Japanese
シナリオアート
Skream! マガジン 2020年01月号掲載
2019.12.15 @代官山UNIT
Writer 石角 友香 Photo by 浜野カズシ
"今日終わったあとに死んでてもいいと思うぐらい、いろんな音を共有したくてやってきました(大意)"。序盤のハヤシコウスケ(Gt/Vo)のMC。すでにしょっぱなからペース配分もへったくれもない怒濤の展開も相まって、明日のことを気にするより、今やれるすべてが必然的に道を拓くという3人のタフで頼もしい決意が伝わった。そして、その"超えなければいけない1日"を3人は走りきったのだ。
結成10周年イヤーを締めくくるワンマンは、ソールド・アウトで、フロアには続々とファンが詰め掛け、静かに固唾を飲むようにライヴのスタートを待ち構える。実に幅広い年齢層だ。ブルーのライトに照らされ、SF的なSEが流れるなか、定位置に着いた3人はお馴染みとなっているしょっぱなのラウドなサウンドをぶちかまし(まるで咆哮のようだ)、スリリングな「ナナヒツジ」からライヴをスタート。エクストリームな曲だが、一音一音が明確に聴こえ、複雑な構成が際立つ。ノンストップで「サヨナラムーンタウン」、ハヤシの"クラップ・ユア・ハンズ!"という煽りに少々面食らいながら始まった「レムファクション」。フロアの温度も上がるし、ステージ上は3人の気合とオーラがゆらゆらと立ち上るような迫力だ。高いスキルやマス・ロック+メタル+ジャズみたいなハードさは、これまでのシナリオアートのライヴでも感知できたが、今日は演奏の細部に気持ちが行き渡りながら、しかも、ペース配分を考えてないような凄みが溢れている。人間の"本気"を久々に生で感じた。「シニカルデトックス」の切れ味鋭いエンディングに歓声と拍手が起こったのも当然だ。
冒頭のMCをこのタイミングで行い、少し鬼気迫りすぎた(?)ムードを愉快、痛快なものに転化するように、フロアもアクションを促される「ジンギスカンフー」へ。楽しい曲だが、改めてサビの良さに気づかされた。さらには、ヤマPことヤマシタタカヒサ(Ba/Cho)のテーマ・ソング(!?)「ワイエムピー」が、ニュー・ウェーヴ/ニュー・レイヴっぽい、重くタイトなワンコードのベースに導かれて始まり、YMPポーズをみんなでとりながらヤマシタを盛り立てる。またまたノンストップで突入した「ハローグッバイ」はラスト、ハットリクミコ(Dr/Vo)のロング・トーンの力強さに呆気にとられた。
8曲演奏されたところで、どの曲も核心部分を大事に聴かせ、凡庸に長いライヴ・アレンジにせず、テンポ良くライヴを進めていくスタイルに圧倒され、同時に圧倒されすぎて笑ったり、口が開けっぱなしになっていたり、完全に感情任せになっている自分に気づく。ファンの表情までは見えなかったが、暴れることが前提のスタイルではないシナリオアートのライヴで、ここまで自分が無防備で彼らのライヴに対面していることに驚くぐらいだ。
一気に駆け抜け、"せっかくセットしてもらったのに、もうこれや"と髪を振り乱すハットリに、ハヤシが"ライヴってそういうもんや"とツッコミつつも、"シナリオアート史上最もハードなライヴになってますけど"とハットリが言えば、ハヤシは"この10年、ジェットコースターに乗ってるようなもの"と返す、その様子が逞しいし、頼もしい。
この10年を凝縮した3人の様子は、1本の綱に乗り、誰もが落ちないように歩みを進めている綱渡りのようでもあり、3人の息が合わなければ誰かが落下する空中ブランコのようにも見える。だが、それは音楽のプロとして磨き上げてきたものがあるからこそ、スリリングなライヴに挑戦できる、今のシナリオアートを示唆するイメージでもあったのだ。
さて、個人的な白眉だった中盤。11月9日から配信をスタートした新曲「ドライフラワー」が、ハヤシのエレキ弾き語りで披露され、言葉のひとつひとつが聴こえてきたとき、思いを自分の中で抱えているうちに色あせていく様、その仕方なさをドライフラワーに例えるある意味日常的で等身大の作品性に、じんわりとしたリアリティが染み込んでくる。ギター・サウンドは激しく、彼らならではのグランジ色を帯びていくあたりも、むしろバンドとしてニュートラルな表現に感じられた。なるようにしかならない現実と、今日も目が覚めて生きていることへの感謝。一足飛びには変えられないけれど、この現実を変えていきたい――自分自身にとって大事な新曲になった。続く"ホンコン・コーリング"と題された、基本の構成以外はセッションで進んでいくパートも、タイトルが示唆するように生きるための基本的な自由を求める、今の香港の若者たちへの共感がおそらくどこかにあるのだろう。THE CRASH の「London Calling」も当然想起させる。ハヤシコウスケという人の人間的な成長や、そもそも持っている問題意識が炙り出された震えるような瞬間だった。今感じたことをもっと表現してほしいと切に願う。
