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INTERVIEW

Japanese

2025年05月号掲載

鶴

Member:秋野 温(うたギター) 神田 雄一朗(ウキウキベース) 笠井“どん”快樹(ドラム)

Interviewer:フジジュン

2023年に結成20周年を迎え、昨年は5年ぶりとなる地元での音楽フェス"鶴フェス2024"を開催。そんな大舞台を含めたライヴ活動やリリースをコンスタントに重ね、キャリアと実績を積み上げてきた鶴が、最新アルバム『スリーピース』を完成させた。中学校の同級生3人で結成し、今年で結成22年となる鶴。そんな3人組バンドの自信と矜持を込めた、最新型の鶴の歌やサウンドは温かく人間味に溢れ、説得力抜群だ。今作ができるまでの経緯や、今作に込めた思い、そして実に9年ぶりのアルバム・ツアーに挑む意気込みを3人に訊く。

-最新アルバム『スリーピース』を完成させた鶴。昨年には6月から9月に配信リリースした楽曲を集めたCD『カタカナ』もリリースしてますが、オリジナル・アルバムとしては2020年リリースの『普通』以来となります。

秋野:作品はずっと流動的に出してきたので、いざアルバムとなると"どうやるんだっけ?"みたいな感じもあって。これまでの流動的なやり方でアルバムにも臨んじゃったんで、時間がなくてカツカツだったんですが、だからこそそんなに構えず、アルバムを作り出せたかなと思います。

-アルバムを聴かせてもらって、3人にとって音楽やバンド活動が生活に欠かせないものとして、すごく日常と密接しているなと思って。だからこそ伝わる音や言葉、人間味をすごく感じました。

神田:最近メンバーでも話してるんですけど、"秋野さんが歌うと、普通のこと言ってんのになんか泣けてくるよね"って(笑)。

秋野:なんでもない言葉をいい感じに歌うのが俺の仕事だから(笑)。なんか、だんだんそういうバンドになってきた感じはあるよね。

-あはは。"ロックは生き様"みたいな話で、22年歌い続けてきたからこその説得力があるんだと思います。アルバムが完成しての感想はいかがですか?

神田:タイトルにも表れてますけど、今作は3ピース・バンドとして自信を持って出したかったので。レコーディング前、音に関してすごい話し合ったんです。そこで、"今まで出したものが納得いってないとは言わないけど、3ピース・バンドとしてもっと俺たちが鳴らしたい音の理想ってあるよね? ライヴでは鳴らせてる感じがするけど、音源ではまだそこに到達していないよね?"みたいな話をして。だから今回、そこをクリアしたいというテーマがあったんですが、ただきれいな音にしたいわけでもなくて、バランスを取りに行くでもなくて。ちょっとくらい凸凹でもいいじゃないとか、ちょっとぐらいグシャッとしててもいいじゃないとか。それぞれが自分の出してる音の理想っていうか、イメージがあると思うんで。すごく難しいですけど、それがちゃんと鳴っていてほしいなっていうのを目標として録り進めていきました。今回、それに一番到達できたのはドラムかな? と感じているんですけど、しっかり目標を持って挑んで、かなり近づけたと思うので、"スリーピース"のタイトルを掲げたアルバムとしてはバッチリだったと思います。

-サウンドに関しては楽曲ごとの色がありながら、どの曲も小細工なしの真っ向勝負で。3人の人柄が見えるサウンドになってます。

神田:今までミックスはこだわってきたんですけど、マスタリングってよく分からなくて。音の変化は分かるんですけど、"こんな感じでいいですか?"と聞かれても、"大丈夫......です"みたいな感じで、さらに良くするのになんて言って良いのかも分からなかったんです。でも今回はエンジニアさんとしっかり話をして、どんくらい音圧を出すとか、どんくらいレンジを広げるとか、そのさじ加減を曲ごとに変えることもできるし、ちゃんとやりとりしたほうが曲に合うマスタリングができるなということが分かって。そこも1つ成長できたところだし、納得の仕上がりになりました。

-笠井さんはアルバムできあがっての感想は?

