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LIVE REPORT

Japanese

HAMMER EGG

Skream! マガジン 2015年12月号掲載

2015.12.06 @代官山UNIT

Writer 吉羽 さおり

11月6日、代官山UNITでSkream!とTOWER RECORDS主催による、次世代アーティストをサポートするライヴ・イベント"HAMMER EGG"が開催された。第1回となる今回の出演アーティストは、phatmans after school、Mrs. GREEN APPLE、asobiusの3組。イベント開催を前にSkream!では、各フロントマンの対談が行なわれたが、この3組ともに対バンは初めてということで、お互いがどんなライヴをするのか、どう仕掛けてくるのかという、心地良い緊張感が流れている。
 

ライヴのトップバッターを担ったのは、asobius。"HAMMER EGGへようこそ"という甲斐一斗(Vo)の言葉とともに、ライヴは「universurf」でスタートした。壮大な景色や光が美しく瞬くファンタスティックな光景をイメージさせるバンド・アンサンブルが会場を包み、甲斐は会場の熱を上げ、アンサンブルの音量を上げるかのように大きな手ぶりで歌い上げる。杉本広太(Gt)と髙橋真作(Gt)のギターが生み出すリリカルな空気に、海北真(Ba)と石川直吉(Dr)によるビートがソウルなエッセンスを加え、ぐんとサウンドの視界を広げていく感覚が、昂揚感を生む。のっけから、これぞasobiusというエネルギーだ。"最高です。こんなにノリノリの人たちだとは思わなかったです"と言う甲斐。そして"3バンドのファンが集まって、一発目からこうしてワーッとなっているのは嬉しいです"と続ける。前半は、今年2月にリリースした2ndアルバム『ultrarium』のアッパーな曲を中心に、甲斐が大きな手ぶりやトレードマークであるタクト(指揮棒)を振るい、エモーショナルなメロディを歌い上げ、後半はライヴで磨き上げてきた1stアルバム『pray&grow』の曲を中心に、盛り上げていく。「I'm in the love」などは、ミディアム・テンポでじっくりソウルフルに聴かせる曲で、もしかしたらイベントのような短いセットリストの中に置くのは難しいのかもしれないが、こうした"静"に重きを置いた曲も、スケール感を持って響かせるのがasobiusの強み。そして、「discovery」や「starlight」など、北欧サウンドを思わせる透明感とドラマ性の高い曲では、大きなハンドクラップが起こり会場を一体化させていく。悠々とした大きなサウンドスケープを描いて、ライヴハウスごと小旅行へと連れ立つ感覚は、asobiusというバンドならではだろう。トップバッターとして、カタルシスたっぷりに別世界への扉を開いた5人。ラストの曲はさらに躍動的なビートが跳ねまわる「大停電の夜に」を持ってきて、心地良くフロアを揺らし、約40分の夢見心地のステージを終えた。
 

続いての登場は、7月にミニ・アルバム『Variety』でメジャー・デビューしたMrs. GREEN APPLE。メンバー5人はステージ袖から元気いっぱいに突っ走って登場すると、紅一点ドラマー山中綾華の"ワン、ツー、スリー、フォー!"のカウントで「愛情と矛先」、そして「我逢人」とアッパー・チューンを立て続けにお見舞いする。若井滉斗(Gt)、髙野清宗(Ba)、藤澤涼架(Key)はステージ先端へと飛び出て、オーディエンスをアグレッシヴに煽り、そして熱いサウンドでぐいぐいと攻める。音と彼らの躍動が一体化した、すごい爆発力。のっけからハイボルテージなライヴだ。それでいて、ひねりの効いたメロディを大森元貴(Vo/Gt)がキャッチーに歌い上げれば、大きなシンガロングも起こしていくなど、死角なしといったステージ。「アンゼンパイ」のジャングリーなコーラスで、フロアが明るいムードに包まれていくのもまたいい。MCでは思い入れのある会場でもあるUNITに緊張して3度くらい"元気ですか"と呼びかける藤澤を、大森がたしなめるシーンもあったが、そのつんのめり感もバンド・アンサンブルのいい起爆剤だ。「リスキーゲーム」や「L.P」が、ステージとフロアの勢いをさらに増すと12月発売のメジャー1stシングル「Speaking」(現在先行配信中)を披露。Mrs. GREEN APPLE節といってもいい、ネジれたポップさと多幸感のあるメロディ&コーラスを、全速力で奏でるパワーが爽快。ギアがグッと入って加速しているバンドの今が集約された曲で、オーディエンスへのパンチ力もばっちりだ。2コーラス目には、オーディエンスの声が重なるくらい、メロディが鮮やかな威力を放つなどフロアへの浸透力も速い。"第1回のHAMMER EGGとして、何年後かにこの3バンドが出ていたなんてすごいと思ってもらえたらいい"と大森が語り、イベントのこれからと、3バンドのこれからへの思いを最後に演奏した「StaRt」に乗せて、螺旋状に上っていくメロディと大きなハンドクラップで聴かせてくれたMrs. GREEN APPLE。ヒネリたっぷりのカラフルなポップ・チューンが、笑顔の旋風を巻き起こした時間となった。
 

"お待たせしました、phatmans after schoolです!"というユタニシンヤ(Gt)の咆哮で、この日のイベントのトリを飾るpasの4人が登場。1曲目の「人類への過程」、そして「アオノヒメ」とオーディエンスの手拍子が大きくなり、「メディアリテラシー」では会場を揺さぶるジャンプとシンガロングで、早くもバンドもフロアも汗だくだ。しかし、それでは全然足りないとばかりに、"ユタニを倒せ!"というユタニの声とともに早くも怒涛のダンス・チューン「無重力少年」、夏にリリースしたハイパーに突き抜けたナンバー「FR/DAY NIGHT」へと突入していく。会場もすっかりあたたまっているがゆえ、ホンマアツシ(Dr)とヤマザキヨシミツ(Ba)のスピーディなビートに食らいつき、ヨシダタクミ(Vo/Gt)の"そんなんじゃ、ユタニ倒せないぞ"という声に、オーディエンスはさらに大きな歓声をあげ、大きなアクションで応える。また、ライヴでおなじみとなっている、会場一体となった振付とコーラスで盛り上がる「あいまいみー」では、ユタニのダンスもキレを増す。ギターを置いて誰よりもむちゃくちゃに踊るユタニと、ブレぬビートでがっちりとサウンドを支えるホンマとヤマザキ。そして、時にクールに、またエモーショナルにとハイトーンを響かせ歌心の琴線を揺らすヨシダ、という絶妙のコンビネーションが光っている。
後半は「7日間.」でスタート。淡々とした、それでいて小節ごとにストーリーが深く胸に飛び込んでくる曲に、オーディエンスが静かに揺れ、あたたかな余韻が広がる。3バンドともにMCでは、今日が初の対バンで音楽の表現も違うけれど、対談でそれぞれの人となりや音楽への思いを訊いてこの日を迎えるのが楽しみだったと語ったが、ヨシダもまた、"こうして好きなバンドと全力で遊べるのを、嬉しく思う"と言い、"今日出会ってくれたすべての人へ"と最後に「ツキヨミ」を披露した。ここまでアグレッシヴな曲を浴びせてきたが、一転、ナイーヴで優美な歌がグッと刺さる。"HAMMER EGG"の第1回を締めくくるにふさわしい、この一夜を抱きしめるような歌に会場からは大きな拍手が沸いた。3バンド、いかんなく個性をぶつけ合った、充実したイベントとなった。

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