ある種パンクなシナリオアートに驚きつつ、再びSF的なSEとインスト・パートから、後半は彼らの真骨頂とも言える孤独や生きづらさを切り取ったナンバーが続く。リズム・チェンジの見事さ、後半のヤマシタのシンセがどこか"未知との遭遇"めいていた「アダハダエイリアン」、煌めくサビから怒濤のハットリのドラム・ソロと、刻々とライヴの醍醐味が変化していく「ハロウシンパシー」の流れは、涙を流しながらも、拳を上げたくなった。シナリオアートの表現にはそういう部分があるけれど、この日の彼らは実際にファンを全力で開放していたのだ。その象徴的な場面が、彼らがずっと大切に演奏してきた「ホワイトレインコートマン」で、包容力に変化したように感じられたのは、ディストピアのような世界は一見ファンタジーのようで、実は限りなく現実に近いから。"黒い雨から君を守りたい"気持ちは音楽となって、今、以前より力強く届いた。2020年のアンセムにしたいぐらいだ。
本編ラスト前にはハヤシが、"明日からの11年目以降もよろしく"、そして、"どんどん変わっていくシナリオアートを応援してください"と語った。平成が終わり令和元年となった今年、だからと言って勝手に時代が変わるわけじゃないことを前向きに捉えさせてくれる、シビアな内容の「シーユーネバーランド」をハットリが渾身の歌唱で届ける。ラストのサビ前、"どこへだってあなたは行ってもいいんだ"の部分をオフ・マイクで歌った彼女の、そうせざるを得なかった気持ちや歌詞に、フリーランスになり、自分たちの手足と頭を使ってサヴァイヴしてきた3人ならではの説得力が迫ってきた。自分のままで変わっていくということを歌った曲が今、より本質を剥き出しにしている。ステージ上もフロアも感情を曝け出して本編が終了した。
全力を出し切った3人は、アンコールでは和やかなムードを醸し出しながら新しいアーティスト写真、2020年のツアー、そして、3年ぶりとなるアルバムのリリースを発表。止まるどころか10周年の先にさらなる挑戦が待っていることへの歓喜に溢れて、少し異様なほどの熱気を抱えたままファンはフロアをあとにした。2019年の終わりに貰った途轍もない勇気と自分への課題。これまでのシナリオアートの音楽も改めて評価されてほしい。今、必要な音楽だからだ。
- 1
LIVE INFO
- 2024.03.29
-
ORCALAND
いきものがかり
レイラ
BIGMAMA
Mr.ふぉるて
the McFaddin
yutori
Mega Shinnosuke
FABLED NUMBER
Creepy Nuts
佐々木亮介(a flood of circle)
Panic Monster !n Wonderland
Tsukasa Inoue
The fin.
CVLTE
マルシィ
- 2024.03.30
-
キュウソネコカミ
MAGIC OF LiFE
シノダ(ヒトリエ)
神はサイコロを振らない
04 Limited Sazabys / My Hair is Bad / go!go!vanillas ほか
フラワーカンパニーズ
ヤングスキニー
ザ・クロマニヨンズ
Laughing Hick
KANA-BOON ※開催中止
東京初期衝動
BUMP OF CHICKEN
Lym
夜の本気ダンス
夜の本気ダンス
Mega Shinnosuke
にしな
This is LAST
白昼堂々踊レ人類
the telephones
yama
SEKAI NO OWARI
GLIM SPANKY
SHE'S
kobore
Base Ball Bear
Subway Daydream
TAIKING
People In The Box
マカロニえんぴつ
AJICO
ハク。
MAN WITH A MISSION / サンボマスター / ACIDMAN ほか
indigo la End
Saucy Dog
- 2024.03.31
-
バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI
東京初期衝動
ヤングスキニー
シノダ(ヒトリエ)
ORCALAND
フラワーカンパニーズ
神はサイコロを振らない
sumika / THE ORAL CIGARETTES / SiM ほか
MAGIC OF LiFE
いきものがかり
ザ・クロマニヨンズ
ズーカラデル
Mr.ふぉるて
BUMP OF CHICKEN
超能力戦士ドリアン
リーガルリリー
yutori
the telephones
odol
Lym
挫・人間
yama
moon drop
SEKAI NO OWARI
This is LAST
白昼堂々踊レ人類
People In The Box
マカロニえんぴつ
原因は自分にある。
さかいゆう
怒髪天 / GLAY / さだまさし
Saucy Dog
- 2024.04.02
-
神はサイコロを振らない
SCANDAL
claquepot
- 2024.04.03
-
ハク。
claquepot
ヤングスキニー
indigo la End
- 2024.04.05
-
WANIMA
SCANDAL
ハンブレッダーズ
Age Factory
バンドじゃないもん!MAXX NAKAYOSHI
SAKANAMON
神はサイコロを振らない
yama
片平里菜
Organic Call
Mr.ふぉるて
レイラ
ZAZEN BOYS
秋山黄色
BIGMAMA
打首獄門同好会
claquepot
超能力戦士ドリアン
Hakubi
LACCO TOWER / oldflame / The Gentle Flower. ほか
The fin.
