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LIVE REPORT

Japanese

PELICAN FANCLUB

Skream! マガジン 2019年05月号掲載

2019.04.13 @LIQUIDROOM ebisu

Writer 石角 友香

"僕ら自身がカルチャーになる"という気負いも含めた気概を、ライヴ経験、空間として立ち上げること。フロア・ライヴというスタイルそのものはこれまでもとってきた彼らだが、存在感を広げる今、冒頭の言葉はリアリティを増す一方だ。LIQUIDROOMのフロアにギター、ベース、ドラムが対峙するように中央に向けてセットされ、三方をスクリーンが囲むしつらえは、自ずとオーディエンスに参加意識を高めさせる。"ゼロ距離ライヴ"の名に相応しく、ファンの間を通って位置に着いた3人はメンバーと視線を合わせると同時に、360°からの歓声を浴び、宣誓のように「ハイネ」からスタート。エンドウアンリ(Vo/Gt)は筆者の位置からは後ろ姿しか見えないのだが、全身で歌とギターを連動させており、歌の表現の細部もよく通っている。3曲目の「アンナとバーネット」ではエンドウのアップをコラージュした映像が映し出される演出も。それにしても、メンバー全員の様子が見えないにもかかわらず、3人が息を合わせることで生まれるグルーヴが確かに伝わってくる。オーディエンスの表情も至近距離で見え、笑顔が目立つが静かに見守る人もいて、実に多様だ。

インダストリアルなノイズ・ギターの「説明」、エンドウの叫びが冴える「ガガ」、シミズヒロフミ(Dr)のタイトなビートがポスト・パンクの切れ味を加速する「VVAVE」あたりは洋楽の中でもエッジの効いたクールな音楽と共振してきたこのバンドのセンスを存分に感じさせるターム。ドリーム・ポップとシューゲイザーの融合が感じられる「朝の次へ」で聴かせるヴァースの美しさ、タイトルどおりミュートしたカッティングが醸すテンプレのアーバンっぽいサウンドとは異なる情景を立ち上げる「M.U.T.E」まで、ほぼノンストップで6曲を演奏し、このバンドの音楽的なレンジの広さとそれをライヴで自然に伝えられる現在の度量に感銘すら覚えた。エンドウが"新曲です"と紹介し、演奏したそれは硬質でクールなギター・サウンド。やはりとてつもなくレンジが広い。歌の普遍性や歌詞のユニークネスを「to her」や「ヴァーチャルガールフレンド」で表現し、ファンも思い思いに身体を揺らしたり歌ったりして、バンドに様々な感情やパワーを送り込む。メンバーが感知するものはメンバーのプレイや表情、そしてファンの反応、スクリーンの映像に加えて、その場で刻々と変化していく自分自身だろう。ファンと同じ目線で演奏することで生まれる"取り繕えなさ"がバンドの本質をあぶり出す。

終盤はどこかブリストル・サウンドを思わせるヘヴィネスをカミヤマリョウタツ(Ba)のイーブルな音色が作り出し、韻を踏むエンドウのトーキング・ヴォーカルも冴える「ハッキング・ハックイーン」や、名実ともに今の彼らの代表曲「Telepath Telepath」、塗り潰すようなシューゲイズ・ギターと、明るく開けていくサビの高揚感が同居するという、PELICAN FANCLUBらしい「ノン・メリー」、そして本編ラストは今の彼らのスタイルの原点であるアルバム『OK BALLADE』から、"大事なことは全て叫んだ"というサビが自然にシンガロングを巻き起こす「記憶について」でフィニッシュ。

アンコールではもう1曲の新曲を披露し、6月26日に新作『Whitenoise e.p.』のリリース、そして7月5日に地元 千葉LOOKでのライヴ開催も告知。今、彼らはひとつ大きなフィールドで戦える力を備えながら、"らしさ"を更新している。トータルでそんな感慨が残った。

[setlist]
1. ハイネ
2. Night Diver
3. アンナとバーネット
4. 説明
5. ガガ
6. VVAVE
7. 朝の次へ
8. Shadow Play
9. M.U.T.E
10. 新曲
11. アルミホイルを巻いて
12. to her
13. ヴァーチャルガールフレンド
14. ダダガー・ダンダント
15. ハッキング・ハックイーン
16. Dali
17. Telepath Telepath
18. ノン・メリー
19. 記憶について
En1. Luna Lunatic
En2. 新曲
En3. Esper

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