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LIVE REPORT

Japanese

Drop's

Skream! マガジン 2014年01月号掲載

2013.12.14 @渋谷CHELSEA HOTEL

Writer 沖 さやこ

2013年9月に1stフル・アルバム『DAWN SIGNALS』をリリースし、11月12日に地元北海道の札幌COLONYにて単独公演"turned RED"を成功させたDrop's。彼女たちがその会場で発表したのは、東京と大阪での初ワンマン・ライヴを開催することだった。"turned BLUE"と名付けられた東京公演、彼女たちのテーマ・カラーでもある赤が基調のCHELSEA HOTELが、青い照明で染まった。まずステージには荒谷朋美(Gt)、小田満美子(Ba)、石橋わか乃(Key)、奥山レイカ(Dr)が登場。4人それぞれのソロ・パートを盛り込んだジャム・セッション風のイントロダクションを奏でると、マラカスを持った中野ミホ(Vo/Gt)がセンターへと飛び込み、ギターで音を重ねる。中野の音が加わった途端、パズルのラストのピースがはまったような完璧な音像ができあがった。

1曲目は『DAWN SIGNALS』の1曲目でもある「RED IDENTITY BAND」。渋みのあるロックンロールでたちまち観衆を魅了する。躍動感のあるキーボードが印象的な「JET SPARK」では、場内後方でも鍵盤を叩く石橋の指の動きが容易に頭のなかに浮かぶようにエモーショナルだ。中野がマラカスを構え「STRANGE BIRD」。フロアのオーディエンスが喜びを全身で表現し、音に身を任せている姿も非常に美しい。ハスキー・ヴォイスを巧みに操る中野の色気のあるヴォーカルは、何かが憑依しているのか、それとも本当の彼女の姿なのか――。普段の大人しい彼女とは別人のようである。20歳の女の子とは思えない堂々としたアティテュード。"ありがと"とクールにキメると間髪入れずに「DIRTY Smoke」。中野は歌うような息遣いでハープを吹く。ディストーションの効いた荒谷のギターも渋く硬派だ。音もヴォーカルも、とにかく隙がない。隅から隅まで彼女たち5人の頭のなかに共通して持たれているであろう、真っ赤に燃える泥臭さから生まれるスマートでザラついた音で溢れている。5人の眼光も同様に鋭い。その心意気でもって「木曜日の雨のブルース」「カーテン」とスロー・テンポの曲を更にディープにしてゆく。「トラッシュ・アウト」「黒いシャツ」ではアグレッシヴに。5人のグルーヴ、空気は完成されていると言っても良いほど強固だ。中野がタンバリンを手に持つ「ダンス・ダンス・ブラックホール」は、瞬発力のあるキーボードが効果的。楽器隊がそれぞれの楽器で会話をするように音を重ねていく。Drop'sの魅力のひとつに、キーボードとギターの交錯がある。互いを讃えつつも闘志のあるサウンドは非常にスリリングであり頼もしい。自信に満ちた音色はひたすらに瑞々しく、彼女たちが高校2年生の頃に作った初のオリジナル曲「泥んこベイビー」からは5人で音を鳴らしている事実に強い誇りを持っていることが伺えた。

滲むギターが切なくも力強い「さみしがり屋の路面電車」「夕やけ」の後は、荒井由実の名曲「卒業写真」をカヴァー。ひとつひとつ丁寧に演奏する姿と、中野の素直なヴォーカルが響く。そんな彼女たちの表情を抽出したのは、曲の持っている力なのかもしれない。本編ラストの「太陽」ではナチュラルな笑顔を浮かべる5人。改めて現在のDrop'sを示す楽曲であることを噛み締める。アンコールではまず石橋と中野の2人で「やさしさ」を披露。"やさしい歌を うたいたい"と痛烈に歌う彼女から、もっと成長したいという意志が感じられた。最後に演奏された「ウォーキン」の一節である"どこまでも歩くのさ"――その言葉の通り、彼女たちはまだまだ歩みを止めず邁進してゆくだろう。

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