- 2024.04.06
-
WANIMA
マカロニえんぴつ
BUMP OF CHICKEN
Creepy Nuts
ズーカラデル
愛はズボーン
四星球
ねぐせ。
fox capture plan
ZAZEN BOYS
People In The Box
にしな
綾野ましろ
Novelbright
ザ・クロマニヨンズ
KANA-BOON ※開催中止
MAGIC OF LiFE
Keishi Tanaka
sumika
SILENT SIREN
フラワーカンパニーズ
AJICO
CRYAMY
打首獄門同好会
SEKAI NO OWARI
いきものがかり
RADWIMPS
ヨルシカ
the quiet room
tacica
小林私
Mega Shinnosuke
LACCO TOWER / BLUE ENCOUNT / 9mm Parabellum Bullet / My Hair is Bad ほか
なきごと
眉村ちあき ※振替公演
- 2024.04.07
-
SCANDAL
マカロニえんぴつ
BUMP OF CHICKEN
ねぐせ。
Mr.ふぉるて
愛はズボーン
ズーカラデル
東京初期衝動
People In The Box
Panic Monster !n Wonderland
神はサイコロを振らない
SAKANAMON
ザ・クロマニヨンズ
ヒトリエ
sumika
フラワーカンパニーズ
AJICO
BIGMAMA
原因は自分にある。
CRYAMY
SEKAI NO OWARI
ヤングスキニー
RADWIMPS
YONA YONA WEEKENDERS
ヨルシカ
the quiet room
UNCHAIN
LACCO TOWER / THE BACK HORN / BRADIO / 忘れらんねえよ ほか
the telephones
クジラ夜の街
ReN
れん
- 2024.04.08
-
WANIMA
- 2024.04.12
-
ゆいにしお
ドミコ
Novelbright
SCANDAL
Base Ball Bear
a flood of circle
BIGMAMA
SUPER BEAVER × 10-FEET
神聖かまってちゃん
ヒトリエ
People In The Box
Creepy Nuts
セックスマシーン!!
ART-SCHOOL
ZAZEN BOYS
秋山黄色
w.o.d.
Mr.ふぉるて
- 2024.04.13
-
挫・人間
崎山蒼志
AJICO
SAKANAMON
片平里菜
indigo la End
東京初期衝動
SCANDAL
神はサイコロを振らない
ヤングスキニー
moon drop
SEKAI NO OWARI
Base Ball Bear
SILENT SIREN
フラワーカンパニーズ
打首獄門同好会
IMPACT! XX
People In The Box
怒髪天
マカロニえんぴつ
Hakubi
cinema staff
にしな
KANA-BOON ※開催中止
Lym
RADWIMPS
ザ・クロマニヨンズ
いきものがかり
"SYNCHRONICITY'24"
- 2024.04.14
-
AJICO
moon drop
片平里菜
sumika
神はサイコロを振らない
Creepy Nuts
Novelbright
SAKANAMON
SEKAI NO OWARI
tacica
ポップしなないで
ZAZEN BOYS
フラワーカンパニーズ
ねぐせ。
打首獄門同好会
愛はズボーン
a flood of circle
SUPER BEAVER × 10-FEET
CRYAMY
FINLANDS
挫・人間
崎山蒼志
東京初期衝動
Age Factory
ヤングスキニー
ズーカラデル
KANA-BOON ※開催中止
超能力戦士ドリアン
怒髪天
cinema staff
RADWIMPS
岡崎体育
フジファブリック
Mr.ふぉるて
ザ・クロマニヨンズ
polly
"SYNCHRONICITY'24"
RELEASE INFO
- 2024.03.29
- 2024.03.31
- 2024.04.01
- 2024.04.02
- 2024.04.03
- 2024.04.05
- 2024.04.07
- 2024.04.09
- 2024.04.10
- 2024.04.12
- 2024.04.13
- 2024.04.15
- 2024.04.17
- 2024.04.19
- 2024.04.21
- 2024.04.22
FREE MAGAZINE
-
Cover Artists
MGMT
Skream! 2024年03月号