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INTERVIEW

Japanese

fhána

2018年02月号掲載

fhána

Member:佐藤 純一(Key/Cho) yuxuki waga(Gt) kevin mitsunaga(PC/Sampler) towana(Vo)

Interviewer:吉羽 さおり

2018年の第1弾シングルは、タイトルを"わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~"という。表題曲は、TVアニメ"メルヘン・メドヘン"のオープニング主題歌であり、軽やかに舞い上がるメロディをストリングスが縁取り、物語が始まっていく煌めきと躍動感が詰まった1曲となった。fhánaのスタンダードと言える昂揚感と高い構築性を磨き上げた曲であり、カップリングのエクスペリメンタルで遊び心のある曲との振れ幅も楽しめるシングルだ。来たるアルバムへ向けての、fhánaというバンドの"進化/深化"が窺える。

-ニュー・シングルは、"わたしのための物語 ~My Uncompleted Story~"というタイトルがまず印象的で、いろんな想いが込められていそうな曲ですね。この曲は、TVアニメ"メルヘン・メドヘン"のタイアップ曲でもありますが、どのように制作がスタートしましたか?

佐藤:"メルヘン・メドヘン"という作品は、魔法少女モノでかわいい感じがあるんですけど、主人公の(鍵村)葉月ちゃんというのが、(自分の)居場所がない子なんです。家の中でも、学校や外でもあまり居場所がなくて、本の世界だけが、唯一安らげる場所で。そんな女の子が、自分の居場所を作っていく成長物語でもあるんです。そう考えると、fhánaというバンドはアニソン・シーンとか、もっと大きく言うと、音楽シーンのなかで、自分たちの居場所を頑張って作ってきた数年間だったと思うので、そういうところと(この主人公を)重ね合わせながら制作していきました。でもそれって、fhánaや物語の主人公に限ったことではなくて、誰しもがそれぞれの場所で、自分の生きる場所を作るために戦っていると思うんですよね。そういうようなイメージでした。

-サウンド的には華やかな昂揚感が溢れていて、fhánaの得意なところという感じがありますね。

佐藤:今回はアニメの制作側からのオーダーで"「divine intervention」(2015年リリースの1stアルバム『Outside of Melancholy』収録曲)みたいな曲を"というのがあったんですけど、最初は、四つ打ちで、いわゆるお洒落なコード進行の、ハウスっぽい感じのものでデモを作っていて。それが四つ打ちからだんだんとバンドのビートになっていき、最終的に今の形になりましたね。途中で、僕がNEIL&IRAIZAとかを聴きだしたせいかもしれないですけど(笑)。結果、サビはシンプルだけどコード進行で遊んでみたりして、意外とありそうでない感じになったかなと思います。アレンジ的には、僕が作ったデモの時点で、キラキラしたストリングスと、対照的にローファイなギターのアレンジを作り込んでいて。光と影のコントラストを意識していました。

-お洒落の方向が変わっていったんですね(笑)。シンプルな曲ながら、ギターは結構いろいろなことをやっていますね。間奏パートなども、かなりノイズが効いていて、個々がやりたいことをやっている感じが聞こえてきます。

yuxuki:やっていますね。イントロのサビやメインのフレーズについては佐藤さんが作っていたものなんですけど、スタジオで相談をしながら、僕は汚し担当で。ソロのあたりは1テイクで自由にやっているので、何を弾いたかまったく覚えてない(笑)。

kevin:僕はやっていること自体はいつもどおりなんですよ。通常は自宅でノート・パソコンで作っているんですけど、今回は佐藤さんの家で、佐藤さんのデスクの横で並んで作業したんです。こういうこともたまにはあるんですけど、わりと珍しくて。今回はこういう作り方が楽しかったですね。楽しかったし、メールで説明を送ったり、レスを待ったりというのがなく、その場でできるのが良かったです。

-towanaさんは歌についてどうですか。

towana:サビが"Wow Wow"ですか......っていうのは最初ありました(笑)。でも、『青空のラプソディ』(2017年1月リリースの10thシングル)での"chu chu yeah!"と一緒で、やっていると慣れてきますね(笑)。歌自体は、メロディのキーが高い感じは得意なところでもあるので、結構スムーズにできたかなと思います。今回はサビのフレーズの"キラキラの"っていうところが、私的に印象的で、アニメの作品も今回のサウンドもそうですけど、女の子のキラキラとした感じがあって、fhánaとしても合っているワードだと思いました。そこが突き抜けられたらいいなと、一番意識したかもしれないです。

-今回は作詞クレジットに佐藤さんの名前もありますね、そのぶん、より意識的に作詞に関わっているんですか。

佐藤:そんなに深い理由はないんですけどね。今までも作詞については、"こういう歌詞でお願いします"っていう内容を考えて、上がってきたものに対して、"ここはもう少しこうしてほしい"とか、"サビの出だしはこういうフレーズでどうですか"って提案したりはしていたんです。そしたら今回は結果的に、半分くらい詞を書いていて。作詞家の林君(林 英樹)の方から、"これはぜひ共作ということでお願いします"と言われたので、"じゃあ、ぜひ"という感じでしたね。

-作っている段階から、フレーズがはっきりとメロディに乗っていたんですね。

佐藤:言いたいことや心情は、最初に話した自分の居場所を作っていくというもので、それが自分のためだけの物語になるんだっていう話ではあるんですけど。"Wow Wow"っていうフレーズは、80年代のアイドル歌謡曲っぽいものに持っていったら、面白いし、いい雰囲気になるかもなというところから始まって。今回は、今までのfhánaの歌詞よりも、難しくないというか、文学っぽくないと思うんですね。

-キャッチーであり、いわゆる、女の子が歌う歌謡曲っぽいノリはありますね。

佐藤:その歌謡曲テイストは意識しつつ、フレーズの強さや情景描写のイメージで、全体のストーリーを伝えていくというのは考えていました。