Japanese
Mrs. GREEN APPLE
Skream! マガジン 2020年03月号掲載
2020.02.16 @国立代々木競技場 第一体育館
Writer 石角 友香 Photo by 上飯坂一 / makiko takada
エデンの園――旧約聖書における理想郷(楽園)だが、おなじみアダムとイブが"知恵の樹の実"(禁断の果実)を食べたことから楽園を追放される――この題材をもとにした新作『Attitude』のアートワーク然り、Mrs. GREEN APPLEというバンド名然り、大森元貴(Vo/Gt)は人間が人間として生まれたことの素晴らしさと邪悪な部分の葛藤をずっと描いてきたと思う。その思春期から青年期に至る表現の集大成が、今回の結成7年目、メジャー・デビュー5年目で迎えたアリーナ・ツアーには凝縮されていた。LEDスクリーンや火柱、花道を使った演出が効果的であったのは、バンドの核心となる新旧の楽曲から組まれたセットリストがあってこそだったし、過去最強にバンドらしいタフな演奏があってこそだった。
トータル7本の今回のアリーナ・ツアーのファイナルにあたる国立代々木競技場 第一体育館には、初期からバンドとともに歳を重ね、大学生や社会人になったファンもいれば、ようやくライヴに参加できるようになった中学生ぐらいの男女も見受けられる。印象としては男性ファンがさらに増えている。完全にステージが見えない状態で、天井から吊り下げられたキューブ状のオブジェと、自然音をミックスしたアンビエントなBGMがツアー・タイトルのイメージを増幅するようだ。ざわつく会場が一転、大歓声と悲鳴に包まれたのは暗転とともにステージにメンバーがすでに立ち、ハードなアンサンブルの「インフェルノ」が鳴らされたからだろう。永遠はないが命が終わる日まで歩くという、彼らの中でも強い決意の歌だ。冒頭から火柱も上がり、いきなりピークに突入する勢いだが、これが"命の火"の演出であると思えば必然でもある。
立て続けに「藍(あお)」から「アンゼンパイ」まで初期の楽曲を演奏したことも、楽曲のトーンが前のめりだというだけじゃないだろう。もちろん、「藍(あお)」のイントロで若井滉斗(Gt)がフィードバック・ノイズを轟かせ、髙野清宗(Ba)がスラップを弾き、全員でバシッとブレイクを決めるタイミングがアリーナ・クラスでも伝わる今のバンドの力には圧倒された。加えて、インディーズ時代の「WaLL FloWeR」で歌われる人間の観念の差異。若さゆえの哲学で断絶や壁をぶっ壊したいと願っていた大森の軸はまったく変わっていない。毒づきつつ芯を突いてくる「VIP」の歌詞が笑顔でシンガロングされているのもミセス(Mrs. GREEN APPLE)ならではの光景だ。黄色い悲鳴の中には、自分の思いを痛快なまでに表現してくれるこのバンドの言葉と変幻自在な演奏に食らいついていくような叫びが多分に含まれている。"行けんのか!"、"歌って!"、"飛んで!"――こうした煽りはライヴのテンプレに感じがちだが、大森が鼓舞するのはファンの心にも身体にも閉じ込められた叫びを解放するためだと、改めて思った。
ひとつのフレーズをメンバー各々で鳴らしていく実験的なアレンジの「ProPose」を生でも見事に再現していたのも頼もしかった。トラック的なビートと現代音楽のような演奏手法。メンバーのシルエットが浮かび上がる演出も効果的だ。続く「Soup」まで、挨拶程度のMCを挟んだだけで、とにかく演奏を重ねていく。曲が持つメッセージは互いに相関しているが、演奏は1曲ごとに独立した存在感と完成度で届け、ある種の凄みすら感じた。
"代々木1日目はすごい地平まで行けたが、今日も行けるか?"という大森の問い掛けに男子の太い声も混ざったリアクションを受け、初期のナンバー「愛情と矛先」のイントロにまた大きな歓声が上がる。ファストなスカ・ビートの曲だが、テンポ・チェンジするサビ前ではフロントの4人が振りを合わせたり、"大丈夫だよ。安心して。"のフレーズのシンガロングを促したりして、奥行きのある会場にグルーヴが生まれていく。エンディングから暗転し、スクリーンには古い船の船首部分が投影され、航海に乗り出す映像がこれまでのムードを一変させた。すると、海賊の衣装のダンサーが登場。何語かわかりにくいAメロの歌唱から、ジプシー風のメロディのサビに変化しつつ、ダンサーとともにしっかりした振付のあるダンスを踊る大森。一瞬にしてミュージカルの舞台を思わせる演出のあと、航海が続くようなイメージで波のSEと映像だけが残った。
スケールの大きな演奏と演出の余韻に浸る客席は、花道にスポットが当たり、そこに大森がアコギを携えていることに再び悲鳴を上げる。訥々と、しかし高音はのびやかに歌う「クダリ」。過去に大森がひとりで作詞した部分を歌い終え、バンドで完成させた後半に向けて、ステージへ歩いていき、4人の音が混ざり始めた瞬間、その意味に声にならないような"ああ!"という感銘が、あちこちで聴こえたような気がした。若井が丁寧に色を添えていく単音が、まるで彼の気持ちのようで、迫力のあるソロにも負けない存在感を放っていたことも印象に残った。
