ハルカトミユキの「伝言ゲーム」【第16回】

COLUMN

ハルカトミユキの「伝言ゲーム」【第16回】

2016年02月号掲載

ハルカトミユキ

ハルカです。
　
これを書いているのは1月19日の真夜中で、昨日東京には初雪が降ったばかりで、今夜はこの冬いちばんの冷え込みで、つい数時間前まで私は新宿で歌ってた。
　
今夜は、久しぶりの曲ばかりを歌った。
　
歌にも、バイオリズムみたいなものがある。
「あ、今はこの曲だ」
ってしっくりくる感覚。
　
人の気持ちなんて、曖昧で不安定なものだ。
毎日必死に生きようとするほど、自分なんてすぐ見失ってしまうし、ちゃんと通じあいたいと願うほど、心なんて無ければどんなに楽だろうって、そう思う。
　
煮詰まってどうしようもなくなった時、私は、ふらふらと、懐かしい場所へ足が向く。
好きだったバスに乗って、育った街で降りて、気がつけば、毎日のように通っていたカフェでコーヒーを飲んでいる。
本屋さんで立ち読みをし、自転車置き場を通り過ぎ、公園のベンチでぼーっとする。東京で生まれ育った私は、たくさんの人に囲まれながら、ひとりぼっちだった。
　
でも、想い出の中のその場所には、寄り添うようにいつも歌があった。
何度も何度も飽きずに聴いて、その度に泣いた歌。
　
「なんで私のことがわかるんだろう」
「こんなこと思ってるの私だけじゃなかったんだ」って
歌が、側にいてくれた。
　
歌うことを生業にするようになって、時々、私自身もそう言ってもらえることがある。
その度に、幼かった自分を思い出す。
歌を聴いて救われて、歌を書いてまた救われて、夢中で書いて。言葉が、大好きで。
それが、かつての自分みたいな誰かの肩を抱いてやることができているのだとしたら。胸の奥で明かりが灯るように、不思議と勇気が湧く。
ハルカトミユキの音楽を聴いてくれているあなたと一緒に、私が私の歌を待っている気がする。照明を浴びながら見渡すライブの客席にも、私がいるような気がする。
　
昔作った曲を歌いたくなるのは、きっとその時の自分が呼んでるんだ。
何かを、伝えようとして。
　
私は今もこれからもずっと
歌っている自分と、
その歌を聴いて救われる自分と
両方で生きてく
あなたは私で、私はあなた。
それが、歌を歌ってる理由だな。
　
そんなことを、冷えた頭でぼんやり考えた夜でした。

ハルカトミユキ

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