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INTERVIEW

Japanese

Drop's

2019年04月号掲載

Drop's

Member:中野 ミホ(Vo/Gt)

Interviewer:山口 智男

2年半ぶりのリリースとなった『organ』からわずか3ヶ月、早くも最新ミニ・アルバム『trumpet』が完成。前作収録の「Cinderella」同様、多保孝一(ex-Superfly)と共作した1曲目の「毎日がラブソング」もまた新境地をアピールするものとなった。その「毎日がラブソング」を含む全7曲。そこには"ここからが新しい始まり"、"もう振り返らない"というバンドの決意が込められているという。結成10年目のアニバーサリー・イヤーを迎え、Drop'sの活動はますます勢いを増していきそうだ。

-『trumpet』は10年目のアニバーサリー・イヤーの幕開けと新しい季節の始まりに相応しい作品になりましたね。

ありがとうございます。

-前作の『organ』(2018年リリースのミニ・アルバム)は自分たちと同世代、および自分たちよりも若いリスナーに聴いてほしいという思いに加え、新しいラインナップでスタートするという思いを込め、大胆に新しいサウンドに挑戦した作品でした。それに続く『trumpet』はどんな思いのもと、制作に臨んだのでしょうか?

『organ』を作っているときから姉妹作というか、対になるような作品にしようと考えていたんですけど、『organ』が冬のイメージだったので『trumpet』は春のイメージにしようと。"trumpet"というタイトルも1曲目の「毎日がラブソング」という曲もすでにあったので、全体的に華やかで明るい感じのものにしたいと考えながら作り始めて、実際そういう作品になったと思います。

-前作に"organ"と付けるころにはもう"trumpet"というタイトルがあったんですね。

『organ』を作っているときは、曲順を含め、『trumpet』の全体像はまだ見えていなかったんですけど、春と言ったらトランペットというイメージがパッと湧いて。その時点では、「毎日がラブソング」にホーン・セクションを入れるという話は、まだ具体的に出ていなかったんですけど、ほんとに入ることになったんです。なので"trumpet"っていいタイトルだなって思います(笑)。

-前作の「ふたりの冬」という曲に"壁にひたした トランペット"という歌詞があって、そこですでに予告していたのかなって。

それは偶然なんですよ。ジャズを含め、トランペットが入っている音楽が好きなのでわりとパッと出てくる言葉というか、「ふたりの冬」を書いたときも普通に出てきて。

-中野さんのお家の壁にトランペットが浸してあるんですか?

そういうわけじゃないんですよ(笑)。「ふたりの冬」の歌詞は、大好きなジャズ喫茶でトランペットの音に自分が浸っているイメージなんです。

-前作の「Cinderella」に引き続き、今回も多保孝一(ex-Superfly)さんとのコラボレーションですね。

はい。「毎日がラブソング」は多保さんと一緒に作りました。

-作り上げるにあたってはどんな作業をしていったんでしょうか?

「Cinderella」は多保さんが"こういう曲にしてみよう"って最初からアイディアを出してくださったんですけど、"次の曲ではDrop'sとしてどうしたいか?"って話し合ったときに、ソウルっぽい雰囲気や自分たちがもともと好きな土臭さはありつつ、音は結構新しいことをやっているバンド――そのときALABAMA SHAKESをすごくかっこいいと思っていたので、"そういう曲をやりたい"と私たちから提案をしたうえで、多保さんがつけてくれたコード進行をもとに多保さんとふたりでメロディを作りながら、私が一度書き上げた歌詞をより良いものにしていきました。

-ALABAMA SHAKESがお好きなんですか?

最初のアルバム(『Boys & Girls』)、リリースは結構前ですけど、衝撃的でかっこいいなと思いながらずっと聴いてました。昔っぽい雰囲気があって身体に馴染むけど、全然古臭くなくて。2枚目の『Sound & Color』はもっと現代的になっていて、最初は"ん?"と思ったんですけど、聴いているうちにかっこいいと思えたので、自分たちでもこういうことをやってみたいという漠然とした思いがあったんですよ。

-「毎日がラブソング」からは"怖いものはない"という気持ちが感じられるのですが、恋したときの気持ちに、新しいラインナップになった現在のDrop'sの無敵感を重ね合わせているようにも思えます。歌詞はどんな思いで書いていったのでしょうか?

