Japanese
SpecialThanks × The Winking Owl
Skream! マガジン 2016年07月号掲載
2016.06.17 @TSUTAYA O-WEST
Writer 石角 友香
今年5月に1stアルバム『BLOOMING』をリリースし、初の全国ツアーで駆け巡ってきたThe Winking Owl。そして同じく5月にニュー・ミニ・アルバム『heavenly』をリリースしたSpecialThanksのツアーでもあるダブル・ヘッドライン的な同公演。途中でThe Winking OwlのLuiza(Vo)の喉の変調により延期になった公演もあったようだが、彼らにとっては地元・群馬を残し、この日はセミ・ファイナル。そして、SpecialThanksにとってはツアー・ファイナルとなる。開演時間に会場に到着すると、すでにウェルカム・アクト的に鏡トナリがプレイ中! 続いてフロアから入場してさらに盛り上げるHenLee。急遽、最終公演からこの日に出演が変更になったSWANKY DANKが熱を注いでいく。
いよいよトリ前のSpecialThanks(以下:スペサン)が勢いよくステージに飛び出してくると、満員のオーディエンスがさらに前方に押し寄せる。現在のメンバーで初めての本格的なツアーであることにも注目するのだが、ファンはすっかり応援モード。Misaki(Vo/Gt)は現在のアーティスト写真同様、白の上下でまさに渋谷の街を歩いている女の子のよう。しかしトレード・マークの緑のSGを鳴らすと同時にバンドのヴォーカリストとしてスイッチ・オン。このギャップがたまらない。オープナーは『heavenly』より、フォーキーな歌い出しから2ビートに突入する「SWEET」。Chikai(Gt/Cho)も歌を立たせる演奏で、メロディックでファストなナンバーもあくまで曲を聴かせるスペサンの魅力が伝わる。「Hey! I ask you」まで3曲一気に演奏したところでyoshi(Dr/Cho)が、"この日で自分たちはツアー・ファイナルとなるので少し寂しい"と吐露。また、ツアー中に意気投合したLuizaとMisakiの女性フロントの競演も楽しんでほしい旨を話した。そしてMisakiが"『heavenly』は今の私たちにとって大事な作品なので聴いてください"というMCとともにタイトル・チューン「heavenly」へ。ギター・ポップ的な名曲感、切ないサビがスペサンらしい。ミディアム・テンポから始まり、Misakiの地声がタフな印象の「KOKOKARA」、Hiromu(Ba/Cho)のダウン・ピッキングが曲のボトムを支え、サビのコーラスがきれいな「Nothing」と、『heavenly』収録ナンバーが持つレンジの広いポップさが展開されたあと、yoshiのドラム・ソロを挟んで、爽快に突き抜けていく8ビート・ナンバー「Please Watch Me」へ。Misakiの舌足らずな感じのヴォーカルを聴くと、彼女の歌の表現の多彩さがよくわかる。スペサンはガールズ・メロディック・パンクに間違いないが、曲としてのオーソドックスな良さはジャンルを超えている。加えてメンバーが曲を活かすプレイをするのが健気で素晴らしいし、言葉で煽ることがほとんどないのも潔く感じる。
ラストのブロックの前には"SUMMER SONIC 2016"への出演も発表。実はMisakiが高校生の時代に一度出演経験のあるSpecialThanks。当時は値打ちをわかっていなかったぶん、今年はその意味を理解したうえで挑む意志を表明してくれた。ラスト・スパートはこれぞメロディックな名曲「You say GOOD BYE」でMisakiの邦楽/洋楽を超えたキュートなヴォーカルがさらに冴え、ラストはこれから起こるどんなことにもワクワクして生きていきたいと思わせてくれる、『heavenly』の1曲目でもある「DOUNARUNO!?」を披露。ジャンプしたり頭を振ったり、"熱演"ではあるけど、それ以上に楽しくてしょうがない感じのMisakiと、丁寧な演奏を聴かせるメンバー。スペサンの曲の良さ、新しいメンバーのアンサンブルをしっかり堪能できた。
そしてThe Winking Owlの登場だ。荘厳で幻想的なSEのイメージとは真逆なムードのやんちゃな感じでRanmalu(Ba)とKenT(Dr)が飛び出し、Yoma(Gt)も続いて高いテンションで登場。3人が位置についたところでLuiza(Vo)が白いドレスにライダースという衣装で現れると、拍手と歓声がさらに増す。1曲目はデビュー・シングルでもある「Open Up My Heart」。出音の重低音感、バランスの良さ、Luizaの意志的なAメロからサビへの突き抜けていく疾走感がすごい。そのエモーションに呼応してフロアから手が上がる。続く2曲目はLuizaのハイトーンの歌い出しから広がりが生まれていく「Here For You」を披露。ときどきRanmaluと向き合ったり、単なる演出というよりは曲のストーリーを表現するような彼らのステージングは、音楽に対するスタンス同様、誠実さを感じさせるところがあって、それがメロディの切なさと相まって、オーディエンスを束ねていくのだろう。ポップな歌い出しの「This Is How We Riot」にはスケールの大きなアメリカン・ロックに脈々と流れるDNAのようなものを感じつつ、タフでありながらLuizaのヴォーカルとともに曲を"歌う"ような楽器隊の表現力に圧倒されたし、「Sparkle Light」でのYomaの繊細なリフ、ファストな8ビートの中に細やかなショットを差し込んでくるKenTの手数の多いドラミングに目が釘づけになる。凄まじい身体能力を持った彼のドラムとプレイする表情は、ドラマーでありながらフロントを張れるぐらい強烈な個性を放っていて、ライヴ中何度も心の中で"おお!"と叫びを上げたぐらいだ。恐ろしく高い位置に設定されたシンバルなど金物で動きをつけているのも、見え方をわかっている彼らしいセッティングである。ヘヴィ且つタイトなハイブリッド・ロックを身上にしつつ、聴く人を選ばないメロディの強さを持つThe Winking Owlのバンドとしての強さをライヴが進むごとに実感させられる。また、躍動する楽器隊と、歌うことに集中し、派手なアクションのないLuizaの対照も鮮明だった。
満員のフロアを見渡しながら、Yomaが爪弾くギターに乗せて、ここまでツアーを続行できたことに感謝を述べるLuiza。去年、地元から活動の拠点を東京に移し、今回初めてツアーを回ってきたこと、まだまだ自分自身、The Winking Owlがどんなバンドだと捉えられているのかわからないことなど、素直な心情を話したうえで、そんな気持ちを最も端的に表した曲として「Walk」を披露。確実に一歩一歩踏みしめていくような、彼らの決意がこもったこの曲がライヴでさらに力強く立体的に鳴らされた。ラストはブライトな音像とスピード感が今の彼らのアンセム的なイメージの「Bloom」が、最も高い場所へ会場を浮揚するように響き渡る。爽快さの中にも複雑なフレージングがあり、演奏そのものも視覚的に目が離せないところが満載で、あっという間に本編が終了した。実にあっという間だった。
アンコールに応えて再登場した4人。Luizaは"地元の高崎(群馬)ならわかるけど、渋谷でこんなに人がいっぱい来てくれるなんて。でもどこでも一番大事なのはみんなの笑顔だから"と、フロアに向けて"キラキラしてる曲を贈ります"と「Stars」で、万感の思いを歌に込め、自分たちのバンドはもとより、仲間たちと作り上げたツアーのセミ・ファイナルを締めくくった。
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