Japanese
HAMMER EGG vol.3
Skream! マガジン 2016年07月号掲載
2016.05.27 @渋谷eggman
Writer 吉羽 さおり
フリーマガジン&WEBで展開するクロスメディア "Skream!"とCDショップ"TOWER RECORDS"のタッグによる、次世代アーティストをサポートするイベント"HAMMER EGG"が3回目を迎えた。今回の出演は、SpecialThanks、Dizzy Sunfist、LONGMANの3組。いずれも女性ヴォーカルを擁するバンドで、今まさにメロディック・シーンで頭角を現わす3組が揃ったということでチケットはソールド・アウト。バンドTシャツ姿のキッズで埋まった会場は、スタート前から熱気に満ちていた。
LONGMAN
![](https://skream.jp/livereport/2016/06/20/images/hammer_egg_vol3_longman.jpg)
トップを飾ったのは愛媛発、男女ツイン・ヴォーカルの3ピース LONGMAN。挨拶代わりのセッションから、1stフル・アルバム『Neverland』収録の「IN THIS WAY」でスタートしたライヴは、頭から熱いダイヴの嵐。そしてひらい(Gt/Vo)の"行くぞ!"の声で、「So many men,So many minds」のファストなビートが走り出す。ほりほり(Dr/Cho)が生み出す歯切れのいいビートと、そこに乗るキャッチーなメロディ、そしてさわ(Vo/Ba)の抜けのいいハイトーン・ヴォーカルが気持ちいい。アンサンブルは、よーいドンでメーターを振り切って3人で駆け抜けていく感覚だ。そのエネルギーが爆発している姿がまた、オーディエンスの興奮に火をつけている。
"eggmanには初めて出させてもらいます。eggと言えばたまご、世の中いろんなたまごがありますが、僕はドラマーのたまごです。eggmanありがとう!"とほりほりが言えば、"eggman関係ないわー!"とひらいが突っ込む。さらに"ぜひ、その恩返しをしたいです"と続けるほりほりに"だからeggman関係ないよね(笑)"と冷静に返すひらいとの、なんだかわからないが、とにかく力技で会場を湧かせるMCも最高だ。他にも、「Cashier girl」にちなんでひらいが気になっていたスーパーのレジの女の子の話や、ほりほりによる、お客さんからの質問を、質問で返すコーナーもありと、やりたい放題。東京でのライヴは2年ぶりということもあってか、曲をたっぷりと披露しつつそれぞれのキャラクターも全開にした濃厚なステージ。今回のライヴでLONGMANが好きになったという人もいたのでは、と思う。
アルバム『Neverland』と昨年リリースした2ndミニ・アルバム『tick』を中心としたセットリストで、これまでにライヴで磨き上げてきた曲たちばかり。すぐにでもシンガロングできるパワフルなキャッチーさと、バブルガム・ポップ的なフレンドリーな男女ヴォーカルのハーモニーが肝で、それでいて甘ったるさはゼロの鋭いパンチ力がある。この3人の旨味を、存分に響かせたライヴとなった。
Dizzy Sunfist
![](https://skream.jp/livereport/2016/06/20/images/hammer_egg_vol3_dizzy_sunfist.jpg)
続いて登場したのは、3月に1stフル・アルバム『Dizzy Beats』をリリースした大阪発の3ピース、Dizzy Sunfist。これまでに10-FEETの"京都大作戦"やSiMの"DEAD POP FESTiVAL"に出演し、この"HAMMER EGG"出演後は"SATANIC CARNIVAL'16"での好演で強い存在感を放ったメロディック・バンドだ。あやぺた(Vo/Gt)、いやま(Vo/Ba)、もあい(Dr/Cho)が取っ組み合うようにして生み出していく音は、とにかくド迫力で馬力がある。「Someday」から始まり「The Magic Word」へと加速しながら、"やるぞ!"、"お前らもっとこいよ!"とあやぺがたフロアを引っ張っていく。モッシュピットはすでにもみくしゃで、さらに拳を突き上げてシンガロングしてるオーディエンスが熱い。あやぺたといやまのふたりで描いていく力強いメロディには、キャッチーさに加えて哀愁の色合いも滲む。激情で鋭く研ぎ上げた歌が胸に刺さって、熱い思いが身体中を駆け巡る感覚で、自ずと拳が上がって、身体が突き動かされていく音楽だ。このイベント前に3組のヴォーカルによる対談が行なわれたが、SpecialThanksのMisaki(Vo/Gt)とLONGMANのさわが口を揃えて"Dizzy Sunfistはとにかく、かっこいい"と言っていたのだが、それも納得。パワーを弾けさせつつ、オーディエンスと1対1で勝負していくようなピリッとした緊張感を湛えた佇まいが、タフな音に映されている。"3バンドで、一番かわいいバンド出てきたよ! 今日はみんなを虜にして帰ろうと思います"なんてあやぺたが言いながら、猛烈な爆音でフロアを伸していくのが痛快だ。
