アルカラの「ぐるぐるムニムニ化計画」【第55話】

COLUMN

アルカラの「ぐるぐるムニムニ化計画」【第55話】

2022年09月号掲載

アルカラ

アルカラのベースシモガミです。

これを書いている頃はツアーの中盤から終盤にかけてである。
今のところ我々アルカラは元気にツアーに邁進しているのだが、ツアー先で我々に会う前に数組の対バンたちが流行り病に侵され共演できない事態がありながらも、なんとかツアーを完走しようとしている。
まだまだ我々は音楽をしっかり続けるつもりなので、みんな元気になってまた笑顔でライブハウスで会い、言葉で、そして音楽で語り合いたいと思う。それまでみなさん元気で過ごしましょう。

ところでこのツアーは20周年ツアーであり、タイトルは"産声"。
20歳というのは、かつては成人の年であった。（今年から変わりましたね）。まさに一人前としての産声をあげる年だ。
バンドとしても、生まれたての時から少しずつたくさんのことを経験し、やっと成人式だったのである。
幸い我らは新しいことに挑戦できているので、とても幸せなことだと思う。
産声の名に相応しい、新たな試みを随所に盛り込んだツアーである。
全て思い出深い土地で、濃い想いがあるのではあるが、その中で高松と神戸に関して少し書きたい。

まず高松は裸体という、今年の頭に出会った大阪のバンドと移転後初めて訪れた新生DIMEで。次の日神戸は閉店するわがホームART HOUSEの最終日でオーイシマサヨシとツーマンの予定が、オーイシキャンセルで高木誠司にピンチヒッターをお願いした。

まさに終わりと始まりは紙一重、2日間で様々な想いに駆られた。

裸体との出会いは鮮烈で、様々な共通点があった。ある意味アルカラ20周年の隠れたピースの1つであったのかもしれない。また何処かで話すと思うが、自身としては彼らからもらったものや刺激を受けたものはとても多く大きい。今後のアルカラに大きな影響を与える日だったと思う。
この日は楽屋で乾杯し、またの共演を誓い解散。

我らアルカラのホームのART HOUSEが閉店する最終日前日にオーイシの感染が確認され、結果これまた腐れ縁の高木誠司と。
アルカラの初ライブは確か高木誠司率いるnicotineheadのイベントであったのではないかな？
変な因果である。

高木誠司のライブが終わり、ステージに立った時様々なことを考えたのだけれど、結局よくわからなかった。
失ってゆくものに想いを馳せることに対して、得意な人間も不得意な人間もいる。自分はもともと振り返るのに時間がかかる性格なのだ。まだ時間がかかるらしい。そして、ライブ後見にきてくれたみんながあの場所を惜しみ、ずーっとずーっとART HOUSEの写真を撮っていた。客席からステージの景色は、アーティストより誰よりも、多く見てきた人がたくさんいたはずだ。みんなが別れ惜しんでいた。
その後フロアで打ち上げ。
みんな名残惜しそうに、そして笑顔で次に進んで行こうとする様がとても嬉しく、ある意味誇らしかった。
何事も終わり方が1番難しいものだと思う。

あの場所が無くなること、まだまだ実感が湧かない。もちろんART HOUSEで働いていた人、出演した人、ライブを見に来た人、経営する人、スタッフ、etc...
それぞれのアートがあって、それぞれの思い出があるだろう。みんな違うはずだ。メンバーの中でも多分全然違う。
まだまだわからないというのが正直なところだ。

新店PADOMAに行った時に失った大きさを知るのかもしれない。
バンドは続いても場所は無くなる。その大きさを感じて少しずつ実感して、また新たな歴史を作って行けたら......と思いながら、ツアーをしっかり駆け抜けてゆく所存です。

アルカラの初の日比谷野音が11月26日にあります。
たくさんのことを実感し、成長してその日を迎えたいと思います。
画像はアート最後の月に発売したタオル。
最初で最後のタオルを、閉店最終月に発売するとかなんか神戸ぽくていいなぁ。
しっかりART HOUSEを終わらせて、未来を見て、歩みを止めない店主昇平さんの背中を見ながら、まだまだ旅は続けてゆきたいと思います。

アルカラ

自称"ロック界の奇行師"。ギター・ロックやオルタナティヴなどの音楽性を基調としながら、ひと筋縄でいかない自由奔放さで唯一無二の世界を築き上げている。2013年に地元神戸にてサーキット型フェス"ネコフェス"を立ち上げ、以降毎年開催。2017年7月に初のフル・アルバム『KAGEKI』を、2019年12月に通算10枚目のアルバム『NEW NEW NEW』をリリース。2021年12月、2年ぶりとなる新曲「Dance Inspire」を配信。2022年7月からツーマン・ツアーを開催中。11月26日には初の日比谷公園大音楽堂でのワンマンを開催する。

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