
Japanese
ハルカトミユキ
Skream! マガジン 2014年12月号掲載

2014.11.15 @LIQUIDROOM ebisu
Writer 天野 史彬
 ハルカが変わった――。
ハルカが変わった――。
というのがとにかく、このライヴで得た最大にして最重要の実感だった。ハルカが変わった。変わったよ。ハルカトミユキ、秋の東名阪ワンマン・ツアーの最終公演、東京は恵比寿LIQUIDROOM公演である。
何かリリースものがあってのツアーでも、重要な発表があるからのツアーでもなかった今回のツアー。しかし、何故ハルカトミユキのふたりがこのタイミングで自分たちの姿を各地のオーディエンスの前に見せようとしたのか、その理由はよくわかる。見せたかったのだ。変わっていく自分たちを。試したかったのだ。変わりゆく自分たちを。
いきなりだけど、ちょっとだけ脱線。
こうやって音楽に関して文章を書く仕事なんかをしていると、"音"と"言葉"の違いについては、やはり頻繁に考えてしまう。もちろんこれは、"音(オケ)と歌詞はどっちが重要か?"みたいな感じで優劣をつけよう、という不毛な話とはまったく違う。ただ、やはりこうして文章を書いていて思うのは、"音"と"言葉"が持ち得る力とは、やはり全然違うものなのだなー。ということなのだった。この違いを簡潔に書くと、音はどこまでも身体的であり、言葉はどこまでも観念的である、ということになる。往々にして、音は体に、言葉は脳みそに、語りかけるのだ。そう考えると、何千何万という言葉を紡ぎながら、脳みそに働きかけて思考を促す"言葉"と違って、たったひとつの音が鳴った瞬間に、ガッと人の心と体を捉えて突き動かしてしまう"音"という存在は、やはりすさまじい。音にも言葉にも無限の可能性があるし、音楽を批評することは、音を直接言葉にすることとはまったく違うけれど、でも、たまーに、自分が音楽に関して言葉を書いていることは、絶対に勝てない試合を永遠と挑んでいるような、そんな行為なんじゃないかと思って大きな徒労感と無力感もたらしたりします。正直な話。でも書くのだけど。
 脱線終了。ハルカトミユキの話。
脱線終了。ハルカトミユキの話。
ハルカトミユキというユニットは、メンバーであるハルカとミユキというふたりの女性の存在自体が、今書いた"言葉=観念"と"音=身体"の関係性そのものだった、と言える。言葉を紡ぐ人=ハルカと、音と戯れる人=ミユキ。もちろん、現在の彼女たちのレパートリーの大半はハルカが作曲したものだが、これまでのハルカにとっての"曲"とは、あくまでも言葉を届けるための存在だったのではないか、と思う。そしてミユキは、その脳内を音に直接変換できるマッド・ミュージシャンっぷりと、持ち前の無邪気さでもって、"音"そのものを体現してみせる。ライヴにおいても、ハルカは虚空に向かって言葉を突き刺すように歌い、ミユキは音を鳴らし、踊ることで目の前のオーディエンスと直接コミュニケートしてみせた。そんな、表現者として決定的に異なった性質を持つふたりのバランスこそ、ハルカトミユキだった。しかし、このふたりをこうしたバランスの中で語ることはもうないような気がする。何故なら、ハルカが変わったから。
この日、ステージの上にいたハルカは、まるで獣のようだった。感情という名の牙を剥く美しき獰猛な獣。まず特筆すべきは冒頭3曲。なんと、初っ端から新曲3曲――もらったセットリスト上では「生まれる」、「裸足」、「子猫」と名づけられていた――を持ってくるという攻め具合。しかしながら、この新曲たちがすさまじかった。この日、一聴した限りだが、たとえば1曲目に演奏された「生まれる」は、90年代初頭のTHE STONE ROSESやPRIMAL SCREAMを想起させる、巨大な渦にオーディエンスを巻き込んでいくようなダンサブルな音像が、あるいは3曲目「子猫」では深淵なる宇宙に聴き手を飲み込んでいくような雄大で美しい旋律が、とても大きなスケール感で鳴り響いていた。どの曲も、とにかくグルーヴィ。且つヘヴィ。且つ肉体的。この新曲群、驚くべきことにハルカはハンドマイクで歌っていた。終演後に本人に訊いたところ、この試みは今回のツアーがほぼ初めてらしい。いつもはギターを抱え、丁寧に言葉を紡いでいたハルカが、その全身を使った身体表現でもって想いを音に重ねていた。長い両手が宙を切り裂き流線型を描く、そのシルエットの美しさ。極めつけは、言葉にならない叫び。歌人としての顔も持ち、細やかな言語表現を得意としてきたハルカが、叫んでいた。アーアーー!と、言葉にならない想いを叫んでいたのだ。溢れていた。まるで、もう言葉はもどかしいと言わんばかりに。想いがどろっどろの塊となって、溢れていた。ハルカトミユキがこのツアーで僕らに見せようとしたのは、伝えようとしたのは、これだったのだ。
