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INTERVIEW

Japanese

BRADIO

BRADIO

Member:真行寺 貴秋(Vo) 大山 聡一(Gt) 酒井 亮輔(Ba)

Interviewer:山口 智男

-そんなところも含め、抜き身のBRADIOだと思うのですが、おふたりは「愛を、今」の歌詞については、どんなふうに感じていますか?

酒井:(真行寺は)レコーディング中も書いていたというか、レコーディングがちょっと押したぐらいギリギリまで時間をかけて歌詞を書いていたんですけど――

大山:己をめちゃめちゃ削ってんなぁって思いました(笑)。

酒井:完成した歌詞を読んだとき、最初に書いていたものと全然違うというか、伝えたいことは一緒かもしれないけど、伝わり方が違ったんですよ。リアリティも含め、よりいっそう出汁が濃くなった印象がありました(笑)。歌入れに立ち会いながら、うわ、すごい歌が録れているという実感もありましたね。

大山:貴秋が歌詞を書きながら葛藤している姿を知っているからこそ、僕らにとっては、より愛おしい曲になりましたけど。エンターテイメントとは真逆の方向の、パーソナルなものをストレートに、オブラートに包まずに届ける曲になったので、聴いてくれた人の立場、思い、哲学によってはまったく違う曲に聴こえるんじゃないかな。でも、それは貴秋が裸でぶつかったからこそ。聴いてくれた人の中には僕らと同じくらい、この曲を大切に思ってくれる人もいっぱいいるんじゃないかなと思います。

-ところで、前作の『YES』(2018年リリースのメジャー1stフル・アルバム)はぐっと曲の幅が広がった印象がありましたが、今回の全10曲は改めてBRADIOなりのファンクを追求しているという意味で、逆にぐっと絞った印象があります。

大山:方向性を決め打ちで作った感じではなかったですね。これまでのアルバムは聴き飽きないような作品にしたかったし、自分らも欲張りだったから、意図的にバラエティ豊かに作った部分もあるんですけど、今回はコロナ禍とは関係なく、肩肘を張らなくなってきたところがあるのかな。いい意味で、自分たちにできることを把握し始めたというか、もちろんその他の可能性を見なくなったわけではないんですが、これはいいけど、無理があるってことが理解できるようになったというか。ちゃんとフィットするものをわかったうえでの選曲だったんじゃないかなと思います。やりたいことや、チャレンジしたい要素は入っているんですけど、その中でもよりしっくりきたものを、いや、しっくりこないものを、今までよりも捨てられるようになってきたところはあるかもしれないです。

-とはいえ、曲ごとにいろいろトライしていますよね?

大山:そうですね。曲をいかに面白く仕上げるかってことに関しては、これまでと変わらないです。BRADIOは、最初のデモの段階で見えたものをきれいに整えていく作業が、あまりできないバンドなんですよ。むしろ最初のデモが、みんなのフィルターを通ったことによって全然違うものになるんですけど、そこで3人が面白いと思えば、このバンドにしかできないサウンドになっていくという自負はあります。実は今回、今まで以上にデータのやりとりが多かったんです。今までは音プラス会話というか、"今の、何それ? 亮輔、もう1回弾いてよ"みたいなところで広げていっていたんですけど、今回はデータを投げ合いながら、説明の文章も加えたんですよ。それがめちゃめちゃ難しくて(笑)。結局、文章じゃ伝わらないから、聴きながら想像するしかなかったんですけど、"亮輔はきっとこういう考えでこのベースにしているんだろう"とか、"貴秋はなんでこういうメロディを乗せてきたんだろう?"とかって考えるのが面白かったですね。それが今回の楽曲の面白さに繋がっているところはあると思います。

-データのやりとりが多かったのは、コロナ禍で会えないから?

大山:そうです。1曲目の「Time Flies」は、原案のトラックは僕が作ったんですけど――

真行寺:かっこ良かったよ。

大山:そう、かっこ良かったから(笑)、"貴秋さん、何か歌ってみてください"って投げたら、全然捉え方が違って(笑)。そもそもキーの概念が違ったんですよ。でも、それが面白くて、最初聴いたとき何を歌っているんだろうと思ったんですけど、そっちのほうが面白いぞって、トラックのキーを変えたら、すごくハマったんです。本当はむちゃくちゃなんですけど、僕にはできない発想が面白いと思いました。たぶんスタジオだったら、歌い出した時点で、"キーが違うよ"って終わってたんじゃないかな。

-「Time Flies」で酒井さんはシンベ(シンセ・ベース)を弾いています?

