ヒトリエの「グルメトーキョー」【第20回】

COLUMN

はいどうも、グルメトーキョーシノダ回です。
このコラムは8月15日に書かれています。

前々回では全国のおいしい回転寿司を紹介し、
前回は名古屋のラーメン屋のコピー店が年一くらいで開かれる（？）というお話をした為、
シノダには東京の引き出しが本当に無いんじゃないかと思われるのもあれなので、今回はフツーに東京のお気に入りの飲食店を紹介したいと思います。

あれはいつだったのかすら思い出せないような逢魔時、からっぽになった心と胃袋ひとつずつぶら下げた僕は迫り来る明日から逃げ隠れるように新宿・アルタ裏に身を潜めたのでした。
やつらに見つからないことだけを震えながら祈る僕の肩に優しく手を置くように、古き良き洋食屋的出で立ちのレストラン・アカシアがそこに佇んでおりました。
推しメニューはロールキャベツとのこと。
えーロールキャベツ久しく食べてないーえー行くーってなった僕はそこで確かロールキャベツとハヤシライスが半々になってる「キャベハヤ」なる大味なメニューと、コロッケをオーダーしたんだと思う。
あっさりめのクリームシチューで煮込まれたロールキャベツのさながら生娘の下唇のような舌触りに心臓を撃ち抜かれた僕は以降新宿に用事があるとついでにアカシアでロールキャベツ食ーべよって思うようになりました。
やがて時は過ぎ行き、色々あり、気付けば妖刀・〆切の濡れた切っ先が僕の右耳を削ぎ落としに来ていたので、
あやっべー今日グルメトーキョー〆切かーそういや最近アカシアあんま（明石家さんまみたい）行ってなかったな～久しぶりにロールキャベツ食って記事にすっか～とJR新宿駅東口みてえな名前したでっけえ灰皿の上をじめついた風に吹かれて転がり回る数え切れないほどの吸い殻みてえにころころ、ころころと横断歩道を渡る連中のうちの一人になった。
小便の分かれ道によく似た路地裏にまろび込めばすぐに目の前に現れるアカシアを見た俺は、思わず捨て猫のようにニャアと鳴いた。
ニャア。
ああそうか今日は終戦記念日か。
俺は血に塗れた銃剣をそっと路上に寝かせ、花の一本でも咲きゃあいいさと
まるで陽炎のようにそこから消え失せたように思う。

まずい、非常にまずい。
アカシアのロールキャベツの写真が入った携帯はタッチパネルが俺のタッチをパネルしなくなったので初期化して下取りに出してしまった。
記事が書けない。
誰かが上げた写真を無断拝借するわけにもいかない（俺はこれくらいのレベルで悪いことができない）。
どうしよどうしよ、と青っ白（ちろ）い顔してハエのように新宿をぐるぐる回っていたが、
あっそういや近くにいいラーメン屋あるじゃん、と代々木に向かった。

代々木には御天なるラーメン屋があり、僕が敬愛する千原ジュニア御大がテレビで言ってたのを見て知った。
いわゆる博多とんこつ直系というか、とんこつの中でも割とダーティーな、臭みの伴うコクのあの感じが味わえるので僕はラーメンが食いたくなるとそこに行く。
店内にもロックなポスターやら何やらがいっぱい貼ってあり、漫画も読める酒も飲める遅くまでやってるトイレに正体不明のサイバーパンク調のオブジェが飾ってあるetc、いい感じのお店だ。ラーメンおいしいし。

最近全然行けてなかったな～～久しぶりに御天のラーメン食えるの嬉しいな～～怪我の功名とはよく言ったもんだな～～とJR代々木駅何口かもよくわかんねえほどに靄のかかった改札を抜け、ただカンだけを頼りに高架下を潜り歩けば歩くほどに明かりも人も消えていくことに恐怖を覚えた俺は実は既に高架線に擬態した大蛇の大口に飲み込まれていて今歩いているこの道は大蛇の胃袋でこのまま俺は溶かされて大蛇の糞便となり果てて死ぬんだと考えてしまったばっかりに恐怖で金切り声をあげそうになったが、
実際に出た声は「アー」だった。
あーそうか盆休みか。