Japanese
泉谷しげる×KEYTALK | "阿蘇ロックフェスティバル2019 in 北九州"座談会
2019年08月号掲載
阿蘇を盛り上げたい、熊本に遊びに来てほしい――そんな地域密着イベントとしてスタートした"阿蘇ロック(阿蘇ロックフェスティバル)"だが、今年は北九州からの開催のオファーを受け、ミクニワールドスタジアム北九州での開催が決定。出演者のひと組として、かねてよりイベントのファンから熱望されていたKEYTALKの参加も決まった。今回は主宰であり、"阿蘇ロック"の大将である泉谷しげるとの座談会が実現した。この座談会の15分前に初めて対面した両者。果たしてお互いの印象は? "阿蘇ロック"は他のフェスとどう違うのか? 世代を超えたライヴ・アーティスト同士の共感が伝われば光栄だ。
泉谷しげる
KEYTALK:小野 武正(Gt/MC/Cho) 首藤 義勝(Vo/Ba) 寺中 友将(Vo/Gt) 八木 優樹(Dr/Cho)
インタビュアー:石角 友香
Photo by マサ(@masalivephoto)
大変なことが多いからこそエンターテイメントが必要なんだよ(泉谷)
泉谷:KEYTALKに驚いたのはね、ライヴ映像観たんだけど、演奏上手いね。若いやつにありがちなワンパターンのパンク・バンドと思ってたら、全然違うのよ。しっかりしてんの。演奏も上手いし歌のキーもちゃんとしてるし、いわゆるチャラチャラしてるっていうのじゃない。ちゃんとした音楽構成ができてるから、ひとつのパターンじゃないよね?
首藤:嬉しい......。凝った甲斐があります。
泉谷:ふたりヴォーカルがいるっていうのも、またいいよね。ドラムは歌わないの? 全員歌うのかと思った。やっちゃえば? できればね、"阿蘇ロック"ではここでしかできないようなことをやってほしい。だから普段歌わないやつが歌うとか。ドラムとベースを変えるとか。
八木&首藤:(笑)
小野:ファンクラブとかの内々のイベントではやったことあるんですけど。
泉谷:やっちゃって。いいじゃない。
八木:なんか勇気出てきた(笑)。
泉谷:いいんですよ。自分のプライベートを持ち込まないとね? 面白くない。公ヅラしてて面白いか?
小野:まぁたしかに。曝け出していきます。
泉谷:"あんまり普段やんないことをやって"ってさ、他の人たちにも言ってんだよ。今回ありがたいことにバラエティに富んだメンバーになるんだけど、なるべく他のロック・フェスとはおんなじにしたくないんで。フェスってだいたいラインナップが似てんじゃん? だからいつも無理難題言ってでも、他のイベントにないラインナップになるべくしたい。あんまり会ったことない人たちと会いたいでしょ。
-ちなみに今年は、"阿蘇ロック"と命名されていますが北九州での開催で。現時点で鹿児島が大雨の被害をすごく受けています。
泉谷:大変ですね。だからこそこういうのでみんなで外から応援していかないと。九州は大変だよ。だからこそこういう楽しみの脈絡を常に作っていかないと気落ちしちゃいますからね。"災害のあるときにエンターテイメントなんてのをやってどうなのか?"とか抜かすバカ野郎がいるけど、そういうときこそ必要でしょうが? ね?
-ちなみにKEYTALKは寺中さんが熊本出身ですが、ツアーで訪れてみて、災害があって以降、お客さんはより待ってる印象は強いですか?
寺中:そうですね。地震のときもそうだったんですけども、人はそんなに暗くなってなくて。街は見渡せばちょっと心が痛む景色になってたりするんですけど、人はどんどんどんどん前に進む、すごく強い人が多いので、こういうイベントは今大変なタイミングだからこそやるべきかなと思います。
泉谷:やっぱり熊本地震になったときにさ、延期になったわけだよ。で、翌年やったんだけど、翌年やれるとは思えないような状態じゃない? あの大橋(阿蘇大橋)がダーン! とぶっ壊れて。これさ、3~4年どころか10年は無理だと俺たちは思ったよ。だけど翌年やれることになった。それは熊本のやつらが迂回する道とかを直したんだよね。あの修復力のすごさ。それで"阿蘇ロック"会場にちゃんと行けたんだな。熊本人はきれい好きなんだね。やっぱ片づけるんだ。日本人の良さのひとつだね。どんだけやられても片づける。使えるようにきれいにしようって、その精神があれば大丈夫だと思った。で、俺も主宰だけど、そういうとこ行って、ボランティアで被害に遭った人にも平気で働かせるんですよ。ひとりになったら塞ぎ込んじゃうから、"うちのイベント手伝え"って。そっちのほうが気も紛れるし。だから被災者扱いしないという精神でやってる。被災した人間も被災してない人間も分けたりしないですね。だから、元気な人は大変なところに行って楽しいことをしてあげるのがいい。まぁ、今回北九州になったのは、俺の浮気だよ。
KEYTALK一同:ははは(笑)。
泉谷:要するに今年は阿蘇の噴火が続いてたんでなかなか難しいという状況が生まれたのと、来年大きくしようというので、今無理してやらないで来年のために力を蓄えようと。そう思ってたら北九州が"やらないか"って言ってきたんで、最初は断った。あんなロケットランチャーが飛ぶようなところで誰がやるんだと。全員パンチ・パーマみたいな(笑)。最初は俺たちも真に受けて断っちゃったのよ。そしたら北九州の熱意のあるやつがひとりいて、"そうじゃないんです。あれ全部風評被害なんです。今は全部良くなってるんです"って。で、調べたらその通りだった。考えてみたら、俺らも阿蘇の風評被害をなんとかしようと始めたんですよ。じゃあいっちょやってやるかと。
八木:おぉ、頼もしい!
泉谷:そしたら浮気がバレちゃって、俺が北九州の女に入れあげてるって。
小野:絶対バレます(笑)。
泉谷:熊本の一般の人から"何やってんだ、浮気してんのか"って抗議がいっぱいきたわけ。俺もカチンときちゃって。災害を熊本の中に閉じ込めておくとは何事かと。な? せっかく北九州が熊本応援するって言ってんだから感謝しろってんだよな。お前らが手いっぱいだから全国の話題にしようとしてんのにさ。まぁ、もちろん謝罪会見はやるよ。それはやる。ちゃんと戻るから。でも、もう九州だけの問題でもないじゃない? 日本全部で、火山被害もあれば豪雨被害もいっぱいあるんだから、"うちの被害"って私物化すんなっていうんだよな。みんなで応援しようって言ってんだから、ガタガタ言ってんじゃねぇと。でも謝罪会見はやる(笑)。
八木:そこの筋は通すんですね(笑)。
泉谷:一応お詫びコンサートもやるんですよ。
八木:素晴らしい。
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