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INTERVIEW

Japanese

2025年05月号掲載

鶴

Member:秋野 温(うたギター) 神田 雄一朗(ウキウキベース) 笠井“どん”快樹(ドラム)

Interviewer:フジジュン

僕等は普通に3ピースって状態が、今の鶴でやりたいことだなと


-その辺がまさに僕の感じた"生活に密着してる"って印象に繋がるんだとも思うんですが、例えばロックンロール・ナンバーの「アイニードンデー」の後にチルな「ミッドナイト」が入ってて、すごく落差があるのに違和感なくスッと入ってくることも不思議で。

神田:同じバンドがやる曲じゃないのにね(笑)。そこもアルバムならではで、落差も楽しめるってところはあるかもしれないですね。

秋野:僕もアルバムだからこういう曲を書きたい、こういう曲を書かなきゃみたいなものに追われず、日々思い付いたものを書き留めておいて、それが広がったぐらいの感覚があります。笠井君の書く歌詞はポエムっぽいので、ファンはそこの落差を楽しんでくれてる感じもあると思うし。

-うん、そこがすごく心地よいです。それに加えて「ワイワイワールド」なんかは"スリーピース"のタイトル通り、3人でバンドを続けていく意味とか理由を再確認する、そこまで大仰じゃない覚悟みたいなものを感じたり。

秋野:僕はもともと突飛な歌詞とか、超絶フィクションみたいな歌詞が書けなくて。基本的にはありのままの自分の状況と気持ち、願望くらいしか書けない。それをどうにか伝わるようにって気持ちで書いてるので。「ワイワイワールド」とかもタイトルはふざけてますけど、歌詞は意外と泣けるというか。20年やってきた、今のこの状況や言葉が鶴なりの1つの答えなんだろうなって。人がどう思おうと、売れようが売れまいが、これが1つの答えで。そんな覚悟というか、矜持みたいなところが入ってるのかもしれないです。こういうジャジーでスウィンギンな曲も久々にやったし、そういうものでスタートする面白さもアルバムだからできるし。軽快だけどしっかりした鶴のメッセージが乗ってて、1曲目にぴったりだったのかなと思います。

-アルバム・テーマみたいなものは、だんだん全体像が見えてきてからだった?

秋野:テーマは最初、なかったですね。タイトルが出てから、タイトルを通して自分の中で意味付けをしていったような気がして。まだ曲が出揃ってもいないときに、"タイトルどうする?"って話をして、神田君が"「スリーピース」どう?"って言って、なんの異論もなく決定した感じで。

神田:大きな意味で、"今の俺たち"でいいんじゃない? と思って。表記を変えたり、いろいろ言ったんですけど、"カタカナが分かりやすくていいんじゃない?"って、すんなり決まった感じでした。"鶴フェス"もそうだし、野音(日比谷公園大音楽堂/"結成20周年記念 鶴の野恩返し 〜みんなにワイワイお祝いしてもらう会〜")もそうだし、ここぞというライヴもいつも通り3人で挑んできたので、そこが鶴っぽいなと思って。大きいライヴだと鍵盤入れたり、ゴージャスにしがちですけど、僕等は普通に3ピースって状態が、今の鶴でやりたいことだなと思ったんで。これでいいんだと思いました。

-では、"スリーピース"というタイトルはそんな自信の表れでもあるんですね。

神田:自信というか、"俺たちはこれっす"っていう開き直りに近いのかもしれない。開き直ったやつって結構、最強じゃないですか? 最近で言うと"風呂キャンセル界隈"みたいな? "風呂入らなくてもいいっす!"って言われたら、何も言えないじゃん。

秋野:別にいいけど、臭くなってダメージ食らうの本人だし。周りが"やめて"って言っても気にしないような開き直りはすごく迷惑だし。俺は気を使っちゃうタイプだからできないけど(笑)。

-わはは。たしかに秋野さんの歌詞からは"決して順風満帆ではなかったけど、それでもやってきたじゃない"と、"これが俺たちだから、迷わず行こう"みたいな、まさに開き直りに近い前向きさをすごく感じて。そこに強さや説得力を感じるし、勇気を貰いました。

