Japanese
fhána × Skream! × バイトル
2019年10月号掲載
Member:towana(Vo) 佐藤 純一(Key/Cho) yuxuki waga(Gt) kevin mitsunaga(Sampler)
Interviewer:吉羽 さおり Photo by うつみさな
僕たちメンバーとファンが触れ合う場であり、ファン同士でもっと交流する場を作りたかった(佐藤)
-ではここでドリームバイトの村上さんにバトンタッチします。村上さんは、ライター志望の学生さんです。
towana:そうなんですね、よろしくお願いします。
村上:村上です、今日はよろしくお願いします。では早速、最初の質問です。今までfhánaはアニメのタイアップなどをたくさんやってきて、アニソンだとfhánaのファン以外でも広く聴いてもらえますが、最近はファンクラブを立ち上げたり、自主企画ライヴをしたりしていて、"対ファン"というところに強く目が向いているなと感じます。そのへんについては、何か考えが変わったことがあったのでしょうか。
佐藤:ファンクラブは以前から作りたかったんですよね。でも、なかなか話が具体的に進まなかったり、いろんな仕事で忙しかったりもあったんで、最近ようやくできたという感じなんです。活動をしていて思ったのが、fhánaってファンと交流できる場所が少なかったんですよ。ワンマン・ライヴやツアー、あとはリリース・イベントくらいしかなかったんですね。ファンと触れ合う場所がないから、そこをまず作りたかったんです。それでファンクラブを作ったり、自主企画をしたりというのを始めたんですけど、そこは、僕たちメンバーとファンが触れ合う場であり、ファン同士でももっと交流が生まれたらいいなという思いがありますね。
村上:ありがとうございます。では、次の質問です。私は音楽ライター志望なんですが、7月16日の主催イベント"Sound of Scene #01" curated by fhána"に行ってライヴ・レポートを書いたところ、それを佐藤さんがリツイートしてくださったんです。
佐藤:あぁ、あれはそうだったんですね。いいレポートでした。
村上:すごく嬉しかったです。そういったfhánaのライヴの様子を文にするときに、こういうことを特筆して書いてくれたら嬉しいとかはありますか。
yuxuki:これは難しいね。
towana:私は、"ハイトーン・ヴォイスが"という記述がどうしても多いんですよね(笑)。読む人にfhánaというものを伝えるなら、そうなるだろうなとも思うんですけど。
佐藤:ライヴ・レポだけでなく、こういうライターさんやインタビュアーさんだと嬉しいなというのは、その人なりの独自の視点があることですね。例えば、"fhánaは、こういうふうに考えているんじゃないですか?"っていうのをぶつけてくれると、自分たちが今まで考えてみなかった発見があって、話が盛り上がったりするんです。だから、他のメディアや他のライターさんとは違った独自の視点とか、時代との関わりなど独自の分析みたいなものがあったりすると、アーティストとしてもそれをきっかけに考えが深まったり、相乗効果が生まれますよね。あとそうやって熱意を持って向かい合ってくれるのは単純に嬉しいなと思います。
yuxuki:あとはライヴ・レポートだと、すげぇ盛り上がっている瞬間とか印象的な瞬間をがっつりと書いてくれると、あとから自分たちで読んだときにも、"あぁこんなふうになっていたんだな"って思えるので、どう見えていたのかなっていうのが伝わると面白いです。逆に、1曲目には何をやって良かったというのが羅列されているだけだと、何も伝わってこないですしね。佐藤さんが言うように、書いている人の熱意が伝わってくるような文章が、読んでいて面白いですよね。
村上:すごく勉強になります。それでは次の質問です。fhánaの楽曲は、曲や歌詞もそうですが、アルバムのジャケットやブックレットも含めてひとつの世界観が定まっているのが、特徴的だなと思います。最近、音楽業界としてはCDを買う人が減って、サブスクリプションやストリーミングに移行している流れもあります。それは、ジャケットやブックレットを手に取る人が少なくなってしまうことでもありますが、そういうことについて、アーティストとして考えることはありますか?
佐藤:紙に印刷されたCDジャケットを手に取ることは少なくなってしまって、配信されるにしても、アートワークやヴィジュアルというのは、必ずセットで出回るものなので、そこは変わらずに大事なものだと考えていますね。
村上:CDという物質としてのこだわりという点ではどうですか?
