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LIVE REPORT

Japanese

ハルカトミユキ / MANAKO / Twingowind / micanythm(O.A.)

Skream! マガジン 2023年01月号掲載

2022.12.14 @下北沢LIVEHOLIC

Writer : 長澤 智典 Photographer:堺柊人

下北沢LIVEHOLICの7周年を記念し開催していた"LIVEHOLIC 7th Anniversary series"。12月14日には、"LIVEHOLIC 7th Anniversary series ~Diva~"と題したイベントを行った。出演したのはTwingowind、ハルカトミユキ、MANAKO、micanythm(O.A.)。当日の模様を、ここにお伝えしたい。

オープニング・アクトとして、micanythmが登場。冒頭から重厚な音がフロア中へと降り注ぐ。朗々とした歌声を、うねる音の上で踊らせる「echoes」からスタート。揺れ動く感情を凛々しい声で突き刺せば、演奏は大きく波打つ雄大な景観を描き出す。気づいたらゆったりと身体を揺らしていた。

歪んだギターの音がステージ上から響き渡る。荒ぶる音の上で、メロウな歌を響かせるmoni.。「re-collect」を通して見せた、ねっとり絡みつく歌声とソリッド且つ激しめの演奏。際立つふたつの表情の心地よい絡み合いが、曲調を変えたこの歌から見えてきた。

甘く優しいブルーズなギターの音色が場内へ響く。終電後の気だるくも快い時間帯を過ごす感覚へ導くように「0:36」を演奏。音数の少ない、空間を生かした演奏の上で、moni.の歌声が胸の奥へ奥へとスーッと侵入していく。入り込むのではない、気持ち良く微睡んでいたら、いつしか彼女の歌声が心の部屋の中に居座っていた。そんな淡い音色とねっとり絡みつくようなmoni.の歌声に、しばしほろ酔い気分で耳を傾け、身体を揺らしていた。

最後は、駆け出すビートの上で荒ぶる音を響かせ「愛だけで」を演奏。チクチクッと胸を刺す緊張感を抱いた音の上で、温もりを覚えるmoni.の歌声がフロア中の人たちの気持ちをギュッと抱きしめる。身体を横に揺らしながら、感情的なその歌声に心の手を伸ばして触れていたい。心動くままに歌い上げる、その声も印象深く耳に届いていた。

暗闇の中、物悲しいエレピの音色が響く。その音の上で、東条ジョナが切なさを抱いた声でハミングをすれば、ふたりのメンバーもハミングを重ね、淡く美しいハーモニーを描き出す。Twingowindのステージだ。白い光に包まれだした舞台の上で織りなす3人の歌声と演奏のセッションは、次第に「up to you」へ形を成していく。触れたら壊れそうな美しく儚さを抱いた演奏の上で、次第に熱を帯びてゆく東条ジョナの歌声。まさに、心地よい微睡みを覚える楽曲だ。3人が現実を忘れた温かくも不思議な世界へ、観ている人たちを連れ出してゆく。

物語を語るように、言葉のひと言ひと言を大切に歌う東条ジョナ。彼女の歌声に、エレピを弾きながら歌う川﨑レオン(Key)の声が優しく寄り添う。楽曲は、次第にソウルフルな香りを振りまきながら曲の輪郭を際立てた。「iris」、短い中にも、とても気持ち良さを覚える歌だ。

夢心地な優しい音色を紡ぎながら「JUNE」へ。囁くような歌声と絡み合うベースとエレピの演奏。そのコントラストは、まるでムーディなソウル・ミュージックに触れているよう。とても肌触りのいい歌と演奏だ。少ない音数の中、3人の奏でる音色と歌声やコーラスがミニマムな歌世界を描き出す。ブランケットにくるまれたような温かさを感じながら、夢うつつの感覚を覚えた。演奏中、そんな感覚にずっと浸っていた。

榎本こさんの奏でる踊るようなベースの音へ寄り添うように、歌や演奏を重ねる。ミドル・テンポの楽曲ながらも高揚を覚えるのは、メンバーらの気持ちが跳ねれば、その感情が、そのまま演奏に映し出されていたからだ。次第に熱を帯び、エモさを増す東条ジョナの歌声。「Writer」も、気持ちを優しく弾ませる楽曲だ。

零れるように、フロア中に響くエレピの音。その音を拾い上げるように歌声とベースの音色が心にスーッと入り込んできた。とてもムーディでスウィートな曲調が魅力の「venusbelt」が、ひとりひとりへそっと寄り添い、一緒に優しく心を揺らそうと誘い掛ける。甘くメロウなネオソウル風の歌と演奏だ。今は、この甘い音たちが織りなすソファ(演奏)の上に寝そべっていたい。