アルバム『ENSEMBLE』からは「REVERSE」と、あとの「WanteD! WanteD!」のみ選曲していたのだが、生音ヒップホップ的な「REVERSE」が、ライヴでは山中綾華(Dr)のドラミングや髙野のローが強調されたベースなどで、フューチャー・ファンク・テイストも醸し出していた。レア選曲と言っていいだろう「ア・プリオリ」もヒップホップ的なアプローチだが、若井のギターは歪み系のコードだし、藤澤涼架(Key)のピアノは高速ループ。サウンドのジャンル感が究極までミックスされているのがミセスらしい。さらに、カラーテープのような色彩がグラフィティ・アートに変貌する映像も曲とマッチ。「Ke-Mo Sah-Bee」では様々な地域の先住民やエスニックな意匠が映し出され、これまでにない2ビート・ナンバーをよりいい意味で、ジャンルに括れないイメージに昇華。説明的な演出ではなく、全体的にアーティスティックな表現にレベルアップしていたのも見応え十分だった。
怒濤の集中力で14曲演奏してきた5人は某有名マンガのキャラに扮して、ふざけあったりしていたが、その様子からもツアーの充実が見て取れた。そこから自然にフォーキーな語り口で始まる「僕のこと」が、サビに向けて上昇していく。ファルセットや地声のハイトーンを織り混ぜて"狭い広い世界で"というサビ終盤のフレーズに向かって、それぞれが違う傷を負いながら生きていることを讃えるのだ。人間としての葛藤そのものは変わらないとしても、ここまで生きてきた日々を愛しいと歌うこの曲は今のミセスだからこそという気がした。態度や姿勢そのものを落とし込んだ『Attitude』には結果、様々な曲があるが、この歌詞はメンバー全員、そしてファンが噛み締めることのできる、現在地だった。
今の気持ちを確認したうえで、巨大な会場の天井を突き破る勢いで「StaRt」のイントロのティンパニのロールが響く。全員が歌ってるんじゃないか? というぐらい演奏以外の音が聴こえてくる。若井も思う様ソロを弾いてる。そのサウンドの説得力は(当たり前かもしれないが)デビュー当時と比較にならない。続けざまに「WanteD! WanteD!」と畳み掛けるのだが、Aメロのトラップに通じるビートの取り方、サビのEDM感など、改めて貪欲なアレンジを盛り込んだ最強のポップ・チューンである。
「青と夏」からラストまでは『Attitude』から立て続けに演奏したのだが、ここでこのアルバム自体が、これまでのミセスらしさをごく自然に今のフィジカルな演奏力で表現したら、十二分に強い伝達力を持つことを実感した。シンセのシーケンスが印象的な「CHEERS」、英国的なロック・オペラ的なピアノ・ロックの「lovin'」。恐るべきは本編終盤になって力を増していく大森の歌唱力。ラストはアルバム同様「Folktale」をセット。背景のか細い木が育ち、花をつけ、さらに大きく育っていく映像もヴィヴィッドだ。落ち着いたしっかりした足取りのようなテンポ感で、ひとつひとつの音を確かに刻んでいくアレンジ。大地のようなリズム隊と、星のように光る鍵盤やギターの音。何しろ歌詞は"私は今日もまた/歩いてゆく"で締めくくりだ。バンドとファンで刻んできた軌跡――これ以上ないほどの締めくくりだった。
アンコールでは各々長めのMCで感謝を述べていた5人。若井は悔しかったことも嬉しかったことも一気に去来したのか、涙を止められない場面もあり、ここまで感情をひたすら音楽に込めてきたことが理解できた。大森は飄々と"これからもいい曲を作って届けていきたい"という意志を表明。つくづく強い人だと思う。最後の最後に初期からの定番ナンバー「我逢人(がほうじん)」を披露。他者と関わることで人間は傷つくが、関わることで救われもする。エデンの園を追われたアダムとイブは現世の私たちなのだ。完全に青年期に入ったMrs. GREEN APPLEがキャリアを総括して見せてくれたものを抱えて、第2章で再会したい。
[Setlist]
1. インフェルノ
2. 藍(あお)
3. WaLL FloWeR
4. VIP
5. アンゼンパイ
6. ProPose
7. Soup
8. 愛情と矛先
9. Viking
10. クダリ
11. REVERSE
12. ア・プリオリ
13. ナニヲナニヲ
14. Ke-Mo Sah-Bee
15. 僕のこと
16. StaRt
17. WanteD! WanteD!
18. 青と夏
19. CHEERS
20. lovin'
21. Folktale
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