 この日、ハルカが見せたパフォーマンスを形作っていたもの。それをひと言で言い表すならば、"欲望"だった。あなたに想いを伝えたいという欲望。この世界と生身でコミュニケーションを取りたいという欲望。"愛してごめん"なんて言いたくなくて、"愛してる"という怒号を打ちつけてしまいたい。欲しいものは欲しい。私のすべてをやるから、お前のすべてをよこせ――そんな叫びを、この日のハルカの歌からは聴いたような気がする。そして今のハルカの、伝えることに対する貪欲さを形にしたのは"言葉"以上に"音"と"体"だった。思考より感覚。脳より肉体。音の持つ速度、直接性、筋力......それを彼女は求めたのだ。過去曲に関しても、ミユキとふたりだけで演奏された代表曲「シアノタイプ」や「ドライアイス」は、彼女たちの繊細な息遣いが耳元で囁かれるような生々しさでもって、冒頭の新曲たちと同じようにハルカがハンドマイクを握った未発表曲の「middle」や、こちらもダンサブルな新曲「フラワー」は、グルーヴ感のあるバンド・サウンドを伴って、私たちの体に直接的に語りかけてきた。「その日が来たら」は、『シアノタイプ』期から現在のハルカトミユキに変化する、その狭間にある"揺らぎ"が生々しく表出していた。きっと、"究極のラヴ・ソングを作る"という命題のもとに生まれたこの曲がなければ、今回のような変化は生まれなかっただろう。すべてが今まで以上に剥き出しで、野生的。この日のハルカトミユキのライヴは、まるで、整理される前のまっさらな欲望で母親を求める赤ん坊の泣き声のようだった。あ、そうか。だから新曲のタイトルは「生まれる」、なのだ。ハルカトミユキはもう1度、生まれたのだ。
この日、ハルカが見せたパフォーマンスを形作っていたもの。それをひと言で言い表すならば、"欲望"だった。あなたに想いを伝えたいという欲望。この世界と生身でコミュニケーションを取りたいという欲望。"愛してごめん"なんて言いたくなくて、"愛してる"という怒号を打ちつけてしまいたい。欲しいものは欲しい。私のすべてをやるから、お前のすべてをよこせ――そんな叫びを、この日のハルカの歌からは聴いたような気がする。そして今のハルカの、伝えることに対する貪欲さを形にしたのは"言葉"以上に"音"と"体"だった。思考より感覚。脳より肉体。音の持つ速度、直接性、筋力......それを彼女は求めたのだ。過去曲に関しても、ミユキとふたりだけで演奏された代表曲「シアノタイプ」や「ドライアイス」は、彼女たちの繊細な息遣いが耳元で囁かれるような生々しさでもって、冒頭の新曲たちと同じようにハルカがハンドマイクを握った未発表曲の「middle」や、こちらもダンサブルな新曲「フラワー」は、グルーヴ感のあるバンド・サウンドを伴って、私たちの体に直接的に語りかけてきた。「その日が来たら」は、『シアノタイプ』期から現在のハルカトミユキに変化する、その狭間にある"揺らぎ"が生々しく表出していた。きっと、"究極のラヴ・ソングを作る"という命題のもとに生まれたこの曲がなければ、今回のような変化は生まれなかっただろう。すべてが今まで以上に剥き出しで、野生的。この日のハルカトミユキのライヴは、まるで、整理される前のまっさらな欲望で母親を求める赤ん坊の泣き声のようだった。あ、そうか。だから新曲のタイトルは「生まれる」、なのだ。ハルカトミユキはもう1度、生まれたのだ。
このライヴ、とにかく目撃できてよかった。まだまだこのふたりは変わる。今のハルカの変化を受けて、ミユキがどんなアクションを起こすのかも気になる。身体的になったそのパフォーマンスを経て、ハルカの紡ぐ言葉に再びどんな変化が現れるのかも気になる。たぶん、次のフル・アルバムあたりはとんでもないものになるんじゃなかろうか。じっくり作ってください。じっくり待ちます。あー、観れてよかった。
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