Skream! | 邦楽ロック・洋楽ロック ポータルサイト

MENU

INTERVIEW

Japanese

Mrs. GREEN APPLE

2016年01月号掲載

Mrs. GREEN APPLE

Member:大森 元貴(Vo/Gt) 若井 滉斗(Gt) 山中 綾華(Dr) 藤澤 涼架(Key) 髙野 清宗(Ba)

Interviewer:石角 友香

"コミュニケーション"や"存在意義"から"布団の中の暖かさと独りの冷たさ"など、結果的に"12個のコンセプトを歌う"ことになった1stフル・アルバム『TWELVE』。人間や常識についての深い考察が印象的な「パブリック」が遂に収録されたことも含め、今を生きるあらゆる世代が素通りすることができない、2016年のロック・シーンに楔を打ち込む1枚だ。

-今回のアルバムは何を羅針盤にして作っていったんですか?

大森:インディーズ・デビューも、"リリース"を初めて経験したのも2015年で。そういう1年を経て、2016年になるタイミングで何を歌うべきか考えたときに、今までのこともひっくるめて、これからのことも歌わなきゃいけないってことに行き着いて――楽曲で楽しませることももちろん必要なんですけど、自分のパーソナルな部分をもっともっと模索して、いいところやきれいなところ、汚いところをちゃんと曲として落とし込まないといけないなと思ったんです。"コンセプトは何?"じゃなくて1曲1曲を集大成にすべく、今まで以上に楽曲に向き合ったので、だいぶメンタルがすり減っちゃったんですけど(笑)。"2016年からのMrs. GREEN APPLEとは?"という問いに対して自分で答えを出すというよりは1度、アルバムにして委ねることを答えとして作った作品ですかね。

藤澤:それぞれの期間で濃厚なことがいっぱいあって、もう後戻りできないというか、尻込みしていられないんだなっていうことはなんとなく自覚しているので。確実に次に向かうための作品になったとメンバーも感じていますね。僕は今回、生のピアノをレコーディングで初めて使ったり、フルートも入れたりしたんですけど、それは自分自身の挑戦でもありました。今回はどうしても楽曲に必要なものとしていろいろな音を入れたんですけど、そういうことがこれからのライヴや活動に間違いなく影響してくるなと。だからほんとにMrs. GREEN APPLE(以下:ミセス)が次に向かうための作品になったなっていう実感はありますね。

-大森さんはフェスとか出ても先輩バンドがいるだけで緊張するって言っていて、そういうスタンスなんだけど、"やることはやってるぜ"っていうのが作品に出たなと思って。

大森:テンション的には僕が1番高いと思うんですよ。メンバーは自分より沈む人たちばっかなんで、僕以下のテンションの人しかいないと思います。

-そういう人しか集まらなかったんだろうなって感じはすごくする。

一同:(笑)

大森:僕が人柄で選んだので、自ずと類友みたいな状況ですね。そこはどうしても大丈夫なメンバーを集めたいなって、最初から思ってたので。だから話し合いもすごくするんです。毎回のリハや本番ごとに2~3時間、平気で真面目な顔して話すので、精神的な部分のすり合わせは定期的に行ってて。だから今のところ大丈夫(笑)。

-(笑)ライヴを観ても、ミセスの音楽が人を救ってる場面とかを目の当たりにすると、バンドの覚悟の度合いも大きくなってきているのかなと。

大森:嬉しいことに、活動する環境が良くなったり、"好きです"という言葉や"ありがとうございます"って言ってくれる人たちがすごく増えたりして。そういうものすごく力を持った言葉を浴びたのも初めてだったので、それが"覚悟"として自分たちが意識せずとも滲み出てきたんだったら良かったなと思います。言霊の宿った言葉をこの1年すごく聞いてきたので感覚が麻痺しないようにすごく必死でしたね。

-日常でそんなに言われる言葉じゃないですからね。

大森:そうだと思います。道歩いてて、急に"キャー!"とか言われることないじゃないですか。でもライヴって、ステージに上がって歌を歌うと、みんなが手を挙げてくれて、ジャンプしてくれて、ニコニコしてくれる。そういう環境って、ものすごく非日常的で。でも最近それが日常的なことになってきたので、いろんな意味でちょっと怖かったんです。アンテナが違うものになっちゃうのかな?って思ったんですよ。でも自分たちはアーティストなんですけど、アーティストすぎても感覚が変わってきちゃうんだろうなって。自分たちの根本として普通のリアルな人間でいたいっていうのは結成当時から持っていることなんです。だから、"そこは気をつけようね"って話はしてますね。

-自分に対して"ありがとう"って言ってくれる人が多い反面、世の中に対してなかなか"YES"って言いにくい時期だったんじゃないでしょうか。

大森:そうですね、はい。

-今回は以前からあったTrack.3「パブリック」が満を持して今作に収録されたことが象徴的に思えたんです。選曲はどういうふうに考えていったんですか?

大森:選曲は、"12個のコンセプトを歌おう"ってことで、"TWELVE"ってタイトルにしたんです。12曲にしたいっていうのは......まぁ、結果的に13曲になりましたけど。すごく簡単なことを言っちゃうと今の自分が歌いたいものを詰め込んだ、一瞬を切りとったものが収録されたっていうのもあると思うんですけど、やっぱり「パブリック」やTrack.8「ミスカサズ」っていう初期の楽曲は自分の中ではすごく大きな曲なので。「パブリック」を収録するとなったら、今後、お客さんの前で嘘がつけなくなるというか、とてつもない切り札のような曲というか、自分たちの中でも大きすぎる存在だなと思っていて。でも、ここで(「パブリック」を)出そうって思えたのは2015年という1年間があったからだと思うし。「パブリック」を入れたいと思った瞬間にこのアルバムの景色がブワッと見えたなと。このアルバムに入れる曲のセレクトや、曲順などすべての構成みたいなものが見えた瞬間でしたね。