Japanese
鶴×BRADIO "鶴フェス"座談会
鶴:秋野 温(うたギター) 神田 雄一朗(ウキウキベース) 笠井"どん"快樹(ドラム)
BRADIO:真行寺 貴秋(Vo) 大山 聡一(Gt) 酒井 亮輔(Ba)
インタビュアー:秦 理絵 Photo by 新倉 映見
-鶴とBRADIOを語るとき、今出た"ハッピー"っていうワードもそうですし、ファンクとかソウルっていうジャンルで語られると思うんですね。でも、アウトプットの形は結構違うじゃないですか。ふた組に共通のルーツはあるんですか?
真行寺:ルーツの話はしたことないですね。
笠井:BRADIOを始める前にはロックなことをやってたんでしょ?
真行寺:メロディックとかポップ・パンクとかも好きだったから、昔はそういうバンドをやってたんです。世代的にはGLAYとかをよく聴いてたんですよ。
秋野:俺らはTHE YELLOW MONKEYとかね。
-そこからブラック・ミュージックに寄っていったのは?
真行寺:もともと僕らは音楽が好きだったから、3人とも音楽の専門学校を出てるんです。それでファンクとかソウルに触れていくうちに今の形になったんですよ。ポップ・パンクとかをしてたバンドが解散しちゃったから、新しいことをやりたいよねっていう流れから自然とそういうモードになったんですよね。
-もともと鶴はTHE YELLOW MONKEYのカバーをやってたそうですね。
秋野:学生時代に共通で好きだったのは、THE YELLOW MONKEYでしたね。そこから俺は、パンクとかハードコア、ミクスチャーにいったんですけど、全員歌モノが好きだったんですよ。で、20歳を過ぎた頃にソウルとかディスコに出会って。そのときに初めてあの音楽が持つキラキラした雰囲気を知って、"あ、ここにあった"みたいな感覚になったんです。
笠井:すごく遅咲きだよね(笑)。
秋野:そう。小さいときから、音楽で胸がキュンとなる、あれはなんだろう? と思ってたんですよ。SMAPとかジャニーズも大好きで。あの祭りの最後みたいな切ない気持ちになる、幸せな空気はなんだろう? と思ってたものが、ソウル・ミュージックの中にあった。
笠井:昔からブラックな要素に惹かれてたり、山下達郎やJACKSON 5も聴いてたりしたのに、あのキラキラしたものの正体が何かわからなかったんですよね。
秋野:それをベースにしつつ、鶴のアウトプットはロック・バンドでしかないんですよ。
神田:だから、BRADIOと鶴は似てそうで違う感じがするよね。俺から見るとBRADIOはすごくブラックなんですよ。生粋のファンクではないけど、ファンキーな要素が濃い日本の歌うバンドっていう感じ。
笠井:俺らがやってるファンキーな曲は、よく聴くと16ビートじゃなくて、8ビートだったりするからね(笑)。BRADIOのほうがきっちりシャッフルしてる。
神田:俺らはざっくりしたロック・バンドだよね(笑)。
秋野:70年代のハード・ロック・バンドが、当時流行ってたディスコを取り入れました、四つ打ちの曲をやってます、みたいな。そういうテイストじゃないかな。
真行寺:それは、僕らも似てると思います。最初はファンクとかソウルを意識してやってなかったんですよ。ただ、みんなで"音楽で何をしたいんだろうね?"って考えたときに、音楽で楽しませたかったんですよね。それが、鶴が言ってた"キラキラ"に通じると思うんですよ。音楽とか言葉にするとファンキーになるっていう。だから、未だに"ファンクとは何か?"っていうのは、自分たちでもよくわかってないんですよね。
-要するに、鶴とBRADIOを語るときに、ファンクとかソウルはジャンルとして根底にあるけども、それよりも音楽が持つキラキラ感とか、胸キュン感とかこそ目指す場所っていう意味では、むしろ精神的なところが近いふた組なのかもしれないですね。
秋野:たしかに。やり方は違うけど、"みんなでこうなりたい"って目指してるところは同じなのかなっていう感じはしますね。
神田:BRADIOは、来てくれるお客さんのことを"ファンキーパーティーピーポー"って呼ぶでしょ? 僕らは、"ソウルメイト"なんですよ。結局ファンクとソウルなんです。
-鶴がお客さんをソウルメイトって呼ぶようになったきっかけはあるんですか?
