Japanese
The Winking Owl
Skream! マガジン 2019年12月号掲載
2019.11.08 @渋谷WWW X
Writer 石角 友香 Photo by かわどう(@kawado_photo)
ポップなメロディを持った楽曲や、エレクトロニックなSEを導入したスケール感のある楽曲など、大きく表現のウィングを広げた2ndフル・アルバム『Thanksラブレター』のツアーのファイナル・シリーズ。本作をメインに据えたことや、初回限定盤の特典に付帯していた"SPECIAL DISC"のアコースティック・カバーをライヴでも実現したことももちろん、今のThe Winking Owlが開かれていることの証だが、何よりもこのバンドは"人"だなと。メンバー間に溢れるリスペクトと4人の個性がこのライヴを作り上げているんだなと、ライヴの序盤で感じた。
神聖なムードのSEとブルーのライトに照らされてメンバーが現れると、待望のワンマンに歓喜の声が上がる。オープナーは聴かせるAメロからフックのあるサビの"想い乗せては巡る"でグッとエモーショナルになる新作のラスト・ナンバー「Flame Of Life」。立て続けに初期からのアンセム「Open Up My Heart」、新作の起点とも言える「Try」といずれも状況を切り拓いていくマインドのナンバーが続く。Luiza(Vo)が来場したオーディエンスに短く感謝を述べ、知らない曲があっても気持ちで乗せていくから楽しんで、という意味のMCをしたとき、いい意味でファンの期待もどんな気持ちも引き受けるよ! という頼もしさを感じた。肩の力は抜けているけれど、覚悟の度合いが違う。彼女の誠実さはやはりThe Winking Owlの心臓部だ。
音像も楽曲が伝えたいことに重きが置かれた印象で、テクニカルなKenTのドラムも、今回のツアーから復帰したRanmalu(Ba)も、サウンド重視で過剰な音圧はまったくない。Yoma(Gt)も丹念なリフやフレージングで歌を支え、肝心なところでスケールの大きなソロを弾くという徹底ぶり。それでいて、何度もYomaとRanmaluがKenTのところに集まりアンサンブルを戦わせ、奏でる。その様子がなんとも楽しそうなのだ。おそらくステージにいるメンバーがフロアを見て、各々自分のペースで楽しんでいることや笑顔からフィードバックを得ていたのだろう。それだけ今のThe Winking Owlの楽曲世界は以前にも増して、歌と演奏をしっかり堪能し、自分の中で響かせたいリアリティのあるものになっていることの証左だろう。Luizaの切なく苦しい歌声やYomaの空間系のエフェクトで、内面的な表現に深みを見せた「Lust」からも進化が窺えた。
そして、ワンマンのロング・セットならではのアコースティック・バージョンも。インディーズ時代の「When Rainy Days Are Gone」、ゲスト・ピアニスト 須永理恵子を迎えてのスピッツのカバー「楓」、そして最新アルバムから、シンプルなアレンジが似合う「The Tears Turn To A Rainbow」の3曲をプレイ。あらゆる時代、ジャンルからのチョイスにも意味を感じたし、歌が描き出す世界に浸ることができるのも、このバンドのポテンシャルとして実感できた。
そこまでを前半と捉え、KenTのドラム・ソロを挟んで後半に突入していくのだが、彼のソロもまたユニーク。怒濤の手数でテクニカルなドラミングを披露するだけでなく、シンバルを波動のように振動させる序盤にパーカッショニストとしてのイマジネーションの豊かさを見た。歌に寄り添うアレンジでは派手なドラミングより高度なテクニックで聴かせる彼だが、ドラマー KenTのファンとしてはこのコーナーは嬉しいだろう。そこから繋がるようにLuizaの歌始まりの「Now What?!」でソリッドなサウンドスケープを作り、打ち込みのコーラスやシンセも効果的な「片想い」へ。ミディアム・テンポの「Just For Tonight」の苦しい胸のうちを吐露するような歌も明確に伝わり、言葉を丁寧に発するLuizaのストーリーテラーとしての力量も胸に迫った。
終盤を前にLuizaが『Thanksラブレター』に込めた、自分たちに関わるあらゆる人たちへの感謝、自分には歌うことが向いていないのではと悩んだ葛藤の時期を経て、それでも前に進み、今日を重ねて明日を迎えるのが自分らしいんじゃないかと、自分を肯定できるようになったプロセスを話した。こうしたMCが等身大で、このタイミングで彼女が話す必然が感じられたことも良かった。そのメッセージそのものである「君のままで」がより深く理解できたのだから。さらに葛藤の道のりを共に辿るような「Let Go」でメンバー全員が歌の意味を演奏で体現し、フロアもシンガロングで応えるという信頼関係。熱いエモーションと笑顔に満たされるなか、本編ラストはここにいる誰もが咲き誇れという願いを放つように「Bloom」が鳴らされる。演奏が進むほどにステージ上もフロアも心の輝度が上がっていくような開放感に満ちたエンディングだった。
ギミックも大袈裟な煽りもいらない。4人の人間性が表出したステージング、現代のポップ・ミュージックとして王道を歩める曲の良さがThe Winking Owlの最大の武器だ。鳴らされる楽曲の世界観の大きさとステージ進行のスムーズさが今以上にリンクしてくれば、さらなるカタルシスが待っている。そんな予感がする。
[Setlist]
1. Flame Of Life
2. Open Up My Heart
3. Try
4. This Is How We Riot
5. Confession
6. Precious Love
7. Lust
8. When Rainy Days Are Gone
9. 楓
10. The Tears Turn To A Rainbow
11. Now What?!
12. 片想い
13. Sparkle Light
14. Everyone Has A Story
15. Just For Tonight
16. 君のままで
17. Let Go
18. Bloom
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En2. Stars
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