚のミニ・アルバムを発表し、10月には日比谷野外大音楽堂でのフリー・ライヴを成功させたハルカトミユキ。勢いそのままに2016年は47都道府県ツアーを敢行しているが、そんな中フル・アルバムとしては実に約2年9ヶ月ぶりとなる『LOVELESS/ARTLESS』がついに完成した。一度離れてしまった感情と楽曲の溝を、飾らずに自然体でいることによって埋め合わせたハルカ。無邪気に音と戯れるだけでなく、"伝える"ことを意識して多くの楽曲を作り上げたミユキ。それぞれが役割を認識し、また差異を認めることによって、ハルカトミユキはあるべき姿を取り戻したのだ。
-フル・アルバムとしては実に約2年9ヶ月ぶりとなる作品がついに完成したわけですが、まずは今の率直な心境から教えてください。
ハルカ:去年は毎月新曲を配信して、ミニ・アルバムも出したけど、フル・アルバムでしかできないことがあるなって思いました。自分たちのことを改めてじっくり振り返ったり、掘り下げたりして、1stフル・アルバム『シアノタイプ』(2013年リリース)があったうえで、今作で何を書こうかっていうことをすごく考えることができて、ちゃんと着地できたと思うし、今を見つめた作品になったなって思います。
-たしかに、『シアノタイプ』や、再始動のミニ・アルバムだった『世界』(2015年リリース)からの円環みたいなものはすごく感じました。ベタな喩えですけど、螺旋階段というか、1周回って元の場所に戻ってきた感覚もありつつ、でも確実に昔より上に位置してるっていう。
ハルカ:そう感じてもらえて嬉しいです。"同じことをやろうとしても同じにはならないな"って、無意識のうちに感じながら作っていて、2年9ヶ月分の上がり方ができたんじゃないかな。
ミユキ:4、5月はハルカが舞台をやっていて、私には2ヶ月間丸々曲作りをする時間があって。"自分の好きなものを作る"ってところから、もっと"人に伝わるには?"とか"人にわかってもらえるには?"っていうことを今回すごく考えて、そのうえで自分の好きなものを纏わせてあげられたかなって。『シアノタイプ』のときはインタールードしか入ってなくて、私はああいうのが好きだし、好きな人は好きだと思うんですけど、そうじゃなくて、誰が聴いてもハッとするような曲にしたいと思って、そこが一番変わったと思います。
-ミユキさんが作曲する割合が増えたのは、ハルカさんが舞台をやっていたっていう物理的な理由だけじゃなくて、もっとひとりひとりが作品と向き合う必要性を感じたからなのではないかとも思ったのですが、いかがですか?
ハルカ:本来そうあるべきだとはずっと思っていて。私が弾き語りで作るものにミユキがシンセ・フレーズを乗せるっていう今までのやり方だと、結局私の中の広がりしかないから、アレンジって枠を超えて、私の中にないものが欲しいと思ってたんです。もしかしたら、『シアノタイプ』のころはまだそれが出せなかったのかもしれないけど、"自分たちの好みや作りたいものの表現"だけじゃなくて、もっと"伝える"ってことを考えないと曲って作れないんだってことに、2年9ヶ月かけて辿り着けたんじゃないのかなと。私もミユキも。だから、今回は私の曲もミユキの曲も、どっちもがハルカトミユキだなって感じてます。
-ミユキさんが"人に伝える"ということを重視して曲を考えるようになったのは、何かきっかけがあったのでしょうか?
ミユキ:去年の12月に配信した「ワールドワイドウエブは死んでる」ができたときに、わかりやすいポップスと私の好きな80年代の音楽がカチッとハマッたと思って、この曲は私たちのことを知らない人にもきっと届くし、何かのきっかけになるんじゃないかと思ったんです。でも、カウントダウン・フェスでやったときに、前方で観てたお客さんが"おっ!"って反応した瞬間はあったんですけど、遠くにいる人には全然届いてないなって思ったんです。それは自分のパフォーマンスのせいでもあると思うんですけど、もっと根本的なところから変えないといけないなってすごく思って、やっぱり耳が奪われるメロディを作んなきゃなって。もちろん今までも作ってはいたんですけど、ハルカが作ってくる曲に対して、私は奇をてらって変な曲を作るようになっちゃってたんですよね。
-"ハルカトミユキのメインのソングライターはハルカで、私はそれに色を添える役割"って、自分の中で決めてしまっていたと。
ミユキ:そうなんです。どんどんそういう方向に行っちゃってたのを、まず直さなきゃって思ったし、気持ち的に"遠くの人にも伝えたい"って強く思うようになったことで、作る曲も変わってきてるんじゃないかと思います。
-そこで考えの変化があったからこそ、「ワールドワイドウエブは死んでる」を始め、既発曲は1曲も収録せずに、全曲新録のアルバムになったわけですね。
ミユキ:人の心に突き刺さるような音楽を一番作りたいんですけど、そのためには入り口を広くしないといけなくて、そこが一番足りてなかったと思うんです。今回のアルバムには10曲しか入ってないけど、1曲1曲にちゃんと役割分担があって。ハルカの曲は"THE ハルカトミユキ"なんですけど、私の曲はそれを引き立てつつ、対等にも立たせたいと思ってました。
やっぱり、希望の歌を歌いたい。それを自分らしく、素直に書くことが何より重要でした
-最初にハルカさんが"フル・アルバムだからこそできることがある"とおっしゃってましたが、アルバムの全体像は初めから見えていたのでしょうか? それとも、1曲1曲作っていく中で、徐々に見えてきた感じでしょうか?
ハルカ:コンセプトがあったわけではないんですけど、一度自分たちを見つめ直して、立ち返って、そのうえで素直に曲を書けば、絶対ブレはないと思ってたんです。曲調とかアレンジのバラエティはあっても、一貫したものがあるって、書き始めた時点で漠然と感じてました。だからあんまり"何を歌ったらいいんだろう?"とか"今までにこういう曲があるから、じゃあ、今回はこうしよう"とか、そういう意識はほとんどなく、ホントに自然に書いていった感じなんですよね。
-自分たちを見つめ直したことで、"ハルカトミユキってやっぱりこうだよね"っていうものを確認できた?
ハルカ:昔からずっと思ってて、今回改めて思ったのは、やっぱり希望の歌を歌いたいってことで。でもその希望っていうのは、単純な"頑張れ"じゃないんです。最後には救われる曲を書きたいっていうのは一切変わってなくて、"歌詞が暗い"とか"絶望的だ"って言われようと、絶望は絶望でしか救えないと思うので。ただ、そういう表現ってわかりづらくもあるから、これじゃ伝わってなかったのかって、迷うときもあった。それであえて強くて短い言葉に削ぎ落としてストレートに書いてみたり。今回は、根本の気持ちは変わってないけど、昔に比べて私が大人になった部分もあるだろうし、絶望とか希望の書き方もちゃんと更新されてるのかなっていうふうには思いますね。
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