軽快に跳ねた演奏にほろ酔い気分にも似た感じを覚えながら、ナイト・ウォークするようにフラフラと歩きたい気分だ。「Nightmusic」を心のBGMに、気持ちを優しく解き放ち、軽やかにステップを踏みながら踊ろうか。頭を空っぽに、スキップをしたくなる。そんなふうに、感じるままに身体を揺らしていたい。

最後は、ジャジーな香りを持った「pray」を通し、祈るような思いさえもとても軽やかに響かせてきた。胸の中に抱いた深い思いを、優しく弾む音に乗せて届けることでより聴き手も親しみを覚える。色濃い胸の内に触れたことで、ますます気持ちが深くはまっていく。とても親しみやすく、手触りの良いポップ・ソングにこのままずっと触れていたい。

MANAKOのライヴは、「青とドライブ」を熱いエンジンを吹かせるようにスタート。歌と演奏が始まったとたん、ここに晴れ渡る空間が生まれた。彼女の歌や演奏を、気持ちをグッと踏み込むアクセルにしながら、湾岸のハイウェイをドライヴしてゆく。そんなキラキラと輝く気持ちに、場内にいた人たちの心を冒頭から染め上げていた。

2022年のライヴは、この日が最後。それも加味してか、まなこ自身の歌声にいつも以上に熱を覚える。たくさんの幸せの光をかき集めるように歌った「旅人の詩」でも、歌や演奏に触れている間中、ずっと気持ちが嬉しく騒いでいた。勢い良く駆ける演奏へ一緒に飛び乗り、怖いもの知らずの勇者のように心を染め上げ、視線の先に広がる幸せをつかむためMANAKOと一緒に走っていたい。そんな気分だ。

続く「FAKE」では、ギアは少しだけ緩め。でも、優しく弾む演奏に乗せゆらり揺らめく音を感じながら、ゆったりと身体を揺らしていた。彼女たちの歌声や演奏に快さを覚えながらも、気持ちは歌詞へ記された深い思いにも強く惹かれる。熱情的な空気の中、まなこは物語の語り部として、女性の淡く切ない恋心を歌っていた。

甘えた素振りで歌い掛ける歌声が、心にスーッと流れ込む。「エンドロール」でも、自身が恋心を綴る語り部となり、目の前にストーリーを映し出す。その景色に寄り添うだけではなく、その物語の中へ心を溶け込ませ、物語に登場する主人公のパートナーになった気分で、彼女の歌声に優しく寄り添っていた。終盤の"ラララ"のパートでは、フロアのあちこちで振り上げた手が大きく揺れる。恋心のように見せて、応援してくれる人たちへ向けた歌として響かせるスタイルも、MANAKOらしい。

そして、弾む楽曲の上でわくわくとした気持ちを歌声に変え、ここにいる人たちみんなを抱きしめるように「with you」を歌った。前向きな自分に変えてくれる人たちへの感謝の思いを、彼女は"あなたがいてくれればいいの"と言葉にして届けていた。気持ちを前に向けた、とても明るい歌声だ。その温かい強さに触れ、観ている人たちも心に前向きな風を覚えながら熱い視線を舞台の上に向けていた。

そこからまなこは言葉のひと言ひと言を大切に「END」を歌い出した。愛しく大切な人へ向け、少しでも想いが届くようにと彼女は歌う。胸の内から、温かい熱が込み上がった。まなこはまるで手紙を読むように歌っていた。笑顔の自分になれることへ感謝と喜びを覚えるように、たくさんのありがとうの気持ちを込め、愛おしい人へ向けた歌声の手紙を届けた。

最後は、みんなでパーティー気分を胸に一緒に盛り上がろうと「Crossing」を歌ってくれた。心が晴れ渡る、華やかな歌と楽曲だ。色鮮やかな歌声や演奏の音譜が、次々と舞台の上から溢れ出す。輝くその楽しさに心ときめかせた観客たちが、熱いクラップを返した。気持ちをひとつにしたその関係が嬉しい。曲が進むごとに歌声や楽曲がカラフルに色づき、ハッピーな楽しさを降り注ぐ。いつしか拳を振り上げる景色がフロアのあちこちに生まれていたのも、すごくわかる。だって、楽しい気持ちを抑えるなんて意味のないことだからさ。

