ヒトリエの「グルメトーキョー」【第6回】

COLUMN

ご無沙汰しております。ゆーまおです。
バンドといえば遠征、遠征と言えばホテル。
みなさん色々なホテルでの過ごし方があると思う。
仕事に深けるひと、地方でしか見れないテレビを観るひとなど様々である。
私はPS4の実機を持ち込んでホテルのテレビに繋げて遊んでいる。ホームシックになりやすい私にとっては生活の一部が遠征先でも実現できるので、精神的にとても支えになり、これで深い睡眠も取れる。
ただ、全てのホテルの部屋がPS4を出来る環境とは限りません。テレビにHDMI端末がなければ映らないし、そういったホテルに当たることも少なくはない。......これは死活問題である。
ということで13インチの持ち運び可能なディスプレイを購入。もうどこへ行っても安心！！最高です！
仕事の出張でホテルが多い方や、遠征の多いバンドの皆様も是非ホテルライフを工夫してみては如何。

さて、今回ご紹介するお店は、京王線の千歳烏山にある「Akasabi Hotel」というお店。
電球色の明かり印象的なカウンターとテーブル席が二つある小さなお店。テーブル席には緋毛氈が敷かれ、和を演出したお洒落だ懐かしい雰囲気のある空間だ。

飲み屋街の並びにあるため、Bar等のイメージで入って行っても間違いではないのだが、ここでは酒は勿論、とても美味しい日本料理を気軽に楽しむ事が出来る。吸物、酢の物、焼物、汁、煮物、飯、と一筋縄では作れない懐石料理が出てくるのである。食を味として楽しむだけではなく、料理の姿と空気をこんなにお手軽に味わえるお店はそうそうない。
キッチンにはサブカルかと言わんばかりの髪型をした店主、福井英二氏が料理と酒を振る舞っている。一度見たら造形的にしばらく記憶に残る男であろう。
店内のBGMは忌野清志郎やゆらゆら帝国、ソウル・フラワー・ユニオン等がかかっている。日本語ロック好きの心も鷲掴み。
フードメニューが存在しないのもこのお店の特徴の一つ。日によって、仕込んである食材が変わるからである。時には料理をビュッフェ形式で店内でイベントを行い、店の隅から落語がきこえてきたり、普段は客として来ているロック界の重鎮達がアコースティックで演奏したりと大変粋なお店なのである。

今年の年明けは、ここで初対面の客達と協力しながら餅をついた。
自分でついた餅は美味いなと言いながら酒に酔いしれる。幸せな時間。
福井氏に話を聞くと、提供する料理や酒は、その時に人が求めているもの、その日の天気、気温、体調、季節をふまえて考えていると言う。
もしここへ足を運んだ時は「日替わり定食」を是非頼んでもらいたい。飲める方は限定されるが、日本酒、焼酎と一緒に味わって欲しい。
普段だと食べる事のない珍しい魚や野菜と出会う事も少なくはない。野菜や海産物、使われている食材で変化を感じながら発見を楽しんでもらえたら、また必ず行きたいと思う事だろう。
懐石料理や日本料理と言われると高級なイメージを持ってしまいがちだが、実はかなりお財布に優しい価格帯。カジュアルに日本料理を楽しめるお店があっても良いじゃないかという同氏の思いがある。

福井氏は、出身地である山口で懐石料理の修行を積み、後に上京。下北沢の今は無きすずなり横町に20代半ばにして「うさや」を開店。多くのミュージシャンや俳優に愛された。竹中直人氏主演の『男はソレを我慢できない』の舞台セットとしても使われている店であるが、下北沢開発の為、惜しまれつつも閉店。去年、千歳烏山に「Akasabi Hotel」を開店したのである。
気付いた時にはまた福井氏に会いに行こうとまで思う。ここまで来たら「Akasabi Hotel」という人間交差点を楽しんでいるはずだ。
私自身もたまたま知り合いに連れられて入った店だった。ここまで魅了されるとは思いもしなかったが、同氏の料理と人間性が人を惹きつけているのだなと感じる。