Japanese
CIVILIAN
Skream! マガジン 2023年08月号掲載
2023.07.18 @東京キネマ倶楽部
Writer : 石角 友香 Photographer:Makiko Takada
ニュー・アルバム『Never Open Door For Strangers』リリース時のインタビューでコヤマヒデカズ(Vo/Gt)は"もう1回、音楽家の自分自身を代弁するような作品を作らないと自分が死んでしまうような感じだった"と話していたが、このツアーではその作品を他者に聴かせることまで含まれていたのだと痛感した。実際にMCでも話していたのだが。全国4ヶ所にわたるツアーのファイナルである東京キネマ倶楽部。エントランスにもステージも白い扉が設えてある。"知らない人にドアを開けちゃダメ"というアルバム・タイトルから、"ドアを開けっぱなしにしたのは誰?"というツアー・タイトルへの意識の向かい方もまさに符合する。
序盤は様々なものやことへの断罪を感じさせるダークでソリッドな曲が続く。オープナーはコヤマのクランチなコード・カッティング、有田清幸(Dr)の振り下ろすビート、純市の蠢くベース、すべてが重い「人類教ノスゝメ」。SNS上の匿名の攻撃的な言葉を思わせるおびただしい活字の中から歌詞が浮かび上がる映像演出に背筋が凍る。続く「犬になりたい」も、すべてを押し潰さんばかりの音圧が殺人的だ。ただ、映像には犬のコラージュが登場してちょっとシュールな笑いも含ませる。コヤマのモノローグのような早口ヴォーカルに改めて声の表現者としてのレンジの広さを感じた「イエスタデイワンスモア」まで、一気に新曲を披露する。凄まじい音量でありつつ、歌もクリアに聴こえるPAがバンドの真意を伝える。見事だ。再び音の壁で攻めるイントロを持つ「懲役85年」で切実すぎる言葉に殴られる。
切実さの方向が切なさに転じた「さよなら以外」は音源で聴く以上に3人の繊細な演奏スキルを目の当たりにし、有田の乾いた空洞のようなキック&スネアが空虚さを表現する「せめて綺麗に」はその空虚さが残酷なまでにもう何もかも許せなくなり、軽蔑の対象でしかなくなった対象への感情を表すかのよう。この曲でのコヤマはポエトリー・リーディングというよりラッパーに近い見事なフロウを乗りこなしていたことにも驚いた。ひたすら音と言葉に殴られる。ピアノのSEで始まる「残火」では一転、コヤマのエモーショナルなファルセットなど、縦横無尽な歌唱表現に引っ張られる。そしてあとでわかるのだが、徹底した断罪と感じられる重くソリッドな楽曲の流れは新作の中でもグルーヴ・ミュージック寄りの新鮮なアレンジが試行された「わらけてくるわ」まで、張り詰めたテンションのまま進んで行ったのだ。ちなみに「わらけてくるわ」は辛辣な歌詞もだが、その辛辣さをコヤマのワウなのか、キーボードで言うとクラビネットっぽいイーヴルな音のエフェクトで、ともすると洒脱にも聴こえるフレージングだったこと、そしてアウトロでメイン・リフに戻る冷静さのようなものに鳥肌が立った。
コヤマが長めのMCを始めたことで、ここまでの流れがひと塊だったことを知る。いわく、今回のツアーは始まってしまったら、あっという間で楽しいツアーだったということ、独立後、クラウドファンディングで回ったツアーで得た感謝の気持ちは作品を作ることで返したかったということ。だが、誰よりも曲を作ることで前進できているのは彼自身だったのだと感じた。
後半は前半と打って変わって、光を感じる「僕だけの真相」で始まった。サビでプリミティヴにたくましさを増していく演奏、言葉にしないと忘れてしまうという普遍的な内容がスッと心に入ってくる。大きな声で"ありがとう!"と謝辞を述べたコヤマの声にも力がみなぎる。そこからのアッパーな8ビート・ナンバー「光」の生命力に溢れた演奏はまさに3ピース・バンドだ。さらにダイブが起こってもおかしくないようなファストな「夢の奴隷」、瑞々しい感性がリフやメロディに定着された「世界の果て」の"どうせ誰もが皆一人なら せめて一緒に"という歌詞が素直に届く。アルバムが時を跨いでいても一編の個人史や映画を観ているような物語性をセットリストで見事に描いていることにも感銘を受ける。さらに新作の中でも信頼できる誰かを思い浮かべずにいられない「覚えていようと思ったよ」が想像以上に刺さる。自分にも他者にもまっすぐな視線を送るがゆえにフラストレーションを爆発させてしまうコヤマの中には、だからこそ忘れられない人の誠意もしっかり刻み込まれているのだ。思わずこちらの感情も解放されて、不意に涙が溢れてしまう。そして、イントロで悲鳴に近い声が上がったのはLyu:Lyu時代、それも最初期のレパートリー「空- カラ-」だったことはこの日のライヴの軸になっていたように思えた。
今回のツアーでは思うままMCをしているというコヤマが、バンドが軌道に乗るにつれ、音楽の才能だけで評価されないことへの違和感を募らせていたことを語り、違和感について歌った曲だと、「フランケンシュタイナー」を歌い始めた。つらいことも受け入れてどんどん傷だらけの身体が歪になっていくのは自分を愛したいからだという歌詞は恐らくここにいるファンだけじゃなく、多くの人が抱えるリアルだろう。続く"「君はありのままでいればいい」とか/それで愛されるなら苦労しないんだよ"と歌う「完璧な人間」の2曲が沁みすぎる。でも、そんな気持ちを無言のまま共有するこの空間はファンにとってきっとセーフ・スペースだったに違いない。
とてつもない集中力でひとつの意志を演奏で繋いできた3人。再び動き出したバンドの今を届けられた確信をコヤマは口にしていた。彼自身にとって、再生のツアーだったのだろう。再びフル・ボリュームで鳴らされる「déclassé」で、自分自身の中にある邪魔な欲を徹底して暴き出す。スタイルとしての叫びではなく、そうするほかないといった凄まじいヴォーカルだった。それをイメージでも実現するために必要な大音量であり、ノイズの洪水だったのだと思う。そこでメンバーはステージをあとにし、新作のラスト・ナンバーである「遠征録」のオケが流れ始めたのだが、歌はもうないエンディングのために3人が再び登場し、無言で旅立ちをイメージさせるインスト部分を渾身のプレイで披露。メンバー名に続き"We are CIVILIAN"と背景に映し出される演出ですべてを記したのだ。なんという美学だろう。本編のみアンコールなしの2時間。とんでもない場に居合わせてしまったという記憶はしばらく薄れないだろう。
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