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INTERVIEW

Japanese

ハルカトミユキ

2017年07月号掲載

ハルカトミユキ

Member:ハルカ(Vo/Gt) ミユキ(Key/Cho)

Interviewer:金子 厚武

-ハルカさんは"怒り"の正体をどのように感じていますか? 途中でミユキさんから"閉塞感"について話をしたというコメントもありましたが。

ハルカ:私たちが曲を作り始めたときからそういうことは感じていて、それを何とか言葉にしようとしてきたと思うんですけど、最近は逆に、みんなそこに開き直り始めてるというか、抵抗する気もなくなって、すごく怖いところまで来ちゃってるなと思うんです。今って"無意味なものが偉い"みたいなことを感じるというか、何かを隠れみのにして、誰も素手で戦わないみたいな、みんな身のかわし方がうまくなってて、私はその感じがすごく嫌だったんです。

-思考停止状態になってしまっているというか。

ハルカ:それが怖いし、嫌だし、腹立たしいしってところはすごくありました。それが怒りの根源だったかもしれないです。だから、今回みたいな作品に対しても、"いやいや、そんな怒んなよ"って言う人もいると思うんです。そうやって何とかやってきた部分もあるんでしょうけど、今はそのうち取り返しがつかないところまで行っちゃいそうな空気があると感じているんですよね。私は使命感とかは特に感じてないですけど、"歌はこうあってほしい"っていう考えはあって、だったら、言いたいことを歌で言ってやろうと思っています。


溜息の断面図をちゃんと見て、言葉にして、気づいてもらう。そういうアルバムができたと思ってます


-ハルカさんは常々"希望の歌を歌いたい"と言っていて、つまり、ハルカトミユキなりに希望を歌ううえで、"怒り"という要素がすごく重要だということですよね。

ハルカ:そうですね。やっぱり、私は世界は言葉でできてると思うんです。だから、どんな世界でも、言葉の使い方がうまい人、声が大きい人が勝つ。でも、言葉がない人は感情もないのかっていうと、そうじゃないじゃないですか? ミユキがさっき"私は何に怒ってるのかわからない"って言ってたけど、言葉にできてないだけで、みんなそれぞれ思うことは絶対にある。それはもちろん聴く人もそうで、だから、それを言葉にしてあげるのが、私の仕事なのかなと。言葉にすることで初めて自分の中にあるものを認識できるわけで、それを知らないまま生きてしまうのはすごく悲しいというか、世界が狭く感じると思うんです。なので、そこをちゃんと言葉にしてあげれば、人は救われるんじゃないかな。違和感とかも、それが違和感として残るのは、それを言い表す言葉がないからで、それをちゃんと探せれば、気持ちも絶対に変わるはずなんです。

-なおかつ、それは"悲しい"とか"嬉しい"のような記号的な言葉で表すことができるものではないから、違和感なら違和感とちゃんと向き合って、解きほぐして、言葉にしてあげることが重要だったりすると。

ハルカ:そうですね。だから、歌詞を書くのってつらい作業ではあるんですけど、探してた言葉に出会った瞬間には、自分が救われるような感覚になるんです。その感覚がすごく好きだから、ずっと書いてるんだろうなって思うんです。今回は"溜息の断面図"ってタイトルですけど、言葉で言い表せないことが溜息になって出るわけじゃないですか? でも、私は溜息で済ませてることを言葉にしたくて、それができるのが歌だと思うんです。"あなたの溜息は、こういうことじゃない?"とか、そう言ってあげられる存在になりたい。溜息の断面図をちゃんと見て、言葉にして、気づいてもらう。そういうアルバムができたんじゃないかと思ってます。

-冒頭の3曲は本作の攻めのモードをよく表していると思うのですが、さっき"多幸感"という話も出た1曲目の「わらべうた」に関しては、どのようにできたのでしょうか?

ハルカ:これは結構フィジカルな曲というか、(歌詞を見ながら)怒ってはいるんですけど......いや、だいぶ怒ってますね(笑)。

-"白か黒しかわからない/想像力のない奴ら"ですからね(笑)。

ハルカ:こういう曲は書きやすいんです。ホントに思ってることだから、スラスラ出てきちゃう。ただ、曲として人に聴いてもらうためには、線引きが必要じゃないですか? ただの個人的な恨みの攻撃はダメだけど、そこの絶妙なところを行けた気がして、"何を言ってるかよくわからないんだけど、なんかわかる"っていう感じにしたかったんですよね。あんまり簡単に共感してほしくはないんですけど......そもそも"共感"っていう言葉自体が軽くなってるというか、J-POPの歌詞を聴いて"共感した"って言ってる人って、ホントの意味では共感してないと思うんですよ。だから、私はホントの意味で共感してほしくて、それって"あなたがホントに思ってるけど、一度も口にしたことなかったでしょ?"っていうのを提示することだと思うので、そういう歌詞を書きたかったんです。

-中盤にはインパクトの強いミユキ作曲の曲が並んでいて、「終わりの始まり」(Track.4)は2月のツアーでも披露されていましたね。

ミユキ:"攻めてる自分たちを見せたい"と考えるなかで曲作りをしていて、それこそ池袋に行って思い出したのが、私はKurt Cobain(NIRVANA)に憧れてて、命を削って歌ってる感じにすごく惹かれて、そういうのを自分でも作りたかったんです。女2人組だからって、ゆるい音楽をやってるわけじゃないって示したかったんです。今までは言葉だけ先行してたかもしれないけど、この曲ではルート音がずっと同じで、ひたすら緊張感のあるものにして、ようやく一番やりたかったことが形にできたと思ってます。今回は言葉に助けられた曲が多いと思っていて、この曲もいい言葉が乗ることで完成したと思うので、そこは感謝してます。