2022年、デビュー10周年を迎えたハルカトミユキ。アコギとエレピというシンプルなスタイルに観客たちのクラップを加え、ふたりは楽曲に彩りを与える。冒頭を飾った「鳴らない電話」では伸びのあるハルカの歌声とミユキ(Key/Cho)のハーモニー、ふたりの演奏に、観客たちの思いを寄せる熱も加えながら、胸を揺らすアンサンブルを描き上げていった。シンプルな演奏なのにとてもハートウォーミングに感じていたのも、この場にいる人たちが、心の中に生まれた思いという音符をふたりの演奏へ彩りとして加えていたからだ。

ハルカトミユキにとって、このイベントはもちろん、小屋自体とても馴染み深い。そんな思い出もMCで振り返っていた。

最新シングルより届けたのが、「恋に気付くのは」。アコギとエレピの音色がひとつに重なり合い、温かい空気のように脹らみだす。その温かい音が飛び交う中へ、ふたりの歌声が淡い色を加えてゆく。恋した気持ちが想いを募らせるごとに明るく色づくように、淡い恋心が、どんどん期待や願いを吸収し華やいでいった。

マイナー調の演奏に乗せ、ふたりは思いの色を塗り替えるように「シアノタイプ」を歌唱する。1曲ごとに曲調を変えてゆく彼女たち。心模様も幸せから切なさへと塗り変わってゆくが、根底にある"人を思いやる"気持ちは一貫している。その気持ちが何色だろうと、どの歌でもハルカとミユキは芯に抱いた思いを真っ直ぐに届ける。その強い思いにいつしか心が惹かれ、その気持ちへ一緒に染まってゆく。

ミユキのエレピの演奏を背に、言葉のひと言ひと言を大切に紡ぐように、ハルカは「アイリス」を歌いだした。鍵盤だけのシンプルな演奏に揺れ動く感情を乗せることで、細かい表情までしっかりと見えてきた。その歌声は、この場にいるひとりひとりの心を、切々とした世界へと引き寄せる。痛い胸の内を嘆くように歌う声に触れ、その傷口を少しでも塞ぎたくて心の手を伸ばしていた。いや、一緒に心の傷を分かちながら、赤い涙を共に心の中で流していた。

再び、アコギとエレピの音色が切ない色を折り重ねだす。続く「RAINY」でも、ハルカはブルーに染まる心の色へどっぷり浸りながら、悲嘆した思いを零すように歌った。フロアにいた人たちは、ふたりの語る切ない心模様の行方を追いかけるようにじっと耳を傾けていた。

最新シングルの表題曲「十字路に立つ」は、10周年のために制作した楽曲。この歌は、人生の岐路に立ったふたりが、自分の原点となる思いを確かめつつも、これからの進む道を改めて示唆してゆく、とても雄々しく、スケール感の溢れた楽曲だ。ハルカトミユキが10周年という時期に、本当に大きな岐路に立ったからこそ、ここには未来へ進むふたりの強い意思と決意が記されている。過去の自分たちの歩みを認めたうえで、ふたりは未来へ向かう強い意思を示していた。この曲は、これからのハルカトミユキが未来へ進むうえでの大切な道標となる歌になりそうだ。

最後は「17才」を歌唱。ふたりのハーモニーが、心を晴れ渡る世界へ連れ出した。とても夢や希望に満ちた歌だ。いや、弱い自分を認めたうえで、それでも未来に強く手を伸ばす自分でいたい。いくつになっても失くしたくない思いを最後に届け、ここに足を運んだ人たちを、輝きが待っている未来へと連れ出してくれた。

熱望する声を受け、予定外のアンコール曲として「世界」を、気持ちを解き放つように歌った。力強く駆ける楽曲に合わせ、フロアからも熱い手拍子が鳴り響く。舞台の上のふたりとフロアにいる人たちはともに、熱い気持ちを胸に、笑みを浮かべていた。温かい声と手拍子の温度を互いに感じながら、最後まで笑顔を分かち合っていた。終盤では、自然と"パッパパッパーララ"と合唱が生まれていたのも、気持ちが抑えられなかったからだ。


[Setlist]
■micanythm(O.A.)
1. echoes
2. re-collect
3. 0:36
4. 愛だけで

■Twingowind
1. up to you
2. iris
3. JUNE
4. Writer
5. venusbelt
6. Nightmusic
7. pray

■MANAKO
1. 青とドライブ
2. 旅人の詩
3. FAKE
4. エンドロール
5. with you
6. END
7. Crossing

■ハルカトミユキ
1. 鳴らない電話
2. 恋に気付くのは
3. シアノタイプ
4. アイリス
5. RAINY
6. 十字路に立つ
7. 17才
En. 世界

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