笠井:今回、すごく時間のないなかではあったんですけど、アレンジ段階でアイディアがたくさん出てきたんです。ただ、すごくぼんやりしたもので、例えば「正解はないのだ」で"正解がないから、サビ終わりにグチャッとした感じにしたい"といった感じだったんですけど(笑)。アイディアを出していくなかでやりたいことがなんとなく伝わって、あっという間に形になった瞬間もあったりして。この3人で散々やってきて、腐れ縁も腐れ縁だけど、やっぱり頼もしいなと思えたシーンがいろんなところにちりばめられたので、そんなアルバムのタイトルが"スリーピース"っていうのもバッチリだと思うし、みんなに早く聴いてもらいたいアルバムになりました。

-"ドラムが一番到達できてた"と神田さんが言う、サウンド面はどうですか?

笠井:レコーディング直前にエンジニアさんと話をしてて、"ドラムのサウンドがなんか垢抜けないから、なんとかしよう"って試していて。スタジオ入って5~6時間やったときに、秋野君が"めちゃくちゃ力抜いて叩いてみたらいいんじゃない?"って言って、信じられないくらい小さい音で叩いてみたら"めちゃくちゃいいよ!"となって、"嘘でしょ!?"と。それが全部の正解じゃない気もするし、いろいろ試すなかで次はこうしたいって構想も浮かんできたので、すごく短いレコーディング期間でしたけどいい時間を過ごせましたし、ここから一気に成長できる階段が見えた気がしました。

-秋野さんはアルバムができあがっていかがですか?

秋野:アルバムの収録曲が出揃ったとき、"よし、リード曲ができた"みたいなものがなくて。これもいいね、あれもいいねって、MVを作りたくなるような曲がいっぱいあるなかで、「アイニードンデー」がインパクトもあったし、これが一番面白いものが作れるかな? ってところでMVの制作曲に選ばれたんですけど。今回は全曲が横並びというか、"どれが行ってくれてもいいっす"みたいな感じで、それが自然にできたのが面白いなって感覚がありますし、個人的には「ワイワイワールド」は1曲目にするつもりで作ったので、ちゃんと1曲目になって良かったです。

-普段はアルバムを作るとき、作品をリードするような曲ができて、そこから方向性が見えてくるみたいな感じなんですか?

秋野:場合によりますが、次の目標となる、鶴の真ん中に置いておける楽曲がリードになりがちというか。過去で言うと、"鶴フェス"をやるにあたって、そこに向かっていく気持ちと"今の鶴が表せてる曲だよね"ってところで「バタフライ」(2019年リリースのEP表題曲)があったりとか。


神田:そういう意味では今回、"このアルバムと言えばこの1曲"って感じではなくて。『スリーピース』っていう作品自体がリード・アルバムみたいなイメージかもしれないね。

-今回、アルバムの取っ掛かりといいますか、曲作りの行程としてはどんな感じで進んでいったんですか?

秋野:1曲目から順番通りで「ワイワイワールド」~「スライダー」あたりからプリプロを始めて。「アイニードンデー」は最後の最後、"ちょっと曲が足りないね"と追加で書いた曲だったりしたんですが、やっぱり「ワイワイワールド」や「スライダー」でサウンドの方向性とか、今作の勢いみたいなものが付いた気がします。曲の作り方としては、ここのスタジオ(※鶴のプライベート・スタジオ)を使うようになってから、コンスタントに作れるようになってきて。ギターも歌もここで1人で録ったので。ここ数年前からやってる、そんなやり方のいいところも出せたかな? と思ってます。

笠井:僕は"4 シリーズ"って呼んでる、2022年の47都道府県ツアー("鶴 4周目の47都道府県ツアー「4」")中に出した4枚のミニ・アルバムがあって、その辺から"鶴フェス"に向けて、2曲ずつ出す企画があったり、全部がライヴに向かった作品作りというモチベーションになっていったんですが、"鶴フェス"に向けた曲作りをしてるあたりで、"そういう曲ばかりだとお腹いっぱいになっちゃうな"と考えるようになって。もっと日常とか恋愛とか、そういう曲を出したいという気持ちが個人的にはあったし、アルバムを出すとなったとき、アルバムって振り幅を付けられるものだと思うので。幅があればある程面白いなと考えてたし、単純に"曲がいいな"と思えるものを突っ込みたいという気持ちがありました。