神田:長く続けてること自体が、1つ必殺技というか、武器というか。すごい技の出る剣を持ってるとか、かめはめ波を出せるのと同じくらいすごい武器だと思うんですよ。だからまぁ、"続ける"という武器が1つあればいいかな? っていう......やっぱり開き直りですね(笑)。

-では、今作でお気に入りの曲、ライヴで鳴らすのが楽しみな曲を聞かせてください。

秋野:僕は「曖昧ダーウィン 〜I.M.D.W〜」ですね。これは久々に鶴が音楽で遊んで、アホできるなっていうのが見える曲で。"「Y.M.C.A.」みたいなのやろうよ"って言ってたんですけど、"アァ~イ!"ってスタジオで1人で試しに録って、1人で聴いたらめっちゃ良くて、すごい手応えあって(笑)。ライヴでみんなで盛り上がって、多幸感を目指したいなって感じの曲になったし、楽しいだけじゃ終わらない、なんかグッとくるという、鶴の強みが出せた曲だと思います。

-アルバムも「ネバーエンド」でなく、この曲で終わるのがすごくいいです。

神田:そうなんです。グッときた後に、ちょっとおバカだけど泣けるみたいな気持ちで終わるのが鶴っぽいなって。で、また「ワイワイワールド」にループしていくっていう。そこは秋野君が勝手にやったことだったんですけど。

秋野:そう。ギターを重ねる段階になったら、全部こっちの仕事なんで。勝手にやって、みんなは完成形を聴いてから"え、こんなになったの!?"みたいな(笑)。

神田:俺たちは半分メンバー、半分リスナーみたいな感覚だから(笑)。じゃあ、僕はベース的な観点で1曲挙げると「ワイワイワールド」かな。ウォーキング・ベースみたいなのは結構苦戦しました。ジャズマンじゃないので、それっぽくはできるんですけどもっとハマるのがあるだろうなと思いながら録っていったのと、「ミッドナイト」の1番が静かな感じで、"ちょっとベースがはみ出してもいいよね"みたいなアイディアがあって。録るときにいろいろ試した中で、自分の中でも"これくらいがいいな"と思ったはみ出方が採用されたのですごく気に入ってるのと、後半のCメロっぽいところの"25時~"ってところのPIZZICATO FIVE感がお気に入りです(笑)。

笠井:俺はやっぱり「ネバーエンド」かなぁ? エンジニアさんが「ネバーエンド」を最後にミックスしてくれて、"この曲ヤバいよ。夜中に1人で泣きながらミックスしたよ"って(笑)。これ、ライヴ後半にみんなに歌ってほしいなぁ。最後のコーラスのところを、みんなで一緒に歌ってくれたら嬉しいですね。

-そして6月からは、実に9年ぶりとなるアルバム・ツアー"鶴TOUR2025「アルバムツアーって、なんだっけ?」"がスタートします。

秋野:"アルバムツアーって、なんだっけ?"というタイトルなんで、やり方を忘れてて、アルバムの曲をやらないって可能性もありますが(笑)、ライヴで育っていくだろうなって曲が多い気がするので、ツアーでお客さんとのやり合いも成長していくと思いますし、ツアー以降もライヴの定番になるような曲が多くあると嬉しいなと考えてます。ぜひ遊びに来て、一緒に騒いでもらいたいです。

笠井:僕はすでにセトリを勝手に考えてニヤニヤしたりしているんで、ツアーが楽しみで仕方ないです。アルバムの新曲もやりながら、ツアー中にどんどん変わっていくのか?

秋野:それともアルバム・ツアーだから、1つのセトリで完成度を高めていくのか? だよね。47都道府県ツアーとかセトリ変えまくってるから、固定のセトリでやるのに俺たちが耐えられるのか? というのもあるけど(笑)。

神田:この間、ライヴで「アイニードンデー」を初出ししたらめちゃくちゃ反応良くて。新曲ってこっちも緊張感あるし、演奏的にも慣れてないんで"まぁまぁ"みたいに終わることが多いんですけど、「アイニードンデー」はやってて楽しかったし、手応えもあって反応も良かったので、"俺たち、ライヴで新曲やるの上手くなったんじゃないの?"みたいに思ってて。ツアー初日なんて初出しの曲ばかりですけど、なんか上手くできるだろうなという気がするし、新曲をやるのも楽しみです。

秋野:すげぇな、その自信! 僕は正直、いっぱいいっぱいです(笑)。