Japanese
UKFC on the Road FUTURE STAGE
Skream! マガジン 2016年09月号掲載
2016.08.16 @新木場STUDIO COAST
Writer 山口 智男
日本のミュージック・シーンの未来を担うに違いないと、これからの活躍が期待されている新進バンドが顔を揃えた、その名も"FUTURE STAGE"。ステージから向かって左手に見える、メイン・ステージと言ってもいい"FRONTIER STAGE"を虎視眈々と狙いながら、そのFUTURE STAGEでは"近い将来、そこで演奏するぞ!"という思いを込めて、トップ・バッターのDATSを始めとする計5バンドが20分一本勝負の熱演を繰り広げた。
DATS
2年連続出演となるDATSは、昨年6月にリリースした1st EP『DIVE』収録の「Candy girl」を含む計6曲を披露。その「Candy girl」のオリエンタルなフレーズに顕著なように、どこか80年代っぽいところもあるポスト・パンク/ニュー・ウェーヴと昨今のシティ・ポップの折衷とも言えるサウンドは、音源どおりロンドンかブルックリンのバンドなんじゃないかと錯覚させるセンスの良さが感じられた。しかし今回、彼らのライヴを初めて観た筆者が魅了されたのは、そんなクールな装いとは裏腹に彼らがアピールしていた、ある意味、熱さだった。
狂おしいギター・ソロで"おっ!?"と思わせた1曲目の「North」からそれは感じられたが、"新曲やります"と杉本亘(Vo/Gt)が言い、"ジャンプ! ジャンプ!"とフロアを煽ったDATS流ディスコ・ナンバーの「fuse」から、ドラムのビートが気持ちを駆り立てた、やはり新曲の「Fade away」へと繋げた中盤からステージの温度はグッと上昇。軽いタッチのカッティングがシティ・ポップ感を際立たせる一方で、ドドタン、ドドタンと重たいドラムにブリブリと唸るベースがアグレッシヴな一面を表現する「awake」からラストの「Cool Wind」になだれ込んだときには、ステージに溢れる熱気がフロアに伝わり、手拍子が起こった。"今日、ここでみんなとひとつになれたことを誇りに思います"と杉本は言ったが、それはその熱演があればこそ。中でもラストの「Cool Wind」は、その続きも見てみたいと思わせる圧巻の演奏だった。全6曲中3曲が新曲というセットリストにもガッツと前のめりの勢いが感じられた。
ウソツキ
ハットを被ったフロントマン、竹田昌和(Vo/Gt)を始め、黒一色なアーティスト写真とは正反対にメンバー全員が白い衣装で揃えたウソツキは、7月13日にリリースした3rdミニ・アルバムの表題曲である「一生分のラブレター」でいきなりフロアを盛り上げると、この日のラスト・ナンバーのタイトルに引っ掛け、"銀河鉄道に乗ってやってきました"と、そのクサさも魅力のひとつと言える挨拶をした。
バンド名や、この日も演奏した"ハッピーエンドは来なくていい"というタイトルにも表れているように若干の屈折も感じられる一方で、自ら"王道の歌ものバンド"を掲げるとおり、日本のロック・シーンのど真ん中を思わせる、いわゆる歌もののロック・ナンバーが彼らの大きな魅力。そんな歌の魅力を、タイトな演奏でしっかりと伝えるバンドの実力を、この日、改めて確認したという人も少なくなかったと思う。ライヴではさらに、曲のタイトルを観客とコール&レスポンスした「ネガチブ」や、歌詞に合わせ、観客に上げたり下げたりしてもらった腕を最終的には左右に振らせ、フロアがひとつになる見事な景色を作り出した「旗揚げ運動」のような参加型のパフォーマンスの楽しさが加わるんだから盛り上がらないわけがない。
観客を存分に楽しませ、フロアの温度をグッと上げた彼らがこの日、ラスト・ナンバーに選んだのは「新木場発、銀河鉄道」。汽笛と汽車が走る音を表現したギターを始め、一段と熱を帯びた演奏に客席から自然と手拍子が起こった。3回目の"UKFC on the Road"出演となった今回、"ウソツキはこの1年で、UK.PROJECTを背負って立つバンドになる"と竹田は宣言したが、この日、バンドと観客が作り出した一体感は、歌の力が何度も観客の気持ちを鷲掴みにする光景を見せられたあとだっただけに、もっともっと大きなものになっていきそうな気がした。
asobius
自分たちのファン以外の、たくさんのお客さんに見てもらえるという意味では、誰にとっても挑戦だったと思うが、この日、最もチャレンジングなライヴを繰り広げたのは、筆者の知る限りasobiusだった。
本番直前のリハーサルでシビアにサウンドをチェックしながら、ロック・バンドによるディズニー・ソングのカバー・アルバム『ROCK IN DISNEY ~Season of the Beat』に提供した「It's a Small World」をさりげなく披露するという遊び心(?)でニヤリとさせると、甲斐一斗(Vo)は"最高のライヴをします"と宣言。そして、甲斐がいつもどおり観客をasobiusの世界に誘うように指揮棒を振りながら、デビュー・ミニ・アルバム『Rainbow』収録の「made of my friends」で演奏になだれ込むと、MCも挟まずに計4曲を立て続けに披露した。その4曲はどれもシーケンスで鳴らしたアンビエントなシンセの音色も使いながら、彼らの持ち味である壮大さ/雄大さをアピールするものだったが、ライヴにおける即効性も意識したという2ndアルバム『ultrarium』の曲を一切交えなかったところが興味深い。持ち時間が短かったことを考えると、フロアを一気に盛り上げるアップ・テンポの曲を交えても良かったはず。しかし、そうせずにあえてミッド~スロー・テンポの曲でまとめた、いや、攻めたところに、この日のチャレンジがあったように思う。
