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INTERVIEW

Japanese

Drop's

2018年12月号掲載

Drop's

Member:中野 ミホ(Vo/Gt)

Interviewer:山口 智男

新曲を披露しながらライヴを続けてきたんだから、バンドは決して止まったわけではない。しかし、2年半ぶりのリリースであることに加え、前作『DONUT』をリリースしたときと状況がいろいろ変わっていることを踏まえれば、再始動と言ってもいい。作曲家/音楽プロデューサーの多保孝一(Superflyほか)と共作した「Cinderella」では、音楽通を唸らせてきたブルージーなサウンドとは異なるさらなる新境地もアピール。そこから再始動にかけるバンドの熱い想いを感じ取りたい。それを語る中野ミホの言葉は控えめだが、それは今回リリースする『organ』という作品に自信があるからだ。

-いわゆる流通盤としては、およそ2年半ぶりとなるミニ・アルバム『organ』をリリースする現在の心境から、まず教えてください。

去年の1月に北海道から上京してきて、それからドラムのミナ子(石川ミナ子)さんが入って、ちゃんとしたレコーディングができました。ほんとに今の4人のDrop'sをやっと形にできたという気持ちです。

-"やっと"という気持ちが大きいんですか?

そうですね。ライヴは去年から今年にかけて結構やってきたんですけど、音源を出したいと思っていて。曲も作っていましたし、ライヴ会場でも"ミナ子さんがいる音源がこれです!"って言えないのがずっと歯痒かったから、今回リリースできてすごく嬉しいです。

-東京に来てから2年近く経ちますが、いかがですか? 東京の暮らしにはすっかり慣れましたか?

暮らしには、ようやく慣れたかな。北海道では実家で暮らしていて、自分が必死にならなくても暮らしていけるというか(笑)。でも、こっちに来て、音楽をやるっていうのはほんとに大変なんだってことを感じました。北海道はすごくのんびりしているし、広いし、余裕があるんですけど、東京は人も多いし、スピードが全然違って。最初はそれをすごく思いました。

-じゃあ、ドラマーがいない状況で上京してきて、バンドを建て直すと同時に、ご自分の生活も軌道に乗せていかなきゃいけなかった。そんな日々だったわけですね。

そのタイミングでミナ子さんが入ってくれて、ほんとに良かったと思います(笑)。他のドラムの方とも何回かスタジオに入ったんですけど、もともとミナ子さんのことは知っていて、いざやってみたら、プレイもかっこいいし、好きなものも近いし、いきなりしっくりきて。ミナ子さんはふたつ年が上で、ずっと東京に暮らしているので、その感じも勉強になるっていうか、影響されるっていうか。ミナ子さんはほんとにドラムが好きだし、音楽が好きだし、ものすごく努力している人なので、私たちもちゃんとしなきゃなってすごく思いました(笑)。

-頼りになるお姉さんが入った?

そんな感じです。すごくいろいろな音楽を知っているんですよ。だから、"こんなのどう?"、"あんなのどう?"って曲を作るとき提案もしてくれたり、"こういう曲をやりたいな"って言ってくれたりして、頼りになります。

-中野さん自身の生活の面で一番大変だったのは、どんなことでしたか?

実家にいるときは、帰ったらご飯ができてましたけど、ひとり暮らしだと食べることからすべて自分でやらないといけないじゃないですか。日用品も全部自分で買わなきゃいけない。当たり前ですけど、ゴミも出さなきゃいけないし、そういう当たり前のことに時間って結構かかるんだって思いました。北海道にいたころは、音楽やものを考えるのに時間を自由に使えたんですけど、こっちに来てからは生活するためにしなきゃいけないことに割く時間が増えたぶん、音楽を作ることにかかる時間を含め、自分が自由に使える時間っていうのをちゃんと確保しようとしないと、やりたいことができないっていうのが一番大変かなって。

-じゃあ、東京に来てから時間がより大事になった、と。そんな東京での生活は中野さんやDrop'sが作る音楽に何か影響を与えましたか?

札幌には、東京ほどライヴハウスも多くないし、そこまでシーンみたいなものがあるわけではないし。どちらかと言うと、好きなことをやっているという人が多かったから、"今はこれがきてるよね"みたいなことは、そんな感じることはなかったんです。でも、こっちに来てからは、街を歩いているだけでもいろいろな音楽が流れていて、"あぁ、今はこういうのが流行っているんだ"っていうことが嫌でもわかるし、メンバーみんなの話題にも上がるし。それを直接曲に反映するかどうかは別ですけど、そういう情報量は今までと全然違いますね。私は基本、好きなものは変わらないんですけど、荒谷(荒谷朋美/Gt)やミナ子さんは新しい音楽を積極的に聴いて、かっこいいところはどんどん取り入れていこうっていうタイプかもしれないです。私もそれはいいことだと思うので、教えてもらったら聴いてみますしね。意識はしていないけど、知らず知らずのうちに影響はあるかもしれないです。

-そのなかで、逆に自分たちの個性が以前よりもはっきり見えてきたというところもあるんじゃないでしょうか?

そうですね。今回「Cinderella」という曲を多保孝一さんと作ったときに、最初に多保さんからいろいろな今のトレンドや音像を教えていただいたんですけど、そのとき、結構ショックを受けて。ギターがジャーンと鳴っている音楽っていうのは、あんまりないというか、あるんだけど、今はそこに電子音が鳴っていて、昔のいかにも生音っていう音楽は主流じゃないということを言われたんです。それで、今まで全然使ったことがなかったんですけど、多保さんに教えてもらってSpotifyでいろいろ聴いてみたら、"たしかに"って。わかってはいたような気はしてても、そこに向き合っていなかったというか、自分はそれでいいから、いいかって感じだったんですけど、今回改めてそこに気づいてハッとしたんです。私たちは、同世代や、自分たちよりも若い人たちにも私たちの音楽を聴いてほしいという想いがずっとあったんですけど、そこを目指すにあたって、今の若者はどういう音楽を聴いているのか、もっと知らないといけないなと感じました。とは言いながら、最初は電子音にちょっと抵抗があって、できるだけ生の音でやりたいと思ったので、多保さんから最初に提案されたものに、自分たちの生音をいかに融合させるかということは結構考えて。そのとき、基本的にDrop'sのサウンドは"土っぽい"というのは変わらないんだって感じました。