最初に曲があったんですけど、こういうゆったりしたテンポで明るく開けたような曲って、今までのDrop'sにはなかったテイストで。だから、大きなテーマというか、今まで自分の内面にグッと入って書いていた歌詞をもうちょっと広い視点で書いて、多くの人にすっと入るものにしたいと思っていました。それでラヴ・ソングをテーマに書いてみたんですけど、手放しで全部がハッピーというわけではないというか、もちろんそこに辿りつきたいんですけど、ちょっと影が欲しいところが自分にはいつもあるんです。毎日生活をしていくのって誰しも大変だと思うし、"はぁ~"ってため息が出ちゃうようなところもあるけど、大事な人がいてくれたらそれが支えになったり、それで明日にようやく進めたりする感じがある。だから無敵感というか幸せという気持ちはすごくあるんですけど、それだけじゃない部分もあったうえでの「毎日がラブソング」っていう。

-そうなんだ。手放しでハッピーではないんだ。

苦しいことがあるからこそ大事なものがより大事に思えるんじゃないかなって。

-そこが大事なわけですね。ところで、ホーンを加えた「毎日がラブソング」のサザン・ソウルっぽいサウンドは、煌びやかなシンセサイザーの音色も使った「Cinderella」ほどこれまでのファンをびっくりさせることはないと思うんですけど、さっきおっしゃっていた開けた感じも含め、結構攻めているんじゃないかって感じたんです。

おぉ~(笑)。

-まず"毎日がラブソング"ってタイトルが。こういう感じのタイトルって今までなかったじゃないですか。

タイトルは最後の最後まで悩んで、多保さんとも相談したんですけど、多保さんは"曲自体のハッピー感に負けないぐらいの、例えば、映画にありそうなタイトルがいいと思う"と言ってくださって。"毎日がラブソング"って思いついたのは私なんですけど、思いついておきながら、"それはちょっと言いすぎじゃないか"って感じたんです(笑)。でも、メンバーもだんだん"馴染んできた。それぐらい言ってもいいんじゃない? インパクトもあるし"と言ってくれて。"毎日がラブソング"ってたしかにDrop'sっぽくないかもしれないけど、毎日がハッピーというわけではなくて、明日に進むための1日1日というか、大事な人と過ごす1日1日が活力になるという意味の毎日と考えると、そんなにかけ離れているわけではないのかなと思います。ただ"ラヴ・ソングって言っちゃうんだ"っていうのは自分でもちょっとありますけど(笑)。

-「毎日がラブソング」の歌詞は字余りというか、言葉がすごく詰まっているところがあるじゃないですか。それはあえてなんですか?

普段私がひとりで作っていたらそこまで詰めこまないと思うんですけど、多保さんからアドバイスを貰いながら作るなかで、これぐらい詰めた方がかっこいいんじゃないかって感じたんです。英語も出てくるし、音のノリを意識しながらチャレンジしてみました。

-耳に引っ掛かるというか、すごく印象に残りますよね。アレンジで意識したことはありますか?

ドラムとベースは通しで演奏した中から一番いい1ヶ所をループしているんですけど、そういうやり方は初めてで。そういうヒップホップみたいな作り方は、自分たちだけでは絶対やろうと思わなかったですね。最初は"そんな作り方があるんだ!?"って思いましたけど、最近の音楽を聴いているとそれが主流なんだとわかったし、やってみると全然違和感もなくて、むしろ心地よくて、また勉強になりました。

-サザン・ソウルや土臭い雰囲気を醸し出しながら、サウンドは新しいものになっていると。

そうですね。淡々と繰り返すリズムに歌、ホーンに加え、コーラスやハンドクラップもたくさん入れて抑揚をつけることで、曲そのものがすごく華やかになるという作り方は、これまでとは違うメリハリがあってすごく面白いものになったと思います。