同期のビートをズドドドと地鳴りのように鳴らした「golden wombs」の迫力満点の演奏から一転、ラストを飾ったのはバラード・ナンバーの「song for you」。甲斐はステージの際に立ち、大きなアクションでフロアにアピールする。美しいメロディを歌い上げる甲斐の歌声もいつも以上に伸びやかだった。思い残すことはなかったのだろう、普段は饒舌気味にMCを入れる甲斐は何も言わずにステージを下りたが、そこで終わったわけじゃない。甲斐からステージを託された楽器隊の演奏はそこから一気に過熱。終演をドラマチックに演出した圧巻の演奏に、それまでのストイックなパフォーマンスを身じろぎもせず、食い入るように見つめていたフロアから大きな歓声が湧いた。
PELICAN FANCLUB
もっとニヒルなバンドだと思っていたんだけど......と筆者を戸惑わせ、音源を聴くだけじゃなく、もっとライヴに足を運ばなきゃダメだねと猛省させられたのがPELICAN FANCLUBだった。手拍子で迎えられ、いきなり性急な演奏で盛り上げた「アンナとバーネット」を始め、6月にリリースした3rdミニ・アルバム『OK BALLADE』の曲を中心とした全5曲は、syrup16g、THE NOVEMBERS、きのこ帝国を輩出したDAIZAWA RECORDS期待の新人と謳われるに相応しいオルタナティヴな感性が感じられるものだった。しかし、彼らのユニークさを際立たせていたのは、楽曲の魅力もさることながら、"熱くなろうよ! 命がけでやってんだよ!"とエンドウアンリ(Gt/Vo)が訴え、観客に心を開くことを求めたパフォーマンスだったかもしれない。
手拍子だけでは物足りないエンドウは観客に腕を上げさせ、それを振らせながら、フロアがひとつになった光景に"すげぇ!"と感嘆の声を上げた。また、3曲目の「説明」でフロアに飛び込む熱演を見せたクルマダヤスフミ(Gt)はその勢いで、"一緒に身体を動かそう"と突然、バンドと観客が一緒に"U"、"K"、"F"、"C"の人文字を作ることを提案。"U!、K!、F!、C!"とコールしながら全員が身体を動かして生まれた一体感は、"未来を楽しもう!"とエンドウが訴え、この日一番の激しい演奏を見せたラスト・ナンバー「記憶について」でさらに大きなものになった。演奏は若干、荒削りではあったけれど、そこにもメンバーたちの気負いと前のめりすぎるぐらいの気持ちが表れていたことを思えば、それもまた見どころだったと言っていいかもしれない。
SPiCYSOL
"UKFC on the Road"二度目の出演にしてFUTURE STAGEのトリに抜擢されたSPiCYSOLは"平日なのに集まってくれてありがとう、パーティー・ピーポー。楽しんでますか?"とKENNY(Vo/Gt)が呼び掛けながらトリに相応しい王道のパフォーマンスで観客を魅了し、フロアを揺らした。
レゲエ、R&B、ヒップホップのエッセンスが溶け込み、聴いた者の気持ちを解き放つサーフ・ロック・サウンドがSPiCYSOLの身上だ。リハーサルからなだれ込んだ「AWAKE」、「Rising Sun」とお馴染みの曲を畳み掛け、グングンと上がっていったフロアの温度は、KENNYと観客が競い合うように楽しんだ「PABUK」でのタオル回しでさらに上昇。その「PABUK」はパンク・ロックやミクスチャー・ロック譲りのやんちゃさも感じられるSPiCYSOL流のラガマフィン・ナンバーだが、それ以上に盛り上がりを見せたのが、TOTALFATのShun(Vo/Ba)をゲストに迎え、"汗拭くヒマはねぇぞ。イェー! もっと! イェー!"と観客を煽りながら一緒に歌ったTOTALFATの「Room45」のレゲエ・カバー。そんな共演が実現してしまうところも多くのバンドが一堂に会する"UKFC on the Road"の醍醐味だ。
そして、KENNYが"トリを任せてもらって光栄です。絶対、あっち側(FRONTIER STAGE)に行くから、これからもよろしく頼むぜ。みんなと踊るために作りました"と言いとダンサブルな「Around The World」をフロアに投下。自分たちの前に出現した、さらに大きなうねりを目の当たりにしたKENNYが、SPiCYSOLの前にFRONTIER STAGEで演奏したTOTALFATのJose(Vo/Gt)が、バンドとファンを"音楽で繋がったファミリー"と言ったことに倣い、"奇跡の塊のファミリーに入れて光栄です"と再び"UKFC on the Road"のステージに立っている喜びを語ると、バンドは6月にリリースした2ndミニ・アルバム『Tropical Girl』から「Coral」を披露。J-POPシーンでも勝負できるハート・ウォーミングなバラードが最後に印象づけたのは、SPiCYSOLの音楽は、もっともっと多くの人たちに聴いてもらえるに違いないという予感だった。
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