"女のバンドだということで、ライヴをちゃんと見てもらえないという経験もあった"と語るあやぺた。そして"ガールズ・バンドとして、本気で革命を起こしたいと思ってやってる"と付け加えた熱のこもった言葉に、会場の歓声が一段と大きくなる。"Dizzyサウンド"には、このアングリーな拳が真ん中にある。常に沸々とした思いを抱え、ハードな音へと想いを増幅させていくパンク・バンドとしての姿勢は本当に、惚れ惚れするかっこよさがある。女性も男性も、会場に詰め掛けた人々をひとつにしていく力を持っている。ラストは、Oiコールやシンガロングを巻き起こしながら、「SHOOTING STAR」から「FIST BUMP」へと怒濤のアンサンブルで魅せ、強いインパクトと轟音を残しステージを終えた。
SpecialThanks
![](https://skream.jp/livereport/2016/06/20/images/hammer_egg_vol3_specialthanks.jpg)
トリを飾ったのは、5月にミニ・アルバム『heavenly』をリリースしたSpecialThanks。この"HAMMER EGG"はちょうど全国ツアー中ということもあって、バンドとしてもいい加速がある中でのライヴ。2005年に結成し、Dizzy SunfistやLONGMANと世代も同じながらすでに10年選手のSpecialThanks。あやぺたもさわも、"SpecialThanksの音楽を聴いてバンドをやろうと思った"など、影響を与えているバンドでもある。といっても、未だにシーンに登場した当初の、キラキラとした輝きが褪せることなく続いているのがこのバンドだ。今回は、SpecialThanks史上最も長いツアーを行なっている最中でもあり、Misakiのヴォーカルがわずかにしゃがれていて、Suzi Quatroを彷彿とさせるようなスモーキーな声色が、SpecialThanksのポップなサウンドとこれまた好相性だった(メンバー内でも好評)。「I don't know」からスタートして、2008年リリースの1stミニ・アルバム『SEVEN COLORS』から最新の『heavenly』まで、すべての作品から満遍なく組んだセットリストは、まさにキャッチーでエヴァーグリーンなパワー・ポップ集。ファストなビートに、Hiromu(Ba/Cho)がステージ前方へと躍り出てフロアを煽り、ハンドクラップで明るく昂揚感に満ちたエネルギーで会場を包み込んだ「YOU=MUSIC I LOVE」、そして懐かしく芳醇なアメリカン・ポップスのあおりを纏った「MY SONG」で躍らせて、最新作からの「DOUNARUNO!?」でシンガロングを巻き起こす。甘美でポップなメロディでしっかり酔わせつつも、ツアー中ならではのいいグルーヴ感と爽快な疾走感が、いつにも増してバンドをタフに見せている。
"みなさん、HAMMER EGGのインタビューは読んでくれました? そのときにふたり(あやぺた、さわ)が「You say GOOD BYE」を聴いて心動かしてくれたということだったので、その曲をやりたいと思います"というMisakiの言葉から、「You say GOOD BYE」へ。センチメンタルなメロディがグッと胸にくる。当時10代のMisakiが作った曲。当時、同世代だったふたりが衝撃を受けたのも納得だ。それが、こうして会場をソールド・アウトさせるイベントに揃って出演してるその気持ちは、彼女たちでしか味わえない何か特別なものがあると思う。
そしてもうひとり、ドラマーのYoshiは、実は16、17歳のころからずっとDizzy Sunfistとライヴハウスでしのぎを削っていた間柄だという。Yoshiは大阪から上京して、その間にもDizzy Sunfistは人気バンドへと成長していったけれど、久々に会って変わっていない3人が嬉しかったと語る。こうして浅からぬ繋がりがあった3組が、今後を担う注目バンドとして取り上げられるのは、互いにとってもいい刺激になっているのだろう。"また、ライヴハウスで会いましょう"とMisakiが告げると「HELLO COLORFUL」で最後は大合唱で締めくくったSpecialThanks。その歌とカラフルなサウンドに会場は多幸感でいっぱいになった。
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