Japanese
Lyu:Lyu
Skream! マガジン 2014年12月号掲載
2014.11.07 @TSUTAYA O-EAST
Writer 沖 さやこ
『GLORIA QUALIA』と『ディストーテッド・アガペー』は、Lyu:Lyuが辿り着くべき場所に辿り着いたと心から思える、とても清らかな作品だった。怒りや鋭さ、悲しみを吐露していたこのバンドが、聴き手の声や想いなどを吸収したことで、彼らに新たな感情が生まれる――それは蛹が蝶になるような、羽化とも言うべき麗しい進化であり、自然の摂理でもある。だからこそ『ディストーテッド・アガペー』という音楽と小説、そしてミュージック・ビデオに触れたときに、この"ディストーテッド・アガペーの世界"というライヴがどういうものになるのか、変な言いかたかもしれないが鮮明に想像できたのだ。そしてこの日、その私の頭の中に描かれていたその世界が、現実になっていた。Lyu:Lyu史上、自らの表現を最も素晴らしく、美しい状態で届けたのが、この"ディストーテッド・アガペーの世界"だった。
O-EASTの階段には、3人それぞれのツアーにおける抱負であろうか、書き初めが貼られていた。フロアに入るとステージの後方にはスポットライトの当たった4つの大きな本が、観客側を向いて佇んでいる。開演時刻になり、薄暗い灯りと眠りに落ちていくような穏やかな音楽が静かに消えた。するとステージの背景全面に「ディストーテッド・アガペー」のミュージック・ビデオを彷彿させる画が映し出される。朝焼けや夕暮れ――これはコヤマが普段見ている景色だろうか。ピアノの音色とコヤマの朗読が、その画とコヤマの心を、観客へと1針1針縫いつけていくようだった。このときにもう、我々は彼の心の中にあるディストーテッド・アガペーの世界へと引き込まれていたのだ。
音が消えた瞬間、ステージのセンターに現れたコヤマが、自身の声とギターで「それは或る夜の出来事」を紡いだ。ステージ一面に俯きながら街を歩いているときに見える風景が。歩道橋で空を見上げたかと思えば、その後しばらく車道に目を落とし、再び俯きながら歩き続ける。普段自分が見ている風景を自分以外の人間も見ているのか、という不思議な嬉しみと切なさが心に広がる。
"ディストーテッド・アガペーの世界、ファイナル渋谷へようこそ。Lyu:Lyuです。今日はよろしく!"そう言ったコヤマの声は満面の笑みのようだった。それまでじっくり聴き入っていた観客も大きな拍手と歓声を上げる。有田清幸のドラム・カウントから「invisible」。影を巧みに使った照明が、鋭いリフや音のスピード感と交錯していく。「アノニマス」では叫ぶように旋律を辿り歌うコヤマ。彼を挟んで上手側の有田、下手側の純市の間でギター・ソロを無心で弾く姿は、フロントマンとしての逞しさに溢れていた。それはその両脇でその音色を一切こぼさずに支え、音を放つ有田と純市の存在あってこそだろう。
コヤマが上手の手前にある本を1ページめくると、小説"ディストーテッド・アガペー"に収録されている女性の"田中の話"の朗読とジャズ・テイストで緊迫感のあるインスト曲が流れる。そして握りしめた拳から血が滲むように切実な「文学少年の憂鬱」、暗転し有田にスポットが当たり、彼の刻むドラムにコヤマが息を吹き込むようにギターを重ねてスタートした「初めまして」、感情を突き付けられ心を抉られる感覚に襲われる「神経町A10街」へ続く。コヤマのギターは驚くほどに彼の声と同じ音をしている。これは3ピース・バンドで唯一のギタリスト兼ヴォーカリストでありメイン・ソングライターであるバンドマン全員に言えることだが、少数精鋭ゆえにそれだけその人間性が浮き彫りになるということだ。そしてコヤマの感情や思考がそのまま落とし込まれたLyu:Lyuという音楽を成立させるためにも、このバンドはこの形態が現段階では最重要なのだ。コヤマヒデカズは3ピースで歌うべき、ギターを鳴らすべき人間だと痛感する。
