Japanese
BRADIO
Member:真行寺 貴秋(Vo) 大山 聡一(Gt) 酒井 亮輔(Ba)
Interviewer:山口 智男
BRADIOが2年9ヶ月ぶりにフル・アルバム『Joyful Style』をリリース。ぐっと幅を広げた前作『YES』 から一転、今回はぐっとファンクに絞った印象だ。アルバムを作りながら、今一度、"BRADIOとは?"と自らに問い直した実感がメンバーたち自身にもあるようだ。その答えこそがタイトルに掲げた"Joyful Style"。そこに辿りつくまでの葛藤を含めた、様々な思いをメンバーたちが語ってくれた。コロナ禍の中でひと皮剝けたバンドの姿をメンバーたちの言葉から実感してほしい。
-3月30日に行われた東放学園×Eggs 主催の無料配信ライヴ"LOVE! LIFE! LIVE! ~SPRING SPECIAL~"では、セットリストに物語性を持たせるという新たな試みに挑みましたね。
真行寺:なかなかライヴができないなかで、何か新しいことをいろいろやってみようというところから、そういうアイディアが出てきたんです。そういうライヴをずっとやっていこうってことではなくて、毎回テーマを決めたり、コンセプトを設けたりしてやっていったら面白いんじゃないかと。30日のライヴは無観客の配信ライヴだったので、無観客ならではのライヴの見せ方ができないかなというところで、ひとつのストーリーを作って、そこに曲を当てはめるライヴをやってみたんです。僕らBRADIOはコール&レスポンスをはじめ、お客さんとコミュニケーションを取ることをライヴでは大事にしてきたというか、好きだったから、無観客となったとき何もできないと思っちゃったんですよ。だからこそ、マイナスをプラスにするようなことが何かできないかってすごく考えて、今回はそういうライヴをやってみました。
酒井:セットリストもおとなしめだったんですよ。
-それは無観客の配信ライヴだからこそ?
酒井:そうです。コンセプトとして海の底の深い暗闇から上がっていって、港に着いてそこからドライヴしてという夜のイメージもあったので、いつもとは違うエンジンの掛かり方ではあったんですけど、自分たちもそういう画を思い浮かべながら演奏するっていうのは、それはそれで面白かったというか、自分たちも楽しめたところがありましたね。観た人も、"今日は大人BRADIOなんだ。いつもとは違う感じで良かった"と思ってくれたようなので、新しい一面を見せられたと思います。
-じゃあ、これからもライヴでいろいろなことを試していこう、と?
真行寺:他にもアイディアはいろいろあるので、ライヴごとにハマるものをどんどんやっていこうと思っています。もちろん、いつも通りのライヴもやりながらですけど、基本BRADIOってまず自分たちの中でコンセプトが固まってないと、なかなか乗り切れないところもあったりするんで、そういう意味でもコンセプトをばちっと一回一回決めていくのはいいと思うんですよ。しかも、祭りみたいにはっちゃけたり、大人っぽい感じにしてみたり、そういう振り幅の広いことができるバンドだと思っているので、コンセプトをより強めていきたい。それがBRADIOに一番合っていると思うし、僕らの気持ちも入りやすいんです。
-なるほど。コンセプトをばちっと決めないと乗り切れないとおっしゃいましたが、今回の『Joyful Style』は、バンドとファンの関係を祝福した1曲目の「Time Flies」から、10曲目の「アーモンド・アーモンド」まで、抜き身のBRADIOというか、BRADIOそのものというか、今一度、BRADIOの芯の部分を際立たせてきた印象がありました。コロナ禍の2020年を経て、今回のアルバムを完成させた心境をまず聞かせていただけないでしょうか?
真行寺:僕らはいつもアルバム・タイトルを最後に決めるんですけど、コロナ禍で思うようにライヴができなかったぶん、制作がすごく楽しかったんです。憂さ晴らしって言ったらちょっと違うんですけど(笑)、音楽ってやっぱり面白いなって再確認する時期だったとすごく感じていて。今までがそうじゃなかったわけではないんですけど、今回改めて、これこそが自分たちにとっての歓びのスタイルだと思えるものができたと思います。
大山:もともと、2019年の段階では(アルバムを)2020年に出そうということで計画していたんです。2020年が結成10周年というタイミングでもあったので。ただ2020年の年始のツアー("BRADIO 10th Anniversary Hall Tour")が途中でストップしちゃったり、その流れで組んでいた様々な計画が全部なくなったりして、2020年の上半期に関しては、空っぽになっちゃったところもあったんです。ライヴができないんだから、制作しなきゃという気持ちではあったんですけど、何を制作したらいいんだろうって。今までだったら、みんなで顔を合わせて、マインド的な部分を共有しつつ、実際音を出しながら見えてくるものを探っていくっていうパターンが多かったんですけど、みんなで会えないってなったときに貴秋と亮輔が何を考えているのかわからない。でも、だからってどうコミュニケーションを取ったらいいんだろう。電話とか、照れるんですけどみたいな(笑)。"電話してもいい?"って改まるのもなぁっていう謎の時期が多少あって。結局、その時期にそれぞれが自分や、自分が置かれている状況に向き合う時間を経て、アルバムをしっかりと作っていこうというタイミングになったときに、本当に歓びを感じることってなんなんだろうって全員が考え始めたんですよ。音も歌詞もそうですけど、それがひとつ形になって、発信できるところまで持ってこられたっていうのは、シンプルに嬉しい。ぜひ聴いてもらいたいです。今まで以上に、そう思えるアルバムというか、"僕たちってこれだな"って手応えはすごくありますね。
酒井:正直、2020年は結構つらい時期もあって。でも、考えてみれば2020年だけじゃなくて、これまでバンドをやりながら悩んで乗り越えてきたわけだし、これからもその繰り返しだと思うんですけど、その先の歓びとか、楽しさとかが忘れられないからやっているんですよね。今回も、それを思ったし、その思いがこれまで以上に反映されたという実感はあります。"Joyful Style"ってタイトルもほんとにバチコーンとハマったと思います。聡一も言いましたけど、今のBRADIOを聴いてほしいですね。
-顔を合わせることができないなかで、どんなふうに気持ちを共有していったんですか?