酒井:聡一が作ったトラックはシンベだったんですよ。でも、これまで生のベースでやってきて、ここで急にシンベを弾くっていうのは違うなと思って、できるだけ生のベースでシンベっぽい音に近づけたんです。

大山:そのくだりに関しては、ほんと僕が悪いと思うんですけど、ベースもちょっと弾けるから、デモを作るときに自分でベースを弾くこともあるんです。でも、「Time Flies」のデモは、めんどくせぇなと思って(笑)。

真行寺:言っちゃったよ(笑)。

大山:シンベで打ち込んでおいたら、あとは亮輔がなんとかしてくれるだろうって送ったら、すげぇ真面目だから僕がシンベでやりたいんだろうと想像して、でも竿にこだわりたいしと葛藤しながら一生懸命やってくれたんです。結果的にそれが良かったんですけど、一生懸命やってくれているところを見ながら、ヤベっ。そういうつもりじゃなかったんだけど、どうしようって思いながら止められなくなっちゃって(笑)。

真行寺:でも、考えようによっては、そういう無茶ぶりがアイディアを引き出すきっかけになるんですよね(笑)。

-そうですよね。結果的にベースの音色が際立ちましたから。

大山:そうですね(笑)。

酒井:いや、そんな苦労したわけでもないですけどね。今回のアルバムは、もう料理が完成されているところに、ほんのちょっと塩加減どうするかぐらいの感覚でやっていったところがあって。それが海の塩なのか、岩塩なのかってぐらいの作業をひたすらやりました。データのやりとりも含め、それはコロナ禍だったからこそなのかな。それが自分の中で成長に繋がったし、すごく楽しかったですね。

-大山さんのギターも曲ごとに曲に相応しい、様々なプレイや音色を使い分けていますね。

大山:自宅で作業する時間が増えたことが大きいです。これまではツアーや、誘われたイベントがあって、そのリハーサルもあってというなかで制作していたものが、"はい。制作しかやることないです。どーん"となると、これといって他に趣味もないから、機材も含め、今まで考えなかった部分までアプローチしてみる回数を増やせたんですよ。もちろん、今までも考えていましたけど、さらに時間がかけられたんです。そういう意味では、音色に関しての自分の中の壁はひとつ越えられた手応えはあります。

-そんななかで真行寺さんはヴォーカリストとして、どんなチャレンジがありましたか?

真行寺:ヴォーカリストとしては、今回、まったく考えてないです(笑)。考える余裕もなかったですね。それぐらい歌詞を書くことに時間をかけてたので。それぞれの歌詞の世界観は声で表現しつつ、メンバーやチームがディレクションしてくれたので、そこでいいものを探ってという感じでした。ヴォーカリストとしてと言われると、何もしてないかもしれないです(笑)。

大山:何もしてないってことはないと思うけど(笑)。

真行寺:いつもそんなに気張ってないんですよ。この曲だから、こんな声を出してみようとか、こういう気持ちで歌ってみようとか。自分で歌詞を書いているから、流れもわかってはいるんで。だから、今回も特に。そういう意味では、歌詞の流れのまま行けたのかなとは思います。

-今日、お話を聞いて、バンドとしてまたひと皮剝けたんじゃないかと感じましたが。

大山:アルバムを作るって行為そのものがバンドにとって大きい1ページになるじゃないですか。毎回毎回、そこを通り抜けることによって、自分たちがバンドとしてアップデートされる感覚はあるんですけど、いつもだいたいそのあとツアーして、ツアーが終わったぐらいの頃に実感が来るんです。だから、今はそこまでの到達した感じはないんですけど、それでも、やっぱり完成した作品を聴くだけでも去年の僕たちと違うとは思います。何が違うのか、具体的にはわからないですけど、何かしら確実に変化が起きたことは間違いない。ライヴしながら何が変わったのかを感じるのかなとは思っているんですけど、なんかいい予感がしてますね。このアルバムに関しては、特に。

-BRADIOらしさを改めて楽しませてもらいつつ、新たな扉が開いたようなところもあって、今後がさらに楽しみになりました。最後に、6月に東名阪で開催するリリース・ツアー"Joyful Style Release tour 2021~止められないファンクネスを、今~"の意気込みを聞かせてください。

真行寺:会いたい人に会えなかった鬱憤を晴らしに行きますと言ったらちょっと違うんですけど。僕たちが大事にしてきたコミュニケーションがこれまでと同じように取れないとしても、冒頭で言ったようにライヴのコンセプトをもっと突き詰めて、練り上げて、新しい見せ方、楽しみ方をそこで提示できたら、この先またこれまで通りコミュニケーションが取れるようになったときに、持ち札が増えていると思うんですよ。セットリスト作りは、まだこれからなんですけど、難しい意味ではなく、いろいろ考えてやりたいです。