ハルカトミユキの「伝言ゲーム」【第47回】

COLUMN

ハルカトミユキの「伝言ゲーム」【第47回】

2021年04月号掲載

ハルカトミユキ

そこまで親しくない友達もいる忘年会などの集まりで、"音楽以外で趣味あるの？"と聞かれることが多々ある。この質問から話を膨らます正解がわからず、いつからか私にとって嫌いな質問ベスト10に入ってしまった。出た出たと思いながら毎回"映画見たり、漫画読んだりかな"と当たり障りのない答えをトーン低めでいう。そもそも質問する側はそこまで答えに期待してないと思うが、私は自分にモヤモヤして嫌なのだ。

そんな私は最近、この質問に声を大にして回答できる趣味を見つけてしまった。それは、【陶芸活動】である。きっかけは昨年11月。LIVEのGOODSとして手作りコップを販売する事になり、陶芸体験教室に足を運んだ。これまで陶芸は数回やったことがあったが、2時間半で10個という初心者にしては速いスピードで作品を完成させ、思った以上に良い出来栄えの作品ができた。もっと上達して次はパワーアップした作品を売ったり、個展を開催したいと思った私は、陶芸活動をしている友人に塗料や土が豊富にある教室を紹介してもらい、新たな陶芸教室の門をくぐったのである。

初日、体験教室で自信をつけた私は先生に、"自分の作品を作って、いつか個展をやりたいです"と自信満々に言った。"うちは材料が豊富で技法も学べるから大体のものは作れますよ、では最初の工程からやっていきましょうかね。" と言われ、体験教室のおさらいの気持ちで私は何を作れるのかワクワクしていた。すると、机の上にラグビーボール程の大きさの土の塊が置かれた。"まず菊練りという作業から始めます、これをやらないと成形が上手くいきませんからね。" 私の知っている土の姿ではなかった。ここで私は本来の陶芸を知るのである。体験教室では短時間で完成させなければいけないので、ハイライトの成形という工程だけを行っていたのだ。成形は一番大切な工程ではあるが、完成までにおける20%程度の工程に過ぎなかった。成形で思い描いた形を完璧に作るためには、それまでの基盤を作る工程がかなり大切なのである。私はこの菊練りという、土を捻って空気を抜く作業を1時間程練習し続けた。これが簡単そうで難しい。苦戦していると"菊練りは、陶芸の第一関門だからね。"と陶芸は簡単じゃないのだと間接的に言われた気がした。この後もひたすら初めての工程が続き、初日は私が知っている成形の手前で終わってしまった。始める前にあった自信は何処へやら。見事に打ち砕かれてしまったが次こそはという気持ちで燃えたぎっていた。その後何度も足を運び、計15時間でようやく全工程を教わった。まだまだ一人前には程遠く今は成形後の工程に苦戦中だが、そんな中一つ目の作品をようやく完成させる事ができた。

何度も挫折した後の達成感はこの上なく、作品への愛情も半端がない。いい曲ができた時くらいの嬉しさを味わえた。個展が開催できた時には、一体どれ程の達成感が待っているかと思うと楽しみで仕方がない。もう完全に陶芸の虜である。

こうして音楽以外の趣味を見つけ、嫌いな質問への回答を導き出せたのに、そんな集まりすら開催する事ができない今は少し残念だ。いつか満面の笑みで答え、陶芸の楽しさをうざいくらいに語ってやろうと思う。今陶芸に興味を持ったあなた、手軽に達成感を味わいたいなら陶芸体験教室へ、苦しみの先にあるこの上ない達成感を味わいたいのなら陶芸教室へ足を運んでみてはいかがでしょうか？2021年は、音楽活動と一緒に、いつか開催されるであろう陶芸作品個展も楽しみにしてもらえたら嬉しいです。

ミユキ

ハルカトミユキ

歌人ハルカ（Vo/Gt）と奇人ミユキ（Key/Cho）によるフォーク・ロック・ユニット。立教大学の音楽サークルで知り合ったふたりは"同じ匂いがする"と惹かれ合い結成し、2012年にインディーズ・デビュー。2013年にメジャー・デビューを果たす。デビュー5周年を迎えた2017年には、3rdアルバム『溜息の断面図』のリリースに加え、5周年記念ツアーや日比谷野外大音楽堂でのワンマン・ライヴ、全国ツアーを実施。2018年に、初のTVアニメOPテーマを表題に据えたシングル『17才』を、2019年には初のベスト・アルバムを発表。そして、ふたり編成では過去最大のキャパとなる日本橋三井ホールでのライヴも開催した。2020年6月には4th EP『最愛の不要品』を配信リリースした。

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