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INTERVIEW

Japanese

ハルカトミユキ

2017年07月号掲載

ハルカトミユキ

Member:ハルカ(Vo/Gt) ミユキ(Key/Cho)

Interviewer:金子 厚武

今年2月に行われた5周年ツアーを経て、ハルカトミユキがニュー・アルバム『溜息の断面図』を完成させた。前作『LOVELESS/ARTLESS』は長い試行錯誤がようやくひとつの円環を迎え、彼女たちにとっての区切りとなる作品だったが、それからわずか10ヶ月で発表される新作では、本来の持ち味である鋭利な言葉の切れ味が復活。なおかつ、そこにこれまでとは別次元のサウンドが加わることで、ふたりの本質である"怒り"をはっきりと浮かび上がらせることに成功している。面目躍如たる1枚について、ふたりにじっくりと話を訊いた。

-『溜息の断面図』、非常に強烈なアルバムだと感じました。時代の閉塞感に寄り添って内向的になるわけではなく、むしろ奮い立たせるような、挑戦的なアルバムだなと。内容に対する手応えをどう感じていますか?

ハルカ:痛快ですね(笑)。"言いたいことを言ってやった"っていう感じがすごくあります。今までもそういう書き方をしてきたけど、今回はよりそれを感じていて、どこかブチ切れた感じもあったというか(笑)。

ミユキ:2月のツアーの時点で、"攻めの5周年にしよう"っていう気持ちがあったので、曲作りも"怒り"とか"攻め"を意識しながらやってたんです。なので、今回はホントに言葉も音も爆発してるなって思うんですけど、実はこの感じってふたりでやり始めたときから変わってないんですよね。ただ、今回はホントに音と言葉がマッチしたなって、そういう手応えがすごくあります。

-2月のツアーの初日は、ふたりが初めて演奏した池袋マンホールでのスペシャル・ライヴで、そこで原点を確認するような感じがあったのでしょうか?

ミユキ:あったと思います。ライヴを行う数日前にふたりで学校に行って、思い出の場所を回ったりもしたので、当時を思い出して、ホント無敵状態で攻めてたなって思ったんです。お客さんのことを考えて、"もっとこうしなきゃ"みたいなことはまったく意識せず、"やりたいことをやるんだ"って感じだったのに、最近はそういう感情が少し薄れてきてたかなって。そこを思い出させてくれたので、池袋でやってよかったです。

ハルカ:"帰ってきた"みたいな感じはなくて、"丸くなってるぞ"って思い知らされたというか。当時は荒削りではあったけど、今とは全然違ったなってことを突きつけられて、自分の中から自然と出てくる衝動的な部分っていうのを、池袋に行って思い出しました。

ミユキさんのブログに、"一度アルバムのテーマを話し合って、それからそれぞれ曲を作った"とありましたが、そのテーマっていうのが、"怒り"とか"攻め"だったわけですか?

ミユキ:そうですね。2月のツアー後に本格的な制作が始まって、お互い曲を作って持っていったんですけど、"何か違う"って感じで。それで1回話し合いをしたときに、私たちにとって一番大事なのは"言葉"で、根底にあるのは"怒り"だってことを再確認したんです。最初におっしゃった"閉塞感"みたいなこともまさに話して、そこに対する不満を爆発させるような音と言葉を合わせた曲を作ろうと思い、そこから曲がどんどんできていきました。特にハルカは、3月上旬くらいまではフワフワした曲を作ってたのが、中旬くらいには"え?"っていうような、弾き語りなのに苛立ちがはっきりわかる、誰が聴いてもわかるような切り替えがあって、そこからはホントに早かったです。

ハルカ:たぶん、いろいろ疲れ果ててたんだと思います(笑)。周りの人に頭を下げたりとか、そういうことに疲れ果てて、ある瞬間にブチ切れたんですよね。ここ何年かは無理矢理、大人になろうとしてた部分があって、もちろん、それは必要なことでもあるんですけど、でもそれってアーティストとしては弱さに繋がりかねないし、言葉を出すうえでは邪魔になる部分もたくさんあって、そこでいったんブチ切れてみたら、すごく楽になったんです。"そんなことかまってられない"ってなったら、その瞬間に出てくる言葉が変わって、自分から出てくる言葉にさらに興奮して、"こんなふうに思ってたんだ"ってなったら、そこからは芋づる式に、"出るわ、出るわ"みたいな感じになりました。

ミユキ:"あ、取り戻したんだ"って思いました。それで、私も今回は"怒り"のモードで曲作りをしていたので、前回より格段に言葉と音がハマったなって。

ハルカ:そもそも"怒り"をテーマにするって、怒ってなきゃ書けないじゃないですか? テーマという以前に感情なので、そういう感情があったから、必然的にこうなったのかなと思います。"怒り"って、私たちにとっては初期から根底にあるテーマなんですけど、この5年間でどこか抑えるようになってた部分があったと思うんです。私なんて、もともと人と関わって何かをすることが極端に苦手な人間なんですけど、そんなこと言ってたら生きていけないから、それを何とかやってきた。でも、そういうなかでそれぞれに思うことが絶対にあって、今回はそれをちゃんと"怒り"として表現できたかなって思います。

-改めて浮かび上がった"怒り"は、主にどこに向けられたものだと感じていますか?

ミユキ:私は自分だけだと何に怒ってるのかあんまりわかってないんですよね(笑)。苦しいことより楽しいことの方が好きだから、そこは無視したくなっちゃう。でも、今回"多幸感みたいなのがいいね"って話をして、怒り狂いすぎて逆に楽しくなっちゃうみたいな、そういうのをやりたいと思って、「わらべうた」(Track.1)とかはその感覚に近いものになったかなと思っています。そこはすごく私たちの本質というか、前回はライヴの本数が多かったこともあって、"盛り上げる"みたいな部分を意識してたけど、それは言ってみればハルカトミユキの本質の周りの部分で、でも今回は自分ももっと本質的な部分に関わりたいと思って、曲を作ったっていうのは大きいです。