ハルカトミユキの「伝言ゲーム」【第24回】

COLUMN

ハルカトミユキの「伝言ゲーム」【第24回】

2017年06月号掲載

ハルカトミユキの「伝言ゲーム」

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嵐のように半年が過ぎた。3rdアルバムが発売を迎えようとしている。夏がくる。
ハルカです。

夏がくると怪談が聞きたくなる。
そういった類いのものは大の苦手なのにどうしてか聞きたくなる。
この感覚は何なのだろうと不思議に思い色々と調べているうち、深みにはまった。
（悪趣味なのではなく歌詞を書く上で気になったからです。）

すると「恐怖」と「不安」の違いにたどり着いた。
わかったことを極簡単に言うと
「恐怖」とは、対象がはっきりしているときに使う言葉。
「不安」は対象がはっきりしないときに使う言葉。らしい。

　　　　　　おばけが怖い。　　　　　おばけだか人だか何だかわからない。

どっちが怖いだろう。
私は圧倒的に後者だと思う。そして日常的に溢れている怖さも後者だと思う。
ぞっとする、身の毛がよだつ、という日本語は美しいし、この感覚をものすごく的確に表している。
良質なジャパニーズホラーやヒューマンホラーといったものの根本にあるのは、
何かが起こる「恐怖」より何かが起こりそうで起こらない「不安」なのではないか。
どっちもまとめて「怖い」と表現するが一体何が怖いかと聞かれたときにうまく説明できない。
そのわからなさこそが怖いんじゃないだろうか。
お化け屋敷は怖い。だがおばけが出ますよと最初に忠告してくれているだけ親切である。
日常はおばけが出るか出ないかわかりませんと言われているお化け屋敷だ。怖すぎる。

ここでふと思った。
私はやばい人間ですとわかり易く表現している人と、いたって普通の人間に見せている人
果たしてどっちが怖いだろう。
「いたって普通の人間に見せている人」の中には、多分私もあなたも含まれる。
人間は内面がどうなっていようとある程度のところまでは普通に取り繕えてしまう。
「あいつならやりかねないよな」と言われる人と、「あんなに大人しい子が一体どうして」と言われる人。
これ、見せてる部分が違うだけで結果的に内面は一緒だったということになる。（善悪の話ではない）

で、歌詞の話になるんだけど。
私が書きたいものとは人間のこういう部分にあると思ったのだ。自分の中のわからなさ。
不安。違和感。不気味さ。それを逃がさずに捕まえて言葉にすること。
この感情が怒りなのか悲しみなのかはたまた悔しさなのかわからない。だから辛い。
そこで「それは昨日転んだ時に刺さったただの棘ですよ」と言ってもらえたら、なんだ抜けばよかったのか、
ということになる。
喜怒哀楽の網の目からこぼれ落ちてしまう感情の方が圧倒的に多いのだから。
それを掬い上げるのが歌であり、詩の役目であると思っている。
私は今回のアルバムを作る上で自分の不気味さと全力で向き合った。
自分は不気味であると認めてしまえば楽になる。

私は、このアルバムを聴いて大いにぞっとしてほしい。
あなたの中の知らないあなたを発見して。溜息の断面図を目の当たりにして。
そしてその感覚は、不思議に美しくて心地のよいものであると信じている。

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