佐藤:物質として買うなら、満足度が高いものがいいなとは思うんです。これからもっと配信やストリーミング中心になっていくと、CDはよりファン・グッズに近いものになってくるかもしれないから、むしろCD中心の時代よりも、物質として、つまり、ジャケットやブックレットのデザインやパッケージングまで含めて、トータルで満足度が高いものじゃないといけないなと思いますね。今の話はちょっと違うんですけど、そのフォーマットに適したデザインのバランスというのがあるはずなんです。昔だったらレコードのような大きなサイズにちょうどいい、かっこいいデザインになっていて、CDだったら12センチ四方で見たときにかっこいいと思うデザインで。配信とかだと小さなサムネイルやアイコンで表示されることが多くなるので、レコードやCDでちょうどいいサイズで作ると、スマホの画面上で見たときには小さすぎるので、そこは意識していますね。スマホで小さなサムネイル画像で見てもいい感じに見えるバランスだけど、紙に印刷されたときも悪くないという、その塩梅で考えています。
村上:これから、ファンクラブならではのものを何か作りたいなとかいうのはあるんですか?
yuxuki:それはやりたいですよね。いろんなことができそうだなと思うので。
kevin:まだ走り出したばかりなんですけど、そういうのはやりたいですよね。
村上:楽しみにしています。では最後の質問で、みなさんは職業として音楽をやられていますが、普段音楽を聴くときにどんな思いで聴いているのかがとても気になります。
yuxuki:昔から好きな人の曲は、普通にファン目線で聴くことが多いんですけど、なんとなく聴くときには、かなり分析しちゃうことがあるかな。
kevin:そう、それね。
yuxuki:なるほど、このパターンねとか。素直に聴けないことが多くて。でも、それを超えてくると、いい曲だなってなるかな。
kevin:中学生くらいの、音楽のことを何も知らないときに聴いて、"なんかわからないんだけど超いい!"っていうあのゾクゾク感みたいな感覚には戻れない感じはありますね。yuxukiさんも言っていましたけど、分析して聴いちゃったりして。もうあの頃には戻れないんだろうなっていう悲しさはあります。
佐藤:はははは(笑)。
kevin:それは切ないですよね。でも、なんでもそうだと思うんです。絵を描く人だったら、他の絵を見ても技術的なことが気になってしまうとか。自分の分野でいろんな知識が増えてくるとね、どうしても素直になれないというか。
佐藤:俺は最近そういう感覚の、"その先"がきていて──
kevin:マジで!?
佐藤:資料のような感じで聴いてしまって、昔みたいに純粋に楽しめない時期もあったんだけど、もう一歩進むと、自分でも音楽を作っているから、作ることの難しさもわかるわけじゃない? 曲単体とかアレンジとかもそうだし、さらにそこに歌詞やいい歌が乗って、奇跡のようなバランスでできあがっているものを作り上げることの困難さを、身を持って知っているので。しかも、アニソンとかだと、曲と映像が調和してすごいものが生まれるようなことって、自分たちだけでは作れないし、他の作品を観ていても、なかなかそういうものってなかったりするじゃない。
kevin:うんうん。
佐藤:だから、奇跡みたいにいろいろな要素がカチッとハマっている熱量の高い作品を見つけると、そこに感動するんですよね。それは、中高生のときに単純に音楽を聴いてかっこいいと感動したものとは違うのかも知れないけど、もう一歩進んで、この奇跡的なバランスで作れたことってすごく尊いなというか。なかなかそれってできないことなので、この作品を作り上げた人たちがいるんだ! って、そこにもウルウルっと涙ぐむんですよね。この曲を考えて、この歌詞が乗って、この歌を歌った人がいて、それがこのタイミングでリリースされて、こういうアニメの主題歌になっていて、ストーリーと融合していて、出演している役者さんやスタッフやファンの人たちもそれに感動して、とか。それってすごい奇跡じゃないですか。普通だったら起こり得ない奇跡的なバランスや、いろんな人の熱意でこれが実現しているというところに、僕はグッとくるようになっているんですよね。
村上:ファン目線から言うと、「僕を見つけて」が、まさにそういう曲だなと今話を聞いていて思いました。佐藤さんが書いたブログとかも読んだのですが、そこに書かれていたレクイエム的な意味合いも含めて、不思議な現象が起きている曲だなって。
佐藤:ありがとうございます。そういう本質的なものってあると思うんですよね。ライヴとかでも、本当にいいライヴができたと感じる瞬間って、自分たちやその場のお客さんたちの意志だけでなく、もっと大きな何かの一部に触れているような感じがするんですよ。よくインタビューとかでも、"あなたが音楽を作る理由はなんですか"という定番の質問があると思うんですけど、ファンの喜ぶ顔を見ると幸せだから作っていますとか、自分が聴きたい音楽を作っていますとか、純粋に仕事として作っていますとか、いろいろな答えがあるじゃないですか。そういうのも全部関係なく、本当にすごい作品とか、すごい熱量を持った瞬間に触れると、自分の意志や考えがどうこうというよりも......ちょっとスピリチュアルっぽい話ですけど、キラキラと輝いている大きな何かに触れているような感じがして。その感覚を味わいたいんです。それが、生きている感じがするから、そこに近づきたいというのはありますね。
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