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LIVE REPORT

Japanese

UKFC on the Road 2015 DAY2

Skream! マガジン 2015年09月号掲載

UKFC on the Road

2015.08.19 @新木場STUDIO COAST

Writer 石角 友香

2日目はここ2年で増えた新しいバンドが"FUTURE STAGE"に揃い踏み。先輩たちがパフォーマンスする"FRONTIER STAGE"は、POLYSICSからスタートし、大トリを飾ったthe telephonesまで、アッパーに盛り上げるバンドが多かった2日目だが、FUTURE STAGEには、内側に闘志を秘め、おのおの独自のメロディやバンド像を持つニューカマーが勢揃いした印象。どのバンドもこの場に出演できることの光栄を口にしながらも、狭義のシーンに属さない自分たちらしさを堂々と鳴らしていた。気になるバンドがいたら、引き続き普段のライヴもチェックしてみて欲しい。


武藤昭平 with ウエノコウジ
1日目同様、社長の遠藤幸一の開演の挨拶からスタートした2日目。曰く、"今日もピカピカの新人からスタートします"と冗談たっぷりに紹介されたのが武藤昭平 with ウエノコウジ。ブラックスーツでキメたふたりは苦笑いしながらも"FUTURE STAGEだからね、未来を背負って......るけどシワシワの新人だね"という武藤のひと言にフロアも沸く。武藤のガット・ギターもウエノのアコースティック・ベースもパーカッシヴで乾いた響きが心地いい。このコンビ当初からの個性であるロマ風の哀愁はもちろん、この日は「ブエナ・ビスタ」を始め、明るい曲調が多い印象だ。ギターのボディを抱きながら叩く武藤は否応なしに大人の色気とタフさを滲ませている。若いオーディエンスにも有名な話で、ご存知のようにウエノはTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTの最初のレコード(※CDだが彼はこう呼ぶ)をUK.PROJECTからリリースしていて、それがもう23年前! 当時から世話になっているUKP藤井会長とは相変わらず今も会うと飲んでるとか、某バンドで儲けて自社ビルを建てたとか、このコンビのライヴはUKP裏話の宝庫だったりもする。まさに1日のスタートに最適(笑)。そんな肩肘張らないMCのあとはニュー・アルバムのリード曲的な「ワルチング・マチルダ」を披露。タイトルが示すように三拍子に合わせて後ろの二拍をクラップする人、大いに飲み上げる男子、と、ふたりの飾らないダンディズムと最小限の音でどこまでも旅情を掻き立てる演奏を楽しんでいる様子だ。ラストはロマ~ウエスタンの匂いのする「レッツ・ブーズ・イット」。今日を目一杯生きて、まだまだ飲む!という意味合いの歌が祭りの真髄を大人の貫禄と愛嬌で示され、武藤が次のPOLYSICSにバトンを渡すように"トゥイース!"(トイス!には聞こえなかった)とひと声。いい1日の始まりだ。


Helsinki Lambda Club
サウンド・チェックの段階から"青春"が溢れだしている。それもUSのインディー・ポップやちょっと懐かしいR&Rリヴァイバルな感じの"青春"が。無条件に胸が高揚するタッチの、これまでのUKPには珍しいバンドがHelsinki Lambda Clubだ。スタートはワン・テーマながらコーラスの良さで聴かせる「All My Loving」。そして"NEWCOMER SAMPLER"(※5月にUK.PROJECTが監修したレーベル・サンプラー付きの冊子)にも収録されていた「ユアンと踊れ」は豊かに"歌う"ベース・ラインとシャッフルのビートが、バンドがまだ青臭い時期にしかない"バンドであることの楽しさ"を炸裂させている。なんとなくandymoriや何年か前のThe Mirrazを思わせる、曲がいいから成立するシンプルネスに通じるものを感じてしまった。パンク・バンドがやるソウル、といった趣きの「Lost in the Supermarket」は甘酸っぱいし、一転してシューゲイズな轟音を聴かせる「メサイアのビーチ」という曲のタイトル・センスもなんだか痺れる。ポップでいいメロディを持ちながら、アレンジの振り幅もあって、なかなか侮れない。そういう何をしでかすかわからない感も彼らの持ち味のひとつではないだろうか。MCではヴォーカル・ギターの橋本が去年に続いてこのステージに立てることをスタッフ始め、オーディエンスにも感謝し、その間、作品(1stミニ・アルバム『olutta』)をリリースできたことにも感謝し、"愛をこめて"と、同作品に収録されているバスカーっぽいミドル・チューン「シンセミア」を届ける。ちなみに"一目見せてよ、君のシンセミア"というサビが印象的なのだが、シンセミアは"受粉されていない雌の花"(という意味合いで使ってるなら)と、なかなかエロい。ますます侮れないと思った。


odol
キュウソネコカミによって焦土と化したフロアに、わりと我関せずな雰囲気で登場したのが、ピアノを擁するバンド、odolだ。登場SEも穏やかさの中にほんのり不穏さを含んだピアノ曲である。1曲目に披露した「あの頃」は、エレピとメロディアスなベースが作る音の壁、そしてオルタナティヴ・バンドでありつつ、ギターのコード感にちょっとレア・グルーヴが見え隠れしたりして、圧倒的な夏の終わりのメランコリアが立ち上がる。なんなのだろう?このマス・ロックを通過してきたシティ・ポップのような不思議な楽曲は。とにかくエレピが大きな要素であることは間違いないのだけれど、それもポップスにおけるピアノのようにわりと正統派なコードが鳴らされ、それに対するギターやベースのアプローチがフュージョンっぽかったりするのが面白い。しかも歌われる言葉は飾り気がなく、"おどる"という言葉の意味を解体/再構築する内なる闘志を感じるバンドだ。サンプラーに収録されていた「飾りすぎていた」は前述のようなイメージだったが、後半に配置された「17」などは、ギターのフィードバック・ノイズやワウが圧の高い音像で攻めてきたりもする。その中で"変わらないもの"として淡々と聴こえてくるピアノ、それこそがodolの他にはない魅力なのでは?と思えてきた。しかも何か異質なものを混ぜあわせようという策が見えない。悩ましかったり、虚無感だったり、何かを希求する気持ちを大いに揺さぶる、ユニークなバンドに出会ってしまった。


