Japanese
鶴
2014.10.04 @代官山UNIT
Writer 蜂須賀 ちなみ
"WE ARE SOULMATE"
ステージ後方に掲げられた幕を眺めながらボンヤリと考えてしまった。メンバーは中学時代の同級生3人。昨年には自主レーベルSoul Mate Recordを立ち上げ、その第2弾となるアルバムはゲスト・プレイヤー等を一切招かずに3人だけでレコーディングをしたという。この幕は前回のツアー時から掲げられているらしいが、そんな情報を鑑みれば、黒背景に白字で書かれたその言葉に重みを感じた。"バンドとは一種の運命共同体である"という事実を真っ直ぐ突きつけられているようで。しかしひとたび音楽が始まれば"鶴ってそんなバンドじゃないよね"ということを思い出すだけだった。"そんなの考えすぎじゃーい!"と言われ、肩に乗ったおもりをポーイと投げられたかのように、ジワッと温かくピースフルな世界がそこに広がれば、鶴ワールドの始まりだ。最新アルバム『Love & Soul』を引っさげたツアー"鶴TOUR 2014 「Love & Soul ~愛と魂、時々エロス~」"の初日公演、代官山UNITでのライヴもまたそんなものだった。
金髪に染めた秋野温(Vo/Gt)の姿にフロアから驚きの声が上がった登場シーンを経て、『Love&Soul』収録曲の中に「夏の魔物」などの旧譜曲を織り込みつつライヴを進めていく。新譜曲、旧譜曲の違いがいい意味で感じられないような、緩やかな流れのセットリストだと思ったが、それはつまり、鶴というバンドが歌ってきたことは一貫しているという事実の象徴といえるだろう。"エバーグリーンなソウルフル・ソング"(MCでの秋野の言葉より)は最新作に収録されている楽曲に限らず、なのだ。秋野から"四つ打ちも好きだけどあれがすべてではない!"と言葉が飛び出したあとに、鶴流のパーティー・ソング「Life is Party」に突入する場面もあったが、ゆったりとしたテンポ感のなか、ソロ・プレイでオーディエンスを沸かせたり、コール&レスポンスに興じたりしている3人。中音域の秋野の歌声が聴き手ひとりひとりに寄り添っているかのように感じるのは、彼が一言ずつ丁寧に聴き取りやすく歌っているからだろうか。リズムを口ずさみながら軽快な低音を繰り出す神田雄一朗(Ba)は本当によくフロアを見ているし、笑顔全開の笠井快樹(Dr)とのコーラスはとても綺麗だった。分かりやすい超絶技巧を含んだプレイがあるような派手な演奏では決してないけど、楽曲それぞれの真ん中にある"歌"をストレートに伝えるようないい演奏といい歌声が和やかな空気を生み出しているような、とても居心地のいい空間。アルバム制作やリリースを通して、結局自分たちの音楽のなかにあるのは"愛と魂"だということを実感したのだとすれば、このツアーはその事実を、オーディエンスと共に分かち合うような、顔と顔を突き合わせて確かめ合うような場になるのかもしれない。そんなふうに、これから先も続いていくツアーの光とも言うべきものが感じられるようないい初日公演だ。
そして終盤、"このアルバムはライヴでやるとこういうふうになるんだなあ......"とツアー初日ならではの感慨を漏らす秋野。"自主レーベルを始めて、自分が動かなきゃ何も始まらないっていう状況で、好きになってもらうには好きにならなきゃってことを考えていたらこんなアルバムができました。みんなに響いて、生活に入り込んでくれていたら嬉しいです。俺たちは例えば今日つらいことがあったとしても明日には笑っていられるようにしていようと思ってる。みんなもそんな空気に触れていたらきっと楽しくなるよ"。そんな彼の言葉に会場が温かい拍手に包まれたのだった。終演後に見上げた"WE ARE SOULMATE"という言葉が少し違った顔をして見えた。ライヴハウスに足を運んでくれた"あなた"のことを"WE"という一人称で以て"ソウルメイト"と呼びたい――そんな言葉に今度は胸がじんわり温かくなる。人同士は全部が分かり合えるわけではないけど、分かり合える分量が増えることで変わる何かがある。新たに出会える感情がある。そう信じてやまない彼らによる、"WE"の輪を広げていくようなツアー。11月30日、HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3公演まで続いていくこの旅に、そんな素敵な可能性を感じた。
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