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INTERVIEW

Japanese

fhána

2018年02月号掲載

fhána

Member:佐藤 純一(Key/Cho) yuxuki waga(Gt) kevin mitsunaga(PC/Sampler) towana(Vo)

Interviewer:吉羽 さおり

-それがサウンドの生っぽさをより出しているところでもありますね。こういう再現性の高い曲ができるのがまたfhánaの良さでもあります。そしてアニメ盤の「ユーレカ」は、(インタビューの)直前に最終的に仕上がったものを聴かせてもらって。最初にもらったデモの印象ではお洒落な感じの曲だなと思いましたが、サックスが全面的に入ることでだいぶ渋い感じに仕上がりましたね(笑)。

kevin:アダルトな良さが加わりましたよね。

-サックスはどの段階で、こうしてふんだんに入れようと?

佐藤:最初から、合いそうだなとは思っていたんですよ。ただ、今回のシングルの制作スケジュールが結構大変な感じで。この曲は最後にできて、サックスを入れたいなとぼんやりとは思っていたけど、"ぶっちゃけ、いけるのか?"、"間に合うのか?"っていう状況だったんです。でもワンチャン、頼んでみましょうということで(笑)。"明日か、明後日には録りたいんですけどどうですか?"って、サックスの井上さん(井上泰久)に聞いてみたらOKをもらって。

-このサックスが入ることで音に厚みが出て、現代の爽やかなシティ・ポップ感よりも、少し時代を遡ったシティ・ポップやアーバン・ポップの雰囲気が出ましたね。

佐藤:そうですね。シティ感がありつつ、ポスト・トラップ的なビート感もチラッと入ったアーバン・ブルースを作ろうと思っていたので、サックスを無事入れることができて良かったです。

kevin:シンセサイザーにしても、いつもは利便性や音色を変えたり調整したりが楽なのでパソコン内のソフト・シンセを使っているんですけど、ちょっと音が細いよねって佐藤さんと話していて。太さを出すために、実際のシンセサイザーを鳴らして録音してという作り方をしました。そっちの方が(音が)太かったですね、むっちりとした音が出て。

佐藤:存在感があってね。

kevin:そういうことはやってました。あとは間奏のギター・ソロの後ろで、ニューヨークっぽい音を入れてます。街並みのガヤガヤとした音とか、バスのクラクションをいい感じのところで、ファン! って鳴らしていたりして。

佐藤:歌詞とかSEについても、"ニューヨークっぽい感じで"とは言っていましたね(笑)。Woody Allen監督の映画に出てくるニューヨークのシーンみたいなとか。

kevin:最初に入れていたクラクションの音が、ちょっとチープな感じだったんですけど、"もっとWoody Allenの映画に出てくるような、バスのクラクションがいいな"とかね(笑)。

佐藤:"都市生活者の憂鬱"みたいな、そういう曲を作りたかったんですよね。「snow scene」が、街から友達とかが外に出ていってしまったけれど、僕はこの街に残る、みたいな曲で、こっちは故郷から都会に出てきた人のお話ですね。初めてtowanaが作詞をした曲でもありますね。

towana:テーマを貰って書いたんです。もっと難航するかなと思っていたんですけど、書き始めたらすごく楽しくて。苦労もあまりなかった気がしますね。それで出したら、"いいんじゃない"って感じだったので(笑)。楽しく書けたっていうのが、自分では驚きであり嬉しかったですね。これからにも希望が持てるなっていう。次に書くかはわからないですけど。

-ぜひこれからも書いてほしいですよね。この曲も、fhánaらしい物語性があって、声が聞こえてくる歌詞だなと思います。

佐藤:これまでは、作詞家の林さんが書いてきて。今作は、その林さんっぽさも踏襲されつつも、towanaというひとりの歌い手の一番コアな部分というか、実存みたいなものが迫ってくる、純文学っぽい歌詞になったなと思いますね。だから今回は全体を通して"わたしのための物語"だったのかなって。

- towanaさんが自分で歌詞を書いているけれど、実際歌うときにブレスが大変そうなところがかなりありますよね。

towana:そうなんです。これは、最初のデモのときはもっと大変で、全然息が吸えないところもあったので、ここはこうしていいですかっていうのをやりとりしながら、ギリギリできるかできないかくらいまで削って、この形になりましたね。

佐藤:1サビとラストのサビの後半にかけて畳み掛けていくところは、ブレス的にもだいぶ大変ですし、でも性急な感じが泣けるなっていうのもありますね(笑)。

-"何もかも全部感じたい この身体を使い切って"という歌詞に、歌い方もまたぴったりときていて。

towana:そういうところもリンクさせたいなという思いもありました。メロディに乗る言葉だから、歌に乗せる言葉として聴いたときにちゃんと言葉が入ってくる感じ。そういうところをうまくできたらいいなとは思っていたんです。自分が歌っているので、ここにこういう言葉がきてほしいとか、高いメロディのところにこういう言葉を当てたらハッとなるかなとか、そういうことを一番に考えながら書いたのが楽しかったんです。


次の作品に向かっていく、新しいfhánaの布石になれば


-fhánaとしても新しい試みとなりますが、なぜこのタイミングで、towanaさんに歌詞を書いてもらおうと思ったんですか。

佐藤:J-POPっておそらくは90年代ころから、歌っている人が歌詞を書くのがいいというか、そういう風潮に変わっていって、アーティスト信仰みたいな感じになったと思うんです。それまでは分業で、作詞家がいて、作曲家がいて、歌手がいるという、それで優れた歌謡曲やポップスが生まれていて。90年代くらいから、アーティストが自分自身のことを言葉にしていく形に変わって。基本的には今も、その流れにあると思うんです。アニメのタイアップ曲というのは、fhánaの作品でありつつも、アニメの映像のためのプロジェクトでもあるので、分業制もうまくハマると思うんです。2017年のfhánaは、「青空のラプソディ」がYouTubeでたくさん再生されて、それによって海外でもライヴをしたり、今までのフィールドから違うところに出ていく流れになっていって。そういうときに、歌っている本人が歌詞を書いているという要素もきっと必要になってくるだろうなと、なんとなくそんなことを考えていたんです。もともと、書きたいという話はしていたんですけど、今回がいいタイミングなんじゃないのかなって思って。次の3枚目のアルバムに向かっていく、新しいfhánaの布石になればと思いますね。