polly
それにしても先のodolからのdownyは素晴らしい流れだった。さてFUTURE STAGEも後半に差し掛かり、サウンド・チェックで聴こえてきたのは少年性の残る声。その主、越雲龍馬(Vo/Gt)がJOY DIVISIONの『Unknown Pleasures』Tシャツであることを確認して、勝手に期待を高める(最近、よくわからず着用してる向きもあるが、そこはさすがにバンドマン)。2本のギターの絡みとスキャット風のコーラスが新鮮な「ナイトダイビング」、どこかそこまでアクのないクリープハイプといった形容も浮かんだ「アンハッピーエンド」という冒頭の2曲で、このバンドというか越雲というフロントマンの"熱演に見えないけど突き放してもいない"独特のスタンスに引き込まれる。そして男と言ってもやはり彼の声の濁りのなさと、何を歌っているのか知りたくなるいい意味での甘やかさはこのバンドの強みだろう。"君は通り雨"をリフレインする「アマツブニアカ」では後半、そのリフレインをマイクを少し離して大きな声で歌ったり、ファンキーなギター・カッティングで曲の印象は違うのだが、やはり雨がテーマになっている「雨の魔法が解けるまで」と、だんだんバンドの個性が見えてくるプロセスも楽しかった。ほぼMCなしでステージを進行しつつ、突き放している印象でもない。ポップだけど、何か引っかかる。"明日の生き方を僕は知らない 誰も知らない"と歌うラストの「知らない」のその不安を照射する気持ちの率直さに希望を見た。


SPiCYSOL
UKPの中でも珍しいというか、ルーツ・レゲエやワンドロップのテイストをベースに持っているバンドは初めてなんじゃないか?と思うのがこのSPiCYSOLのステージは、バンドが自信をつけてきたことを感じるナチュラルなものだった。エレキもアコギも最高に乾いたカッティングが気持ちいい「AWAKE」。そしてKENNY(Vo/Gt)のR&Bのヴォーカリスト的な歌の上手さもごくごくすんなり入ってくる。しかも彼らの場合、ルーツは持ちつつ例えば「Around The World」はハウス的な四つ打ちでダンス・ミュージックとしてのアレンジにアップデートされている部分や、メロディに普遍的なロック/ポップの要素があることが、ロック・バンド・リスナーの多いUKFCでもすんなり溶けこんでいるファクターなんだと思えた。夏と海をテーマに活動してるバンド、というだけで他のバンドとはこう、日常の感覚からして相当違うイメージを持ちがちなのだが、リズムがタイトでポップなせいか、フロアのオーディエンスもレゲエ/ヒップホップ・ノリのアクションをごくごく自然に起こし、メンバーに煽られてタオル回しも起こるほどオーディエンスをがっちり掴んでいる。アッパーなスカ・ナンバー、その名も「S.K.A」では、トランペットのPETEの突き抜ける旋律が痛快に響き渡り、オレンジのライトに照らされたラスト・ナンバー「Hello Swallow」では、奇しくも少し早い夏の終わりのセンチメントを残して去っていった。


ウソツキ
FUTURE STAGEのトリはウソツキ。大きな括りで言えば様々なギター・ロック・バンドが登場してきたが、ウソツキのギミックのなさには改めて"王道うたうもの"バンドの看板に偽りなしだなと感じ入ってしまった。いや、他に気の利いたキャッチをつけようがないのだ、このバンド。堂々としたミディアム・テンポと"最初はグー"と、じゃんけんの最初はフラットであり、暗に人と人は同等であることを示唆する「ピースする」。みんながチョキを出せばそれはピースになるという発明的な歌詞の構造は、歌をちゃんと聴かせる彼らだからこそ、その場でダイレクトに驚きや感銘に繋がっていく。"改めてウソつかないバンド、ウソツキです。今日は銀河鉄道に乗ってやってきました"という竹田(Vo/Gt)の挨拶からして、狐につままれた気分だ。ファンタジーだけでは済まない、"え? それウソじゃん"というツッコミも踏まえたうえでバンドはリスナーを巻き込んでいくのだ。中盤には10月7日にリリースする初のフル・アルバム『スーパーリアリズム』から、"僕らなりのダンス・ミュージックってヤツを作りました"と、「旗揚げ運動」を披露。あの"右上げて、左下げないで右下げない"的な、アレを下敷きにした歌詞は、指示通りに動くことの不自然さを体感させる、なかなか"やりやがるな"なナンバーなのだった。ラストはギターの吉田が鳴らすエフェクティヴなサウンドを"汽笛"に見立て、「新木場発、銀河鉄道」を演奏し、バンドもゆっくり軌道に乗り夜の闇に溶けこんで行った。彼らの発明をポップ・シーンの真ん中に投げ込んだら......相当楽しいことになるはずだ。

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