秋野:自主レーベルを始めたときに、「ソウルメイト今夜」(2013年リリースのアルバム『SOULMATE』収録曲)っていう曲ができてからですね。ちょうど自主レーベルを始めたタイミングで、"自分にとって音楽ってなんだ?"っていうのを考えたんですよ。なんとなく自分の中で音楽自体が自分とソウルメイトの関係なんだろうなと思ってて。そういうことを書いた曲だったんですよね。
-なるほど。お互いのライヴを観たり、音楽を聴いたりして、"これだけは敵わないな"と思うところはありますか?
真行寺:いっぱいありますよ。
大山:鶴のライヴを観ると温泉に入ったあとの幸せな感じになるんですよ。しばらく浸かってから出ると、旅館の料理がバーッと出ててみたいな、あの幸福感(笑)。あれは、もう敵わないですよね。最後にすごく満たされるんです。それは日本で一番じゃないかなと思ってます。もちろんいろいろなバンドのスタイルがあるから、いろいろな正解があると思うけど、あの満たされる感じは鶴ならではだと思いますね。
秋野:温泉部門1位。
真行寺:2位以下が気になるけどね(笑)。
笠井:でも、それは当たってると思う。俺ら、バンドを始めたときから、ウキウキしたときとか、明日いいことがあるって決まってる日、好きな人に会う前とかみたいな、なんでもいいんですけど、このへん(胸)がムズっと気持ち良くなる感じを目指してるんですよ。で、それを"ウキウ菌"って言ってたんです。
BRADIO一同:あははははは!
笠井:"あ、今ウキウ菌が出た"って。それは、温泉に入って"最高だ~!"っていうときに出るやつですよね。
大山:で、温泉のあと旅館で瓶ビールとか飲むじゃない? 最後に夜も更けてきて、窓際に座って仲間と語り合うとちょっと泣ける。その感じも鶴にはあるんですよ。
神田:それはね、"切な菌"っていうのもあるから。
秋野:それが、うちのツートップ。
BRADIO一同:あははははは!
大山:あれは真似してできるものじゃないですね。観てると欲しくなるけど、模倣してできる感じじゃないっていうのはあります。
笠井:それは一緒だよね。BRADIOは、俺たちがやりたかったけど、クオリティ的に到底できないことをやってるんですよ。あんなにブラック・ミュージックの要素を再現できない。僕らがやってることは、なんちゃってファンクだから。
真行寺:いやいや、僕らも"なんちゃって"ですよ。
秋野:なんちゃっての精度ね(笑)。
笠井:俺らは、あれもこれもやりたくなっちゃって狙いを定めてやれてないし。あと真行寺君が操ったら会場が竜巻みたいになるじゃない?
秋野:ぶち上げるパワーがありますよね。エンターテイメントとしての完成度が、めちゃくちゃ高いんですよ。オーディエンスの楽しませ方が外タレっぽいというか。ライヴ中ずっと客席がざわざわしてるよね。隣にいる友達と"ヤバくない?"って言ってる感じ。あれを俺らのライヴでもやりたくて。
笠井:だからさ、たまに言うもんね。"しーんとすんじゃねぇ。ざわざわしててよ"って。
BRADIO一同:あははははは!
笠井:そこが完成されたエンタメじゃないんだよ。"ざわざわして"ってお願いしちゃう。
真行寺:それが鶴にしかできないエンタメですよね。
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