大山:結局のところは、態度で伝えていくしかなかったというか、いっぱいネタを出してそれに対するふたりの反応を見ながらですよね。誰かのアクションに対する誰かのリアクションが連鎖して、それを広げていくような感覚が出てきたときが、制作モードに入った瞬間だったのかなと思います。以前は、実際に顔を合わせる時間がいっぱいあったぶん、距離ができたことによって、どうしたら貴秋と亮輔は僕に魅力を感じてくれるんだろうかって考えるようにもなって。今回のアルバムの制作に関しては、それも良かったんじゃないかなと思います。
-そのなかで、アルバムを制作するきっかけになった曲というのはあったんですか?
大山:それを言ったら、「愛を、今」かな。
真行寺:それを作った合宿ぐらいの頃から始まったんだよね。
酒井:2019年の秋に47都道府県ツアー([47都道府県ツアー "IVVII Funky Tour"])が終わって、その翌月に山梨に制作合宿に行ったんですよ。そこで、「愛を、今」の元ネタができて、それを形にしていったらチームのみんなからの評判がすごく良くて、じゃあリード曲にしようってなっていったんです。
大山:ただ、合宿の段階ではまだ、"いい感じのバラードだよね"みたいな感じではあったんですよ。それが去年の時代性というか、そこで貴秋が感じたことや、考えたことを最終的に乗せたことによって、今回のアルバムのタイミングでしかできない曲になったと思います。歌詞を書くうえで、貴秋的には一番苦しかった曲だと思うんですけど、最初の予定どおりこのアルバムを去年出していたら、こういう感じにはなってなかった気がしますね。
真行寺:たしかにそうだね。
大山:そういう意味でも、「愛を、今」はアルバムの中でも主軸になっている曲なんじゃないかなって思います。
-2019年の合宿でできた曲に歌詞を乗せたのは、2020年に入ってからなんですね?
真行寺:そうです。歌詞の根底にある暗闇で小さな光を見つけるというテーマは、僕の中で一貫してあるので、現在の歌詞の片鱗は最初からあったんですけど、そこから進まなかった。曲が良すぎて、歌詞が追いつけないみたいな感覚があって、同じぐらいいいと思える歌詞が欲しいと悩んでいた時期がしばらくあったんですよ。「愛を、今」だけじゃなくて、全体的に今回、コロナ禍で家にひとりでいる時間が多かったので、やっぱりできあがってみたら個人的というか、内省的というか、今まで以上に自分と向き合った歌詞が多いですね。密室ファンクじゃないですけど、SLY & THE FAMILY STONEっぽい、すごく内に入った作品になったんじゃないかな。「愛を、今」に関しても、最後の最後まで、なんやかんやがありましたね。僕はタイプとして自分をあまり出したくない人間なんですよ。だから、自分と向き合うのもイヤだし、自分を暴かれるのもイヤだし。そういう意味では、自分にウソをついて生きてきたのかなとも思うんですけど、そういうところをなかなか歌詞に落とし込められなくて。僕にとって作詞って基本、自尊心が砕かれる作業なんですけど(苦笑)、その中でもそういう弱い部分とか自分の内に秘めたものとかを出せば出すほど、メンバーや、スタッフから"いいね"って言われるんですよね。今までだったら。"なんで!?"ってなってたと思うんですけど、今回は「愛を、今」をはじめ"そうなんだ!"と感じて、思いきって自分を曝け出してみたんです。
-その「愛を、今」の歌い出しで、"愛をうけとれよ こんな自分だけど"と歌っていますが、これまでは愛を受け取る資格が自分にはないと思っていたということなんでしょうか?
真行寺:そういう思いはありますね。周りと比べてしまいがちなところが性格的にはあるし、自分をなかなか好きになれないところも結構あります。
-これまではそういう部分を隠していた?
真行寺:隠していたわけではなくて、今回はいつもよりも自分の中にあるものを表現してみたってことです。こんな自分もいますよみたいな部分を出せたのは、周りの人にも伝染してほしいというか、自分をもっと許してあげてほしい......って言うと、上からみたいになっちゃいますけど、反面教師にしてほしいという思いがあって、それが伝わったらいいですね。そういう意味で、寄り添えるような曲になったのかなと思います。最終的に自分の人生を考える、哲学するのは聴いた人自身なので、その入口というか、この曲が聴いた人にとって、自分のことを考えるきっかけになったらいいなって思いはすごくあったから。だからこそ、僕のほうから自分を出さないと、聴く人も壁を取っ払えないのかなって。それで、僕のほうからどーんと壁を壊して、裸で来ました。じゃあ裸になろうよと(笑)。そういう感覚です。
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