この日の彼は、階段の書き初めに書いていた"会いに行きます"という言葉の通り、自分の心を慰めるためではなく、人に届けるためにこの広大な舞台の真ん中に立っていた。会いに行くという行為は喜びと嬉しみに満ちているが、摩擦が起きることもある。だが傷つくかもしれない可能性も享受し、人との距離を縮める覚悟を決めた彼の"会いに行きます"という言葉は、大きな一歩の象徴とも言える言葉だ。だからこそこの日の彼はとても勇敢だったし、純市と有田の刻むリズムと音も包容感があり、軽やかだった。3人の"会いに行きます"と、Lyu:Lyuの音楽を愛するリスナーの"会いに行きます"――そのふたつの歩み寄りは尊い。「ランララ」のようなユーモラスな曲が生まれたのも、きっとそういう理由だ。遊び心のあるコヤマのヴォーカルも小気味よく色香が滲み、楽しい気持ちが溢れた3人の演奏と、ラストに自然と観客から歌声が湧き上がった情景は感動的だった。
コヤマがページをめくると、"YOU'RE RIGHT"という彼の小説の朗読と映像が流れる。場内が再びダークな空気感に包まれると、音と画をかき消すように彼のギターが鳴り響いた。スリリングなベース・ラインで切り込む「カッターナイフと冷たい夜」。ひりついた3人のアンサンブルは躍動感に溢れ、ぎらついた妖しさで、悦びに満ちていた。続いて「Seeds」になだれ込みフロアから高らかな歓声が沸くとコヤマが笑顔を零す。鮮やかなギターがどんな彼の言葉よりも正直に彼の気持ちを物語っていた。
"俺は自分のためにしか音楽をやっていなかった"と語るコヤマ。だからこそ自分の音楽を評価されても"嘘だろ?"としか思えなかった。だが今こうして、Lyu:Lyuの目の前には、彼らの音楽に純粋な敬意と愛を示す多くの観客とリスナーがいる。彼らに羽化のエネルギーを与えたのは間違いなくこのリスナーたちの想いなのだ。"自分たちの音楽と自分自身の歌を今ほど誇りに思ったことはないです"と感謝の弁を述べると、あたたかい拍手が起こった。
"いつか絶対に終わるときは来ます。俺もみんなも全員が終わっていくということをわかっているから、誰かを大事にしたいという気持ちが生まれてくるんだと思います。今日ちゃんと終わったこの1日が、俺たちと今日ここにいる皆さんにとって、少しでもいい1日になるように今日ここに来ました"――そう語る彼の声には一点の曇りもなかった。ミラーボールで幻想的な星空が広がった「彗星」のあとに流れた、"DISTORTED AGAPE"と題された映像と管弦楽が作り出す讃美歌のような曲。そこに重なる女性による朗読。小説の最終章"farewell"の世界だ。"あなたは、まだ、どこへだっていけます。まだ、なににだってなれます。"という一節にはなんでも成し遂げられてしまうような、強い言霊が宿っていた。"さようなら"という言葉のあとに「ディストーテッド・アガペー」のイントロが流れた瞬間、喜怒哀楽すべてが最高潮に達し、自然と涙が溢れてきた。コヤマヒデカズが言うように、この夜は終わるのだ。だが終わるからこそ彼らは、最後の最後まで愛に満ちた音を鳴らし、素晴らしいエンドロールを描いた。フロアから起こるやわらかい拍手の中で、コヤマがめくっていた本を静かに閉じる。ラストにはレコーディングの様子やリハーサルの様子の写真を繋げたドキュメント映像が流れた。
この日"ディストーテッド・アガペー"という作品は最終回を迎えた。だがこれからもLyu:Lyuの物語は続いてゆく。こんな壮大な世界を描いた3人だ。どこへだっていけるし、なににだってなれる。この先、彼らは彼ら自身で、その言葉を証明していくだろう。
-OP MOVIE
01. それは或る夜の出来事
02. invisible
03. アノニマス
-MOVIE 1
04. 文学少年の憂鬱
05. 初めまして
06. 神経町A10街
07. Y
08. メシア
09. ランララ
-MOVIE 2
10. カッターナイフと冷たい夜
11. Seeds
12. ドッペルゲンガ―
13. 暁
14. 彗星
-MOVIE 3
15